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にくめない後輩

後輩のキャラがすごく好き

 十二時になり、仕事に一区切りをつけた俺は作業現場を後にして食堂へ向かう。


 食堂の扉を開き、社員でごった返す中会社支給の弁当を取りに行こうとした矢先に、聞きなれた声が耳に届いた。


「巣山さん、こっちっす!」


 声の方向を向くと、俺の分の弁当と箸を用意した自身の正面にセットした阿佐が手を振って俺を招いた。


 帽子を脱いでるからか阿佐のボブショートの髪と、150センチくらいの小さな身長に似つかわしくない胸が揺れる揺れる。


 弁当とは別のおかずご馳走様です。


「おー、すまんな。ありがとう」


「へへーん。良く出来た後輩っしょ? 褒めてくれてもいーんすよ?」


「はいはい、良く出来た後輩で嬉しい限りだ」


 阿佐をあしらいながら弁当の蓋を開けると、本日はエビフライがメインの弁当だった。


 何を隠そう、俺は海老が苦手なので、本日のメインが潰されたがっかり感に心が痛い。


 あと食べれるのと言えばコロッケとおひたしと漬物くらいか。……いなりのご飯が待ち遠しい。


「ふふふー、巣山さんの苦手なエビフライが入ってるっすねー!」


「そうだな。午後から頑張れる気がしないわ」


「えー? 生まれ変わったんじゃないんすかー?」


「それはもう過去の話だ」


 意地悪な笑顔を浮かべて口に手を当て嫌味を言う阿佐に、下がりきったテンションで返す。


 いなり分が足りなくなってきたぜ、こんちくしょう。


「ふー、やれやれ。可哀想な先輩っすね。しょうがない、天使である私がコロッケとエビフライを交換してあげるっす。あー、なんて良い後輩なんすかね、私」


「自分で言うな自分で。まあ、ありがたい。これで午後からも頑張れる」


 阿佐は自身の箸でコロッケを俺の弁当に移し、そのまま俺のエビフライを持っていく。


 うん、通常であればありがたいトレードだ。……コロッケがかじりかけでなければ。


「阿佐ー! かじりかけとは良い度胸だなあ」


「ハハハ! いいじゃないっすか、美少女の食べ掛けが食べれるなんて。しかもこの私のっすよ? 巣山さん以外は食べられないっす」


「お前、俺以外の人には絶対しちゃダメだからな」


「大丈夫っす! 巣山さん以外には絶対しないっす!」


 阿佐め。こいつはつくづく俺を馬鹿にしてやがる。


 ケラケラ笑っている阿佐に、ため息をついて注意するがこいつはどこ吹く風だ。


 まあ、阿佐だから仕方ない。もはや達観してしまった俺は、呆れつつも気にせず弁当を食べ始めた。


「あー、美味しいなあ。巣山さんと食べるお昼は格別っすね」


「そりゃこんなにいじる相手がいれば楽しいだろうよ」


「はい、その通りっす!」


「否定しろ」


 ぎゃーぎゃー騒ぎながら楽しそうにご飯を食べる阿佐と、辟易しながらご飯を食べる俺。


 両極端の温度差のあるランチタイムだが変に違う課のやつが近くにいて気まずいよりもまあましだ。


 その後も阿佐の言動にツッコミをいれつつ、昼食を食べ終わった俺達は、弁当を片付けて食堂の外にある自販機へと向かう。


「阿佐はヨービックでいいんだろ?」


「お、私の事わかってるじゃないっすか」


「事あるごとにご褒美ねだられてたら流石に覚える」


 俺は百円を投入して、ヨービックのボタンを押すとカコンと小気味良い音が下の方で響く。


 阿佐は全くもって遠慮しないで取り出し口からヨービックのペットボトルを取り出すと、ニッコリ笑った。


「巣山さん、ゴチになるっす」


 その笑顔が本当に嬉しそうだから許してしまうんだよな。


 キャバ嬢に貢ぐってこんな気持ちなんだろうか。そんな事を思いながら、俺は自分の缶コーヒーを購入した。

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