鏡よ鏡、112
「あなただけの持ち物だった精子は、いまはわたしのおなかにあって、わたしだけのものなの」
「何わけわかんないこと言ってんだよ。どうしたいんだよ!?」
「秀ちゃん、あんたはわたしを祝福しなきゃ」
「祝福?産まれたらするだろ」
「産まれたら祝福すんのは、あんた、自分の子どもだからでしょ?」
「ひとみ、お前、もう何言ってんだかわかんねえよ」
「あんたは大学を辞めないでちゃんと卒業して、就職するの。やるべきことをやんの。わたしも元気な赤ちゃん産むから。わたしのやるべきことをやるから」 「お前だけの子どもってことか?」
「ううん。二人の子よ」 「じゃあ結婚とかはまた別の話、なんだね」
「あんたさ、大学辞めて何かの仕事に就いてさ。子ども育てれんの?」
「…」
「わたしは出産したらおっぱいが出るんだよ?あんたそんなことできないじゃん」
「…」
「子どもが欲しくてセックスしたんじゃないでしょ?わたしと結婚したくて中出ししたわけじゃないでしょ?」
「まあそうだけど」