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いなりが助けた理由

夢の掘り下げのラストです

「いなりが私を助けてくれた理由は、神様として困ってる者を助ける、その者にとっての良縁を結ぶ為の修行なんだそうだ」


「良縁を結ぶ為?」


「ああ。あいつの本分は縁結びだからな。人間はすぐ恋愛事を言うが、広義では主従や、友好、もちろん恋愛もだが、繋がりを結ぶ事を縁結びと言うんだ。あの時に結ばれた縁のおかげで神様に救われて、仙人になれた私がいるしな」


 いなりはその中でも良縁を結ぶ為の修行をしていたんだそうだ。


 確かに部長が稲荷神社は縁結びの神社と言ってたからな。


 修行中とはいえ、その修行のおかげでたまちゃんが助けられたのか。


「いなりは、どうしても結びたい縁があるんだそうだ。その縁は教えてはもらえなかったけど、その為に頑張って修行して、一人前の神様なんだぞ」


「へえ、どうしても結びたい縁ね」


 たまちゃんからいなりがどうしても結びたい縁があると聞いて、ぶっきらぼうに返事をしながら少し胸にモヤモヤを感じる。


 なんだろう、この感情。ジェラシー?


 誰と結びたいだろう。聞いてもいいのかな?


 心のしこりを飲み込むように緑茶をぐいと飲み込む。


 少しだけ、苦味を感じて俺は眉をひそめた。


 ああ、ティーバッグとるの遅かったか。


「まあ、以上が教えてあげて欲しいと言われた内容だ。もちろんその真意は知らないけど、いなりが頑張った事を褒めてあげて欲しいっていうてんこさんなりの優しさじゃないかな」


「そんなに頑張るような事だったのか?」


「……てんこさんの修行メニュー、聞きたいか?」


 たまちゃんの説明は終了し、自分なりの考察を最後に告げられる。


 たまちゃん曰く頑張ったから褒めてあげて欲しいという真意があっての事みたいだ。


 俺はどんな修行をしていたのかはわからないけど、尋ねようとした瞬間たまちゃんの顔がさっと青ざめたのを見て聞くのをやめた。


 たまちゃんがカチカチ以外で一瞬で青ざめるんだ。並大抵の大変さではないのだろう。


「……やめとく」


「ああ、そうしてくれ」


 俺が聞くのを辞退すると、ホッとしたような顔でたまちゃんが頷いた。


 聞きたい好奇心があるものの、仕方ないね。


「まあ、私からの話は以上だ。帰ったらてんこさんの真意かはわからんが褒めてやってくれ。なんならお土産買って帰るか?」


 商魂たくましいたまちゃんは、いなりにお土産を買えと言わんばかりにフクリの方を指差して威圧するようにニッコリ笑う。


 今の話を聞いたら買ってあげようと思うし、買うしかないじゃない。


 日曜日からホイホイ札束が飛んでいく自分の財布の急速な冬を心配しつつ、たまちゃんのおすすめセレクトを詰め込んでもらう。


 帰ったらうんと褒めてあげよう。


 頑張ったね。って言ってあげよう。


 とりあえず俺はラインを立ち上げて、いなりとのトーク画面を開く。


『帰るね、遅くなってごめん』


 たった一文を送信。


 淡白すぎたか? と顔文字を添えようと思ったが、すぐさま既読がついた為断念。


 思ったより話込んだから、昨日の帰宅時間より遅くなるし心配させたかな?


『おそい』


 だが、俺よりも淡白な返事が返って来て少し固まってしまう。


 今日顔文字を覚えたと言ってたのに、それすらない。


「……たまちゃん、あと二着程包んで」


「まあいいぞ?」


「なるべく急いでくれ」


 たまちゃんは首を傾げつつ、俺の要求に頷いて服を二着包んでくれた。


 き、機嫌なおるといいな。


 先程の返信に『すみませんでした』と打ち込んで、服の入った袋を受け取ると猛ダッシュで車へと向かった。


 ラインは既読がついたものの、返事は来なかった。

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