たまちゃんが仙人になった理由
また、区切ります
「さて、いなりが私を助けてくれた時に話を戻そう。いなりのお母さん、てんこさんも消火活動をした後、私といなりを撫でてくれたんだ。その時の安心感ったらなかったなあ」
懐かしむように言うたまちゃん。
その目は細く、昔の話でも今の事のようにはっきり思い出せているようだ。
「その時にな、私もいなりみたいに誰かを助けられる人になりたいって思ったんだ。てんこさんにお願いして神様直々に修行してもらって、私は仙人になったんだ」
「ああ、そこでたまちゃんが仙人になった事に繋がるのか」
「そうだな。震えるくらい怖いくせに助けてくれるいなりの強さを見たら、憧れたんだ。……自分で言っておきながら恥ずかしいな」
たまちゃんは仙人になった理由を白状しながら恥ずかしそうに頬をかく。
でも、仙人になりたい理由がいなりに憧れたからって可愛らしいな。
たまちゃんめちゃくちゃいなりの事好きじゃん。と内心ほくそ笑んだ。
「で、まあ修行をして人化の技とか人語、変化、創造とか色々教わって十年くらいの頃、てんこさんに呼び出されたんだ」
「なんか悪い事したんだろ?」
「なんで私が悪い事した前提なんだよ。……まあ、悪戯好きは否定しないがその時は違ったんだ」
「へえ。なんだったんだ?」
「その時はな、十年の修行で仙人の芽は出たからから今後は一人で修行しろという話だった。まあ、神様直々に教えてくれたしむしろ長かったくらいだな。それともう一つお願いを聞いたんだ。それが、今日のこの話に繋がる」
たまちゃんは一呼吸置いて俺を射抜くように見つめると、視線を逸らすことなく言った。
「もし、誰かがカチカチの真相を聞きに来た時に、火事の話と、いなりが私を助けた理由を話して欲しいとてんこさんから託されたんだ」
たまちゃんの言葉に俺はごくりと唾を飲み込んだ。
十年も前から俺がこの話を聞く事は決まっていたのか?
「もちろん、理由は私にはわからん。だが、恩人から託された以上は全てを話すつもりだ。まあ、それが尋とは思ってなかったけどな」
「……俺も、ただ見た夢がこんな話に発展するとは思わなかったよ」
俺が今日ここに来たのも、たまちゃんが俺に話したのも、実は予定調和だった。
俺たちはこうなるとは思ってなかったけど、いなりのお母さんであるてんこさんが俺になにかを伝える為にしている事は間違いないだろう。
夢を全て思い出せないのが歯痒い。
「そして、次はいなりが私を助けた理由について話していくぞ」
たまちゃんはそう言って緑茶を啜ると、思い出すように目をつぶった。
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