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家族の木  作者: 恋音
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THE FIRST STORY 真一と梨花 < 生い立ち>

世間的な僕のイメージは「割と正義感があって熱いところのある友人を大事にする男」だった。でも、実際の僕は、いつも心が冷めていて利害一色だ。僕の人間関係は利害関係で固められている。


祖父母に育てられた僕は、20代には天涯孤独になっていた。いや、父の家には年の離れた姉がいるはずだったが、僕の存在はその家からはうとまれていて、父の葬儀に出席する事は許されなかった。僕は隠された存在だったのだ。


母は父の愛人だった。僕が生まれたとき、母は21歳だったが父は50歳を過ぎていて、僕が6歳の時に亡くなった。その時、相当の養育費をもらったらしい。祖父母が、その金を大切に使いながら僕を大学に行かせてくれた。


母は、僕が中学生の時に結婚したが、結婚後に亡くなってしまった。自死だった。まだ中学生だった僕を残して借金まみれの男と心中してしまったのだ。祖父母だけが愛情をかけてくれた。祖父母にしか愛情をかけられなかった。


僕は常にひとりだった。小学生のころから本をよく読んだ。本の中では、熱い心を持つヒーローが冒険をしたり、人々を幸福にしたりしていた。僕は、いつの間にか、熱いフリをすると人が寄ってくる事をおぼえた。軽く熱血漢の雰囲気を演出すると友達も増えた。


若いうちから生活のために働いた。幸い警察官として就職していたので暮らしに困ることはなかったが楽ではなかった。本好きが高じて警察勤務のときから、推理小説を書いていた。その、推理小説が小さな賞を受けて警察では働けなくなった。警察内部のことを書いていたからだ。


今は、なんとか作家として食べている。仕事を取るためには、相変わらず熱い男を演じる必要があった。僕は、そんな自分が嫌いだった。利害のことしか気にならない冷めきった心。うそつきの自分が嫌いだった。


だが、今日、自分にそっくりな男に出会ってわかったのだ。僕は割と素直な奴だ。簡単に人を信用するようなお人よしなんだ。僕はけっこう好い奴じゃないか。


僕は大阪の女子大学の講師としても働いていた。ちょっとした話題作りのために雇われていることは自覚している。その男とは大阪へ行ったときに落ち合った。いつも庶民的な居酒屋で、食事をして酒を飲んでおしゃべりをした。


その男に会う日は、朝からウキウキした。ふっと、自分はゲイだろうかと思ったぐらいだ。残念ながら、二人で酔いつぶれても、お互いに爆睡しただけでそれらしいことは起きなかった。


その男は、知り合って3カ月もすると僕のことを兄ちゃんと呼んだ。僕も、サトルと呼び捨てにした。

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