第06話「ただの眩暈だよ。もう治った」
「おはよう」
「…おはようございます」
鍵を開けながら僕の存在に気づき、振り向いた戦隊長と僕は朝の挨拶を交わした。
この男は暗殺されたはずだ。
「あの、お体の具合は大丈夫なんですか?」
「ただの眩暈だよ。もう治った」
彼とのやりとりはそれだけだった。
退庁の時、車に乗り込むとすぐさま僕はベリーを起動した。
「ターゲットが生きてた」
絞り出すように僕は言った。
「面目ない。私の失敗だ」
彼がミスをしたようには思えなかった。ベリーはその道のプロが持つ特有のオーラを持っているように感じるのだ。
「差支えなければ今回の暗殺方法を聞かせて欲しいんだけど?」
「了解した。今回の落ち度は私にある。説明しよう」
そして、彼は淡々と説明を始めた。
「木材谷マサオミ。結論から言うと奴の心臓は止まり、生命活動の停止を確認した。しかし、 今日は生きていた」
「どうやって確認を?」
プロがどうやって自分の仕事ができたかを確認する術が知りたかった。
「奴はアプリロイド社のスマートウオッチを手首に巻いていたから、それをハックして脈を測った。数値はゼロだった」
それが本当だとすれば戦隊長は生き返ったことになる。
ベリーは続けてこう言った。
「ターゲットが生きている以上、私は仕事を完了していない。この暗殺は続ける」
なぜ、戦隊長は死ななかったのか?いや、ベリーの話によれば、戦隊長は一度は死んだはずで、なぜか次の日は生きていたということだ。そんなことがあり得るのだろうか?そして、プロの暗殺者がターゲットの死、を誤認することなどあるのだろうか?どちらもあり得ないと思えた。
奴には何かがある。
しかし、それが何なのか僕には見当もつかなかった。
彼は溶けるようにスリープモードに入った。
痛恨の失敗。プロの暗殺者はどう動く?