第65話「では、私から質問です。貴方たちの採用動機は何ですか?」
今、刃を携えて敵を討つ。
敵は最高にして最悪の人工知能「MASAOMI」
武蔵県教育総司令部、別名中央司令部では教諭兵採用試験の最終試験、集団面接が行われていた。
受験生は三人、面接官は五人。
面接官は左から教諭兵人事課長、教育将軍、教育総司令部長、県知事、教育委員長の順に並んでいた。
自己紹介が終わり、教諭兵人事課長が言った。
「それでは番号の若い人から志望動機を述べて下さい」
僕の二つ右隣、つまりは一番右の女性の受験生が動機を述べる。
「私は小学校の時の担任の先生に憧れてこの職業を目指しました……」
その後は耳に入らなかった。僕はシニカルな笑みを浮かべて次の受験生の志望動機を聞いた。
それも、前半しか耳に入らなかった。
この二人は何も現実を知らない。
だからこそ合格するだろう。
使い捨ての兵隊として採用されるのだ。
この面接は建前を述べる者が合格する。
和を乱さない者を採用するのだ。
そんな人物を使い捨てにしながら教育現場は回っている。その事実が可笑しくて仕方がない。
「では、江藤さん、どうぞ」
江藤さんと呼ばれ、僕は返事をした。
そして、噴き出してしまった。
折れた肋骨が悲鳴を上げたが、笑いの方は堪えることはできなかった。
「何が可笑しい!」
教育将軍が睨みつけてきた。
修羅場をくぐっているはずだが眼光が物足りない男だ。
更に吹き出しそうになったが、どうにか堪え、言った。
「失礼致しました。では、申し上げます。これから私が申し上げることは大変不愉快なものです。お聞きになりたくない方は退席されることをお勧めいたします」
「我々に出て行けと言うのか!」
激高し、声を荒らげる県教育将軍。迫力に欠ける。この男が羽柴の後任だとは人材不足感が否めない。僕はそう思った。
僕は立ち上がった。
右太腿の激痛が存在を主張したが、構わず続けた。
受験生の方を見る。
「まず、受験生の中野さんと石山さんでしたっけ?すぐに辞退されることをお勧めします。と言うより、すぐに帰った方がいい。辞退の手続きをする価値すらない。今無断で帰ればそんな手続きも要らず不合格になれます。それがベストだ」
唖然としてこちらを見ている受験生。
返す言葉が思い浮かばないようだ。
「分からないのか?これは官製ブラック企業の面接だ。いくら職がないからってこれだけはやっちゃいけない。今すぐに帰るべきだ。以上」
僕は面接官に向き直った。
右太腿の血が吹き出し、スラックスの右半分が深紅に染まる。
当然面接官にも見えるだろう。そして続けた。
「では、私から質問です。貴方たちの採用動機は何ですか?」
「何だね君は!?何様のつもりだ!?」
教諭兵人事課長も目を吊り上げた。
エイタの衝撃の行動。その真意は?