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家族の木  作者: 恋音
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THE FIRST STORY 真一と梨花 < 身体検査>

聡の家が意外にも大邸宅だったことで僕は動顛していた。食事は和気あいあいとしたものだったけれど、僕は、もう腰が引けていて、帰るタイミングを計っていた。


僕がコーヒーを飲んでいると、ママが「あなた、お家のお墓はどちらにあるの?」ときた。いきなり墓の話で面食らった。「いえ、母方の祖父母の墓しか知りません。僕は婚外子で父の墓には行ったことがありません。」いきなり、ど真ん中へ突っ込んでやった。


良家では息子の友達の身体検査もするのだと思った。ママは驚かなかった。「お母さんは、どうされたの?」どこまでも失礼なおばちゃんだった。「母は、僕を置いて結婚しました。」隠す必要はなかった。聡ともこれまでの関係だった。


「ママ、ちょっと単刀直入すぎるで。島本さん怒ってはるやんか。」聡がとりなすように言ったが、僕は、もうこの家から出たい、帰りたいと思っていた。


「ああ、ごめんごめん、怒らす気はなかったんよ。ちょっと、ちょっと待っててね。」と奥の部屋に入っていった。「今度は何だ?なんでももってこい」と喧嘩腰になっていた。


ママが古いアルバムを抱えて戻ってきた。アルバムとは意外だった。そんな古いもので、家の自慢でもしたいのか?


ママがアルバムを開いて「この人知ってはる?」と一人の男を指さした。突然僕の頭の中がぐるぐる回りだした。自分がどこにいるのかもわからなくなりそうだった。


父が僕を抱いて笑っていた。その写真は僕の家にあるものと同じだった。なつかしい、やさしいにおいのする唯一の父の写真だった。僕は、絶句したままだった。アルバムの中には父の写真が数枚あった。


ママはしげしげと僕を見て、「やっぱり、この子があなたやってんよね。良かった。やっと見つけた。」といった。ママは僕の手を自分の両てのひらで包んで、「まあ、まあ、苦労せえへんかった? 辛いことなかった?学校誰が出してくれたん?」立て続けに聞かれたが、今もって何が何だかわからなかった。


ママの手は祖母の手のように柔らかくて少し冷たかった。こんな風に手を包んで何度もなでてくれたのは結婚前の母と祖母だけだった。母には恨みがましい気持ちを持っていたので、母のことは心の奥底に封印していた。昔、家族から可愛がられた時期の記憶がよみがえって、めまいが起きそうになった。


「あのねえ、この人、あなたのお父さん、私の父の兄なんよ。」「あなたと私は、いとこなんよ。」ママと僕がいとこ? 何を言っているのか理解できないまま黙っていた。まるでテレビドラマの登場人物のような気分だった。


聡は「ママの勘あたったんか?凄いな。世の中にこんなことあんねんな。」とおどろいた様子で興奮していた。嬉しそうだった。この家では僕の存在は喜ばれているような気がした。

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