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阿佐の抗議と昼食

阿佐が仕事を頑張ってくれてたようです。

 長かった部長のノロケ話から解放された俺は、その足で食堂へと向かう。


 昼休みにまで食い込むとはなあ。


 五十すぎのオッサンである部長が嬉しそうに頬を赤らめながらノロけて、アラサーの俺が聞くという中々の濃い空間を思い出し、胸焼け気味だが飯は食わないと午後から頑張れない。


 俺は胸元をさすりながら食堂の扉を開いた。


 ピークの時間は過ぎており、人はまばらとなっている。


 さて、どこに座ろうかな。


「あ、巣山さん。解放されたんすね」


 不意に声をかけられ振り向くと、阿佐も今からお昼なのか丁度食堂に入って来ていた。


「ああ。随分と長かったぞ」


「ほんとっすよ! 全然帰って来ないからしわ寄せ自分に来てたんすよ」


「恨むならお前のパパを恨むんだな」


「……それを言われると反論出来なくなるっす」


 俺が帰って来なかったことに不満をこぼす阿佐だったが、たった一言返すだけで黙り込んだ。


 まあ、今回は俺悪くないしな。


 なんなら、娘命の部長の前で部長をハッスルさせた阿佐サイドにも問題あるぞ。


 まあ、今日の仕事を一人でこなすには中々カロリーを消費するのも理解はできる。


 阿佐のやつ、少し疲れた顔をしてるしな。愚痴くらい甘んじて聞いてやるか。


「まあ、午後からは頑張るからさ。それに頑張ったんだしヨービック奢ってやるよ」


「お! 巣山さんにしては殊勝な心がけっすね」


「しては、ってなんだ? ん?」


「いたたたた!? す、すんませんっす! 冗談が過ぎたっす!」


 うっかり口をすべらせたのかわざとなのか、舐めきった態度をとった阿佐の頭を右手でぎゅっと掴む。


 一見パワハラやセクハラのようだが、阿佐は悲鳴をあげて俺に謝罪してるからセーフだろう。


 俺は謝罪を聞くや否や手を離してやると、阿佐は涙目で掴まれた場所を撫でた。


「うー……。巣山さんひどいっす。馬鹿になったらどうするんすか?」


「安心しろ、もうお前は馬鹿だ」


「ひどい、あーんまーりだー! 巣山さんのバーカ、これでも食らうっす」


 阿佐は俺の罵倒に猛抗議して横腹の辺りをつついてくるが、俺はその抗議をものともせずに弁当を二つ持って近くの席に置いた。


「ここでいいか?」


「いいっす」


 阿佐も阿佐で弁当を置いて、席を指差した瞬間頷いて俺の対面に回り込んだ。


 俺と阿佐の関係なんてそんなもんだ。


 先輩後輩ではあるが、気楽な仕事仲間みたいなもんだろう。


「さて、今日の弁当は……おー! 白身魚のフライっす! 私好きなんすよね。先輩、仕事すっぽかした迷惑料として私に献上してもいいんすよ?」


 阿佐は弁当を開き、今日のメイン食材が好物だと発覚するや否やおかずをたかりはじめる。


 まあ、迷惑かけたし、昨日は良い情報を教えてもらった。


 あと、胸焼け気味だからあげてもいいか。


 俺は自分の弁当箱を開いて白身魚のフライを掴むと、阿佐の弁当箱に放り込んだ。


「……え? す、巣山さん? 冗談だったんすけど」


「阿佐には世話になってるし、頑張ってるからな。遠慮するな。阿佐だけ特別だぞ」


 俺は慌てる阿佐に気にしないように伝えると、白身魚のフライの下にあるスパゲティをズルズルと食べた。


 このあまり美味しくないスパゲティはなんで揚げ物の下にあるんだろうね。


 俺はスパゲティに心の中で不満を漏らしながら食べ進め、阿佐も阿佐で、本当に食べてもいいのかと疑いながらチラチラと俺を見て、恐る恐るフライを口にした。


「うまいっす」


 やっぱり好物だし嬉しかったのだろう。


 阿佐は笑顔をこぼして二口目三口目と食べ進めた。


 迷惑をかけてしまったが、これでチャラになっただろう。


 午後からは迷惑かけた分取り戻してやるか。


 午後の仕事に向けて決意新たに、俺は白米を口にかきこんだ。


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