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神に向かってプロポーズ

よろしくお願いします。

 どうしてこうなったんだろう。


「おー、ぶかぶかじゃのう」


 いなりさんは、頬を紅潮させながら俺のグレーのスエットを着ていた。


 巫女服が濡れたままでは可哀想だし、急いで引っ張り出してきたものだ。


 だが、いかんせん先程の巫女服とは違いダボダボで、格式高さが皆無。


 でも、これはこれでいい。袖からちらりとしか見えないその綺麗な指先に萌えを感じる。


「すみませんね、俺のしかないもので」


「いや、良いのじゃ。それに、旦那様の匂いがするからのう」


 俺の謝罪を気にする様子もなく、いなりさんは袖口を鼻に当てて小さく呼吸し、はにかんだ。


 なんだこの可愛い生き物は。


 心臓が痛いくらいドキドキする。これがトキメキというものだろうか。


「旦那様は優しいのう。突然押し掛けた妾の事をきちんと気にかけてくれるからのう」


 袖口を口に当ててふふふと笑ういなりさん。


 なんて純粋な笑顔。


 すみません、先程は邪な目線で拭いてる様子を目に焼き付けてしまって。


 ちなみに今のスエットも脳内ハードディスクに保存してます。


 こんな奴ですみません。


「ところで、いろいろと話さなければならないと思うんじゃが……。その、妾と結婚する。その方向でいいのかの?」


 ここで話が戻ってくる。


 多少いちゃついてしまったが、元々はいなりさんの勘違いなのだ。


 俺としては非常に嬉しい勘違いなのだが、勘違いさせたまま結婚は心苦しい。


「……その、結婚するというのはすごく嬉しいです」


 その言葉を言うと、いなりさんは目を輝かせ、耳がピンと立った。


 でも、いなりさんが口を開く前に間髪いれずに喋る。


「ですが、勘違いさせたままいなりさんと結婚出来ません」


 結婚出来ないと告げた瞬間、いなりさんの耳が垂れ下がり目に涙を浮かべる。


「な、なんでじゃ! あんな情熱的なプロポーズまでしたのに!」


「そのプロポーズがそもそも違うんです。俺は結婚したいと願い事をしてたんです。あなたにプロポーズした訳じゃない」


「そ、そんな……」


 いなりさんは絶句し、涙をこぼす。


 罪悪感で心が痛い。


「……妾の勘違いか。……すまんのう。その、すごく嬉しかったんじゃが、勘違いだったら仕方ないからのう。誠に申し訳ない」


 いなりさんは泣きながらも無理矢理笑顔を作り、頭を下げた。


 俺は慌て、いなりさんに頭を上げてもらう。


「いや、勘違いから始まりましたが、先程申し上げた通り結婚するというのはすごく嬉しいんです。勘違いさせたまま結婚したくなかったのです。なので、こんな俺ですが結婚していただけませんか?」


 今度は誰でもいい結婚ではなく、いなりさんを見て、いなりさんにプロポーズする。


 いなりさんは、ポカンとしたあと、また涙をぼろぼろと流し始めた。


 え、ダメだった? 不安が心にすくったが、すぐさま不安なんて感じられない衝撃が身体を襲った。


 俺の腰に手を巻いて、胸に顔ごといなりさんが突っ込んだ。


「もちろんじゃあああああああ!」


 いなりさんの大きな大きな返事を聞いて安心する。


 湿り気が胸元を這うが、それすらも愛おしい。


「うう……。妾を辱めおって! このー!」


 いなりさんが腰に回した手の力が強くなったが、何の事はない。幸せの痛みだ。


「いなりさんは俺で良かったんですか?」


「……誰でもいいと思うたか? 妾は、お主がいいんじゃ」


 この後むちゃくちゃ抱きしめた。

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