第63話「エイタ。君に仕事を依頼された。だが、仕事はまだ済んでいない」
ベリーが動く。新たなゴールドベリー端末と共に。
極限の既視感が僕の何かを目覚めさせるのが分かった。
「ナイブス」
反射的にその言葉は出た。
見えざる刃が出現し、いとも簡単に光の縄を切り裂いた。
自由になった右手のデバイスの下部には見覚えのあるQWERTYキーボードが出現していた。今まで気づかなかったがスライド式のケータイだったのだ。
「これってまさか!?」
「ゴールドベリー端末だ。OSはアプリロイドだがな」
僕の目の前にはダークスーツを纏った長身の男が聳え立っていた。
その身に纏うは研ぎ澄まされた刃の如き存在感。
「ベリー!何でここに?」
かつての相棒の名を叫ぶ。
「エイタ。君に仕事を依頼された。だが、仕事はまだ済んでいない」
このプロ意識。彼に相違ない。
彼女を反射的に抱きしめたくなった。
僕はそう感じてしまった自分の弱さを頭の中で全力で責めた。
そして、右太腿と折れた肋骨の痛みを噛みしめた。
更に、ベリーと再会できた喜びを感じている自分がいることを噛みしめた。
そして、質問を続けた。
「そうじゃなくて、なぜ生きてるの?」
「クラウドだ。私のデータは常にクラウド上に差分バックアップされていた。そして、最近になって君の脳のデータらしきものをネットワーク上で見つけて入り込むことにした。端末へのダウンロードが完了したのはついさっきだ」
そんなことをやってたのか。
「君が手にしているのは最新型のゴールドベリー端末だ。DMデバイスもPERデバイスも搭載している。ゴールドベリーのOSは君も知っている通りシェアが低迷していてな。アプリロイドOSがインストールされることになった。キーボードを出さなければ一般的なアプリロイド端末に見えるだろう。だが、それよりも」
ベリーは敵に向き直り、言った。
「降りかかる火の粉を払うとしよう」
ベリーが動いた。




