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たすけてもらってからというもの

「あ、来たね」


「どわああああ!?」


 目の前に誰かのドアップが現れて思わず仰け反る。


 心臓バクバクで睨むように見つめると、巫女服を着たいなりにそっくりの女性。


 周りの風景は今ほどオンボロではない稲荷神社と拝殿が見える。


 ひぐらしの鳴き声も鮮明に聞こえてるけど、俺はいなり神社に来た覚えもない。


 多分、夢だろう。


 この目の前の女性はてんこさんだな。夢の中では思い出すことができる。


「どう? ちゃんとたまちゃんにカチカチの真相を聞いてきた?」


「はい。てんこさんといなりが助けてあげた火事の話を聞きましたよ。流石は神様ですね」


「どうやら聞けたみたいだね」


「はい。たまちゃんは喜んでましたよ。助けられた事、いなりと出会えた事をすごく喜んでました」


「そう? それなら良かった」


 俺がたまちゃんから聞いた話をすると、てんこさんは目を細めて笑みを浮かべた。


 実の娘も褒められて嬉しいんだろう。


 てんこさんの娘であるいなりが一生懸命助けた話だ。きっと誇らしいに違いない。


 ……あれ? てんこさんの娘がいなりだよな。


 ……じゃあ、夢で現れた小さい頃の俺と泣きながら話してた子は……いなり?


 俺は表情を強張らせててんこさんを見つめる。


 てんこさんは、察したように表情を真剣なものに切り替えて俺の瞳を見つめた。


「どうやら、気付けたようだね。そう、君は昔いなりと出会っているんだ」


「じゃ、じゃあ、てんこさんの娘って、あの女の子っていなり?」


「うん」


 俺の質問をてんこさんは頷いて答える。


 てんこさんはいなりを一人前の神様にする為に俺の記憶を消していた?


「てんこさん、つかぬ事を聞いてもいいですか?」


 俺はつとめて冷静に、心を落ち着かせながらてんこさんに尋ねた。


「うん。それに、尋くんには聞く権利があるから」


「……どうして俺といなりの記憶を消す必要があったんですか?」


「そうね、いなりは尋くんと出会ってから、君の為だけに力を使おうとした。からかな」


「どういう事ですか?」


「それは……」


 てんこさんが俺の質問に答えようとした瞬間、視界がぐらりと歪む。


 クソッ、朝か!


 まだ聞きたいことが、忘れたくない事があるのに!


 俺は足を踏ん張って堪えるものの、視界はぐるぐると回っていく。


「あなたがいなりを助けてあげたの。尋くん、あなたの実家のワンちゃんは元気かしら? ……なんで飼ったのか、思い出してみて。今日の忘れないおまじないをかけておくわ」


 意識が途絶えてしまう刹那、てんこさんの声が頭に残った。


 実家の犬を飼った理由? ……なんでだっけ?





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 最近は寝覚めが悪い。


 強いて言うならいなりと出会ってから毎日変な夢を見ている。……気がする。


 なんな夢を見てたのか、相変わらず全然思い出せないけれど、今日も脳裏に残った記憶がある。


 実家の犬を飼った理由。


 確かにうちの実家で老犬を飼っている。


 確か俺のわがままで飼ったと記憶しているのだが、どういうわがままで飼ったのかまでは覚えていない。


 でも、強く残ったこの記憶、調べておくべき事なのだろう。


 俺はスマホを取り出すと、母さんのプロフィールを開いてただ一文を送信した。


【今日少しだけ帰るね】

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