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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第二章「端末の中の暗殺者」
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第05話「君の殺意には私が応えよう」

 木曜日から出勤した。大体、毎日12時間勤務だがその90パーセントは屈辱でできている。それでも僕はそれ程苦痛に感じなかった。昨夜見つけた武器が僕を僅かながら強気にさせていた。半信半疑ながら強力な武器があるという認識がある。それは心強いことだった。

ターゲット、つまり戦隊長はというと、何だか接し方が優しくなっていた。

 もう、僕を厄介払いできることになったから、これ以上攻撃する必要もないということか。

 僕は仕事で学校内を歩き回りながら、それとなく情報収集をしていた。特に彼の出張予定は重要だ。西方司令部へ、僕が指導力不足であることを報告する文書を持っていくのは恐らく来週であろうことがホワイトボードの出張予定欄で分かった。それまでに奴をどうにかしなければならない。僕は毎晩ベリーにターゲットの情報を報告した。幸い、職場は携帯電話の持ち込みも可能なのでベリーを僕の机の上のスタンドに置いておけば前後のカメラやマイクから入ってくる情報を勝手に分析してくれる状態になっている。実体化しなくともある程度の情報収集はできるのだ。

 木曜日の帰宅後、ベリーが実体化を要求したので僕は精神力を使って彼を実体化した。

「君の殺意には私が応えよう」

 それだけ言うと彼はまたスリープモードに入った。そして、夜中にアパートを出たようだがどこに行ったかは分からなかった。彼にエネルギーを提供しているのは僕なので彼の位置を知る術はありそうなものなのだが、今の僕には不可能のようだった。

 金曜日の放課後、心躍るニュースが僕に飛び込んできた。何と戦隊長が出張先で講演の最中に倒れたというのだ。彼はそのまま病院に運ばれた。

一方、西方司令部の一倉指導主事が出張から帰宅中に国道で自家用車を中央分離帯に衝突させ、事故死したというニュースが学校に入った。同日に起きた二つの出来事で持ちきりだった職員室で、僕は一人高揚していた。僕を殺そうとする忌々しい敵を同時に葬ることができたのだ。

 それも、いとも簡単に。僕はとんでもない力を手に入れた。

 退勤で車に乗り込むとやっとベリーと二人きりになれる。僕はわくわくしながら仕事の状況を聞いてみた。すると、

「完了した」

 あっさりと彼は答えた。

体全体に電気が走るような爽快感。

 その日、僕は柄にもなくワインなんかをを飲み、枕を高くして眠ることができた。

 土日をひたすら寝て過ごし、そして月曜日が来た。

いつものように月曜日は午前七時に出勤した。職員玄関へ続く階段を軽い足取りで上がっていき、そして、全身の力が抜けた。


エイタの全身の力が抜けた理由は?

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