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初デートの計画はお風呂のあとで

風呂上がりのノロケ回

「あー、いい湯じゃったー」


 俺の紺色のパジャマに着替えて、いなりは上機嫌に寝室まで来た。


 タオルでゴシゴシと頭を拭くいなりは、さながら男らしい。


 綺麗な金髪が傷んだりしないかと少しハラハラとして見ているが、いなり本人はどこ吹く風で髪をこすっていた。


 そういえば、尻尾が見当たらないな。お風呂で見たから意識してしまうが、どこにいったんだ?


「尋ー? お尻をじっと見つめて、スケベじゃのう」


 俺の視線に気付いたのか、いなりは両手でお尻を隠してジロリと俺を睨む。


 誤解だ、やらしい気持ちはこれっぽっちしかない。


「いや、尻尾がないなあと思って。お風呂場で見たからちょっと意識しちゃってな」


「ああ、尻尾は普段は隠しているんじゃ。服着てるとどうしても邪魔じゃからのう。じゃからほれ、あるにはあるんじゃ」


 そう言って、いなりはくるりと振り返り少しパジャマのズボンを下ろす。


 お、誘ってるのかな? なんて考えた瞬間、もふもふの尻尾がいなりの恥骨の辺りから瞬時に現れた。


「うおっ!? びっくりした……」


「ふふふ。驚いたじゃろう。まあ、服着てるとほんと邪魔じゃからのう。服に穴を開けるとかも嫌じゃし。じゃから普段は隠してるんじゃ」


 説明しながら、いなりは尻尾を瞬時に消す。


 なんか今更だがいなりは人間じゃないんだな。と実感した。


「ふう、まあこんなところじゃ。しかしすまんのう、借りてたパジャマに毛がついてしもうたかもしれん」


 いなりは少しお尻の辺りをキョロキョロ見ながら、少し手で払った。


「まあ、仕方ないさ。気にするな。でもまあ、いなりの服がないのは不便だから明日も休みだし服とか買いに行こう」


「おー! 買い物デートって奴じゃな! 楽しみじゃのう」


 俺の提案に、いなりは嬉しそうに笑う。


 いなりが喜んでくれて良かったと思うと同時に、俺はデートという甘美な響きに酔いしれていた。


 デートかあ。こんな日が来るなんて。


「じゃあ、普段着とかパジャマとか下着とか欲しいのう。妾、生まれてこの方着てきた服一着しか持ってないからのう」


「え、そうなの?」


「うむ、妾のあの服は神聖な力を宿しておるから常に清潔じゃし、成長に応じてサイズも変わるし着替える必要がなかったのじゃ。でものう、せっかくじゃから色んな服を着て尋に可愛いと思われたいのじゃ」


 嬉しいことを言ってくれるじゃないか。


 照れ笑いを浮かべるいなりの頭をポンポンと撫でる。


 少し湿り気を帯びた髪。温もりを帯びた耳。


 目を伏し目がちにして照れているいなり。


「もうすでに可愛いよ?」


「もっと可愛いって思われたいんじゃ」


 俺の臭いセリフに、いなりは赤い頬のままにっこり笑った。

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