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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第十二章「今、刃を携えて」
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第65話「では、私から質問です。貴方たちの採用動機は何ですか?」  

今、刃を携えて敵を討つ。

 敵は最高にして最悪の人工知能「MASAOMI」

 

 武蔵県教育総司令部、別名中央司令部では教諭兵採用試験の最終試験、集団面接が行われていた。

 受験生は三人、面接官は五人。

 面接官は左から教諭兵人事課長、教育将軍、教育総司令部長、県知事、教育委員長の順に並んでいた。

 自己紹介が終わり、教諭兵人事課長が言った。

「それでは番号の若い人から志望動機を述べて下さい」

 僕の二つ右隣、つまりは一番右の女性の受験生が動機を述べる。

「私は小学校の時の担任の先生に憧れてこの職業を目指しました……」

 その後は耳に入らなかった。僕はシニカルな笑みを浮かべて次の受験生の志望動機を聞いた。

 それも、前半しか耳に入らなかった。

 この二人は何も現実を知らない。

 だからこそ合格するだろう。

 使い捨ての兵隊として採用されるのだ。

 この面接は建前を述べる者が合格する。

 和を乱さない者を採用するのだ。

 そんな人物を使い捨てにしながら教育現場は回っている。その事実が可笑しくて仕方がない。

「では、江藤さん、どうぞ」

 江藤さんと呼ばれ、僕は返事をした。

 そして、噴き出してしまった。

 折れた肋骨が悲鳴を上げたが、笑いの方は堪えることはできなかった。

「何が可笑しい!」

 教育将軍が睨みつけてきた。

 修羅場をくぐっているはずだが眼光が物足りない男だ。

 更に吹き出しそうになったが、どうにか堪え、言った。

「失礼致しました。では、申し上げます。これから私が申し上げることは大変不愉快なものです。お聞きになりたくない方は退席されることをお勧めいたします」

「我々に出て行けと言うのか!」

 激高し、声を荒らげる県教育将軍。迫力に欠ける。この男が羽柴の後任だとは人材不足感が否めない。僕はそう思った。

 僕は立ち上がった。

 右太腿の激痛が存在を主張したが、構わず続けた。

 受験生の方を見る。

「まず、受験生の中野さんと石山さんでしたっけ?すぐに辞退されることをお勧めします。と言うより、すぐに帰った方がいい。辞退の手続きをする価値すらない。今無断で帰ればそんな手続きも要らず不合格になれます。それがベストだ」

 唖然としてこちらを見ている受験生。

 返す言葉が思い浮かばないようだ。

「分からないのか?これは官製ブラック企業の面接だ。いくら職がないからってこれだけはやっちゃいけない。今すぐに帰るべきだ。以上」

 僕は面接官に向き直った。

 右太腿の血が吹き出し、スラックスの右半分が深紅に染まる。

 当然面接官にも見えるだろう。そして続けた。

「では、私から質問です。貴方たちの採用動機は何ですか?」

「何だね君は!?何様のつもりだ!?」

 教諭兵人事課長も目を吊り上げた。

エイタの衝撃の行動。その真意は?

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