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先輩の背中

尋くんは実は優しかったりします。

 午後からの作業も滞りなく終わり、定時のチャイムが鳴る。


 本日の業務は終了だ。


 俺はまとめきれた自分の作業記録書を綺麗に束ねると、クリアファイルにしまった。


 そして、俺は大きく背伸びをしながらぞろぞろと帰っていく正社員の群れを逆流して阿佐の元へと向かう。


 確か、阿佐の作業はギリギリの予定だったはず。


 間に合ってるだろうか。……阿佐の事だ、間に合ってる訳ないだろうな。


 失礼極まりない予想をして、阿佐の持ち場にたどり着く。


 そこには、作業机に向かって頭を悩ます阿佐がいた。


 やっぱりな。


 俺は椅子を引っ張り出して阿佐の近くに座ると、仕返しとばかりに笑いながら話しかけた。


「よう。本日の作業は終了だが、まだ終わらないのか」


「う、うっさいっす! 私の今日の業務は定時ギリギリだったの知ってるじゃないっすか!」


「はて、何のことやら。あ、ここ数字間違えてるぞ。訂正しとけ」


「え? あ、ほんとだ! ありがとうございます」


 未だまとめきれてない作業記録にひいひい言っている阿佐の隣に、いじりつつ指摘しつつ居座る。


 二人でやる分効率は格段に上がり、もう少しで終わるだろう。


 阿佐も誰かとすれば良いんだが、気を使って帰らせて自分だけで抱え込んで馬鹿な後輩だ。


「もうちょっと器用にしたらどうだ? 他の社員さんにお願いするとかさ」


「いや、定時ギリギリっすからね。申し訳ないっすよ」


「それでお前が無理してどうするんだ。お給料もらってるんだ、多少は手伝ってもらってもバチは当たるまい」


「……巣山さんがそれを言うっすか? 私がやってる事、まんま巣山さんが私にしてくれた事っすけど」


 阿佐から思わぬカウンターをくらいたじろぐ。


 確かにしてたけど、俺の影響とは。


 阿佐の、そのジト目で見つめてくる視線が痛い。


「まったく、自分でしている事は指摘しちゃダメっすからね。……それに今でも助けてくれますし」


「ん? なんか言ったか?」


「な、何も言ってないっす。それより、今ちょうど終わったっす! 帰りましょ」


 阿佐が何かを言ったかと思ったが慌てて否定されたので多分空耳なんだろう。


 まあ、ちょうど終わったみたいだし俺も帰るか。


 俺は阿佐の誘いに頷くと、立ち上がって椅子を元の場所に戻した。


 終わったー! いなり、今すぐ帰るぞー!


 寂しがってるだろういなりに想いを馳せ、阿佐と共に作業記録書を提出用のボックスへ入れて本当に本日の業務は終了した。


「いやー、巣山さん、助かったっす! ありがとうございます」


「気にするな。俺は苦しんでる阿佐を見てニヤニヤしてただけだから」


「うわー、変態っすね。セクハラっすか? コンプライアンスの案件として総務に言った方がいいっすか?」


「すみません、勘弁してください」


 やはり、俺はいじるよりもいじられるタイプなのだろう。


 日頃の仕返しとばかりに言ってやったが、コンプライアンスを盾にされてしまっては何も言えなくなる。


 ずるい笑みを浮かべる阿佐に全力で頭を下げて、報告は免れるのであった。












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