第55話「貴様にお父さん呼ばわりされる謂れはないわ!」
もう仲間になったと決めつけられているようである。。
彼に高い知性を感じていた僕は加藤がホームレスであることに違和感を覚えていた。そして、どこかで納得もしていた。今や大卒でも容易にホームレスになってしまう時代だ。
加藤の言うように、僕には戦闘経験ならある。
しかし、PERデバイスとベリーの存在あってのこと。
今の僕に何ができるというのか?
だが、敵は待ってはくれない。
「隠れろ!奴らが来たら三人で袋叩きだ」
この狭い通路なら、それは有効かもしれないと僕は考えた。
僕たちは廊下に置かれた粗末な本棚などの物陰に隠れた。
相手が戦闘経験の浅い体育以外の教諭兵で、デバイサーでなければ。
さすまたを持った教諭兵が通路を突進してきた。
まだ僕と同じくらいの若い奴だ。
「今だ!」
加藤が木刀を振り下ろす。木刀は肩口にヒットした。
呻き声を上げてさすまたを握る手の力が緩まる。
そこに井下さんの木刀が振り下ろされた。
だが、正面から向かって行ってしまったため、さすまたで防がれてしまう。
更に僕はこの機に木刀を脳天に向かって振り下ろした。
木刀は頭部の中心を捉え、鈍い手ごたえが伝わってきた。
敵はその場に昏倒した。
「冷静だな。やるじゃねえか」
加藤の賞賛の声。
僕は実は一番前にいたが、攻撃したのは最後。お陰で敵の後ろに回り込むことができたのだ。
まだ安心はできない。敵を一人減らしただけである。
しかも、この手が次も通用するかは分からない。
「き、来た!」
井下さんが悲鳴のような声を上げた。巨体の割に気の小さい男である。
だが、物理攻撃なら彼が一番威力が高いだろう。
今度の敵は彼の一刀の元に叩き伏せられた。
更にやってくる敵。
今度は様子がおかしい。
気配はするが、こちらまで踏み込んで来ない。
まさか!?
そのまさかだった。
現れたのは衝撃波。と言っても飛行場で発生するような大規模のものではないが。
木製の本棚が破壊されていく。
デバイサーが敵の中にいる。
こちらはPERデバイスを使えない。
どうにか隙を作り、三人がかりで武器攻撃によって袋叩きにするしかない。
衝撃波がよく見えない。ゴールドベリーを持っていた時はエネルギーの動きを僅かながら視ることができていたのだが、丸腰同然の今では衝撃波が起こした事象からコースを予測していくことにした。
だが、それは甘い考えだとすぐに思い知らされた。
「ぐぁはぁ!」
衝撃波を腹に受けて井下さんが倒れたのだ。
加藤はどうにか衝撃波を交わして攻撃の機会を窺っていた。
僕も少しずつ前進をしていた。そして、その顔を見てしまった。
「お父さん!」
思わずそう叫んだ僕に、
「貴様にお父さん呼ばわりされる謂れはないわ!」
即座に一括してきたその人物は元彼女の父、つまりは、東京都教育庁粛清課の課長である小野澤キヨシであった。
敵将である元彼女の父現る。