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家族の木  作者: 恋音
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THE FIRST STORY 真一と梨花 <聡の姉>

なんとなく涙っぽい雰囲気になっているときに、玄関から「ただいま」という声が聞こえて気持ちが現実に引き戻された。そうだ、オヤジ姉ちゃんが帰ってきたのだ。しばらくしてキッチンで何か音がしたかと思うと、一人でごそごそ食事をする音が聞こえた。


ママが「梨花、ごあいさつしなさい。島本さん来たはるよ。」というと、うぐぐっというような声が聞こえて、「うっそお!化粧落としてしもたやん。」という声が聞こえた。「ええから、とりあえずご挨拶しなさい!」そう言われて、やってきたのは、目鏡をかけたスエットの女だった。


「こんばんは、こんなかっこですんません。」ワアッとかオヨッとかいう声を出して、「そっくりやんか。びっくりしたア。姉の梨花です。以後お見知りおきを」といってキッチンへ消えた。腹が減って挨拶どころではない気持ちが見て取れた。


聡が「ねっ、オヤジでしょ。並みの女ちゃうから、気い使うこともないんですわ。」なるほど、気は使わないが、何か珍しい生物に出会ったような気になった。乱雑な関西弁+スウェット+デカメガネだ。まるで昭和の漫画のキャラクターじゃないか。


これがきっかけでこの日の話はお開きになった。夜中の12時を過ぎていた。「ごちゃごちゃいわんと泊まんなはれ。」ママは急になれなれしくなっていた。不快ではなかった。


通された部屋は、10畳ぐらいの和室でベッドもセッティングされていた。聡が洗面所や風呂に案内してくれた。


洗面所でオヤジ姉ちゃんとあった。「ゆっくりしてね。明日何時に起こしてほしい? 朝ごはんパン食でいい?普段は8時に食べるねんけど、島本さんの都合にあわせるよ。」と声をかけてくれる。「8時で結構です。」「じゃあ、7時半に起こすわ。」「ありがとうございます」親切なんだが単刀直入で色気というものが全くなかった。


オヤジ姉ちゃんが去った後、聡が「オッサンみたいでしょ?」と笑った。姉ちゃんの足音が一瞬止まったので戻ってくるのかと思ってドキッとした。


翌朝、約束通りオヤジ姉ちゃんがドアをトントントンとノックして起こしてくれた。「ツナサラダ嫌いじゃないよね。」と怒鳴って階下へ降りて行った。腹がすいていた。ツナサラダを楽しみにしながら階下へ降りた。


ママに、「悪いけど、ご飯の前にオブッタン拝んでくれへん?」といわれてママの後ろについていくと、立派な仏間に通された。「おじいさんに、うちの子見つかったって報告せなあかん。」


うちの子、何年ぶりに、そんな呼び方をされただろう。昨夜、喧嘩腰で自分の素性をぶちまけてやろうと思っていたのが嘘のようだった。


朝食はツナサラダとトーストとコーヒー、キウィ、普通の朝食だが驚くほど量が多い。トーストが分厚い。オヤジ姉ちゃんは、しっかり平らげて朝食後には出勤の準備で姿を消した。


オヤジ姉ちゃんは、腕っこきの営業で33歳だそうだ。オッサントークができるのでクライアントをたくさん抱えているらしい。確かに、あの女にはオッサン要素がたくさんある。玄関から「行ってきます。」と声がしたあと、大きなエンジン音がした。


ママが、「女だてらに大きな車に乗って、朝からうるさいことや。」といった。


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