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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第十一章「L・G・A」
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第62話「全く無茶をする。君はイカれた男だな」

その台詞と感情が作り出した僕の氷のような視線は彼女を委縮させるほどのものだった。

 その事実に暗い満足感を僅かに覚えながら僕はボウガンの矢を引き抜いた。

 更なる激痛と共に空中に放たれる鮮血。

 苦痛に顔を歪めずにはいられなかった。

 しかし、僕は集中した。

 『バースト』はまず、彼女の手にしていたボウガンを爆砕した。

 短い悲鳴と共に彼女が仰け反る。

 これで邪魔者は消えた。

 デバイスの確認作業に入った。

 設定アプリを開く。

 確かにあった。

 PERデバイスの設定項目が。

 僕はデバイスを地面に叩きつけた。

 そして、『バースト』を放つ。

 爆砕した端末からプラスチックの破片や電子部品が飛び散った。

 これで奴は復活できない。

 勝ちだ。

いや。

 僕は体を動かせなくなった。

 何かとんでもない力に拘束されている。

 それがPERデバイスの力であることをすぐに悟った。

 僕は周囲を探った。

 不覚にも彼女の対応とデバイスの確認と及び破壊に集中してしまったため、敵の接近に気づかなかったのだ。

 『ディライヴ』の力を最大限に高めてみたが、やはり動けない。

 よく見ると、光でできた縄のようなものが巻かれていて、それによって拘束されているようだ。

 こんな能力が使える人物に心当たりはない。

 いや、『彼女』はすぐに姿を現した。

 僕の目の前に。

 山林軍を裏切った新美トモエである。

 女はどうにも信じ切ることができない。

 僕は心底そう思った。

「そこまでね」

 彼女は乾いた声を響かせた。

 僕は池海さんに向かって目配せをした。

 だが、しかし、それは無駄だった。

 彼も既に拘束されていた。

「無駄よ」

 体が動かない。

 このままでは殺されてしまう。

 こんなところで殺されていいのか?

 木材谷を殺すまであと少しだというのに。

 僕は念じた。

 精神力の限界がこんなところであるはずはない。

折れない心を持っている自分がここで負けるはずがない。

 『ディライヴ』は更に力強さを増し、少し伸びたが、やはりちぎれない。 

「バースト!」

 自分の腹の前で空気が弾けた。

 至近距離での能力発動。

 一瞬、光の縄が大幅に伸びた。

 しかし、それだけだ。

「バースト!」

 連発する。

「うぁああああいゃああああぁぁぁぁぁあー!」

 腹部の激痛とともに、自分でもわけのわからない声を上げてもがいた。

 痛み方で僕は肋骨の骨折を自覚した。

 何本折れたかまでは分からなかったが。

 デバイスを強く握りしめながら。

 これが今できる最善だ。

 骨は折れても心は折れない。

 そう信じていた。


――全く無茶をする

――君はイカれた男だな。

――君にあげたあの刃はどうした?


 頭の中で抑揚のない男の声が響いた。

脳内に響くその声の主

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