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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第十二章「今、刃を携えて」
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第71話「ということはだ。私はもはや人間なのではないか?」(第一部最終話)  

僕は県庁の非常階段をゆっくりと下っていた。

 ベリーの仕事を引き継ぎ、成功させた。

 弱者を虐げる元凶の一つを滅ぼすことができた。

 だが、この業界だけだ。

 世の中にはまだ苦しんでいる人が大勢いるのだ。

 しかし、僕は色々なものを失い過ぎた。

 新たに得た仲間さえも。

 LGAの人達は僕と志を同じくできるかもしれない。

 でも、何かが足りない。

 そんなことを考えながら非常階段を一歩一歩下っていく。

そこで、自分の体のあり得ない状態に気付いた。

 頭は流血しているし、大腿骨も骨折。

 他は忘れた。

 考えたくもない。

 とにかく体中痛みが現れはじめていた。

 戦闘中に出ていたアドレナリンはもう出なくなってきているのだろう。

 ここに長居するわけにはいかなかった。

 このまま放っておけば多分僕は死ぬ。

 せっかく生き残ったのにそれだけは駄目だ。

 一刻も早く病院へ行かなければ。

 やがて、地上に辿り着こうという時、僕を待ちぶせするような人影を見て戦慄した。

 しかし、その戦慄も一瞬のことだった。

「池海さん?」

 そこに立っていたのはLGAの池海さんだった。

「なぜここに?」

「君に会いたいっていう人物が教えてくれたよ」

 まさか!?

「発想を変えてみたのだ」

 そう言ったのは長身のダークスーツ。

「私は高度な人工知能だからな。しかし、バックアップはなく、DMデバイスもない」

 長身のダークスーツは更に続けた。

「ということはだ。私はもはや人間なのではないか?」

 そうかも知れない。

 しかし、その解釈はあまりにも強引では…?

「人間として生きる。しかし、日本のことはよく分からないので、しばらくは君の家に住まわせてもらえないだろうか?」

 いや、僕はあふれ出す感情を止めることができなかった。

 目から流れ出る液体も。

「そうか、君もそうだったか」

 長身のダークスーツの目が光っているように見える。

 僕には「そう」の指し示すものが分からなかった。

「ずっと言い忘れていたが」

 長身のダークスーツは一度背を向けた。

「私は花粉症だ」

 二人の目から流れ出る液体は地面に達しようとしていた。


第一部終了

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