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幸せの朝食

朝食を作りました。ノロケ回です。

「ね、寝坊したのじゃ!」


 いなりが起きたのだろう。慌ただしくドタドタと暴れるような音と、叫び声が響く午前十時。


 休みの日であれば寝坊とは思えないが、その声はひどく慌てていた。


 俺は作っていたほうれん草の味噌汁に火をかけ温め直しつつ、シャケをふた切れ火にかける。


 手を休める暇もなく、卵を溶いて醤油と砂糖で味付けし、フライパンにこぼした。


 音を立てて固まる卵をくるくると丸め、できたての卵焼きが完成。それを包丁で四等分に切り分けた。


 あとは炊きたてのご飯を茶碗によそい、納豆と海苔とともにテーブルに置いた。


「すまないのじゃ、今からご飯を……。あれ? すごく良い匂い?」


 勢いよくダイニングキッチンの扉が開いて、寝癖がついたままのいなりが謝りながら入ってきた。


 その声はひどく申し訳なさげであったが、すぐに鼻をひくひくして違和感を口に零す。


 そして、テーブルの上に広げた俺のお手製朝食に気付いた瞬間、キラキラと目を輝かせた。


「あー! ご飯が出来ておるー! 尋が作ってくれたのか?」


「うん、口にあうといいんだけど」


「あうに決まっておる! 尋が作ってくれたんじゃ、隠し味は愛で溢れてるからのう」


 溢れてたら隠せてないんじゃないのか? と心の中でツッコミをいれつつ、味噌汁とシャケの火を止めてお皿に盛り付けた。


「おお、尋のご飯! 旦那様のお手製ご飯じゃー! 妾、嬉しくて涙が出そうじゃ」


「大袈裟だなあ」


「大袈裟じゃない、やっぱり大好きな人と嬉しい時間を共有出来るのは嬉しいんじゃ。幸せじゃ。早く食べよう、妾待てない!」


 いなりは喜びを全力で伝えて箸を掴み、今にも食べたいというようにテーブルに並んだ朝食にがぶり寄る。


 その瞳はキラキラと輝いており、いただきますと言った瞬間に食べ物達に箸が伸びていくだろう。


「よし、じゃあ食べようか。いただきます」


「いただきますなのじゃ!」


 俺は味噌汁のお椀を手に取り啜る。うん、悪くない味だ。


 自分で作った料理を美味しいと思った事はないが、愛情を込めたからだろうか。いつもより美味しく感じる。


 さてさて、いなりの反応はどうだろう。


 いなりはというと、卵焼きの一切れを箸で半分に切ってその半切れを口に含んでいる。


 気になる、美味しいのか? 口に合わなかったのか? 早く感想を教えてくれ!


「美味しいのじゃ! 尋は料理の天才じゃな!」


 どうやらいなりの合格点を叩き出す事が出来たらしい。


 いなりの笑顔を見て俺はホッと胸をなで下ろすとともに、いなりの美味しそうに食べるその表情に心を躍らせた。


 自分で作った料理ってけして美味しくないわけじゃない。


 人に食べて欲しいって思うから、一緒に食べて幸せだと思えるから美味しいんだな。


 もちろん個人差はあると思うけど、俺にとっては間違いなくそうだろう。


 嬉しそうに味噌汁を啜るいなりを見ながらいつもより美味しく感じた味噌汁を俺も啜った。



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