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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第十一章「L・G・A」
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第54話「木刀くらいしかないぞ。っていうかあんたはPERデバイスが使えるんじゃないのか?」

ただならぬ殺気を感じ、僕は跳び起きた。

 体はもはやそれほど重くなかった。

 外は夜の闇。

 靴を履き、戦闘に備える。

 と言いたいところだが、武器などは何もない。

 唯一武器になりそうなPERデバイス搭載のアプリロイド端末とペアリングに失敗したからである。だが、なぜかポケットには入れておいた。端末を何か持っていないと不安なのだ。

部屋の外からは怒号やら騒がしい足音やらが聞こえてきた。

 既に戦闘は始まったようである。

 戦っているのはもちろんLGAのメンバーだろう。

 相手は誰か?

 それは、流れからして中央軍かもしれない。

 彼らはレジスタンスのような活動を行っているのだろう。中央軍、つまりは武蔵県教育総司令部の兵士とも戦闘経験があるに違いない。だからこそPERデバイス搭載型を奪い取り、所有できているのだろう。

「ちくしょう!池海さんのいない時にこんな!」

 ドアの向こうから狼狽えた声が聞こえてくる。LGAのメンバーだろう。

 僕はドアを開けた。

 そこには池海さんと同じような年代の男性二人が立っていた。一人は太っていて、ボロボロのTシャツにやはりボロボロのジーンズ姿。もう一人は痩せていたがやはり同じような恰好をしていた。

 一瞬ぎょっとした様子だったが、敵でないことはすぐに分かってくれたようだった。

「何があったんです?」

 僕は状況が知りたくて名乗りもせずに質問した。

「教諭兵の奴らだ。っていうか中央軍だ」

 太った方が答えてきた。さっきの声の主は彼だろう。

「分かりました。数は?」

「恐らく十人前後だ」

 今度は痩せた方。こちらの方がやや冷静か。

「僕も戦います。何か武器はありませんか?」

「木刀くらいしかないぞ。っていうかあんたはPERデバイスが使えるんじゃないのか?」

 太った方が訊いてきた。

「残念ながらもう使えないみたいです。ペアリングに失敗しました」

「ってことは池海さんが帰ってこないとどうしようもないじゃないか」

と情けない声を出す。

「だから狼狽えるなと言っただろう。井下!」

 痩せた方が叱りつける。

 太った方は井下というらしい。

「俺は加藤ユウジという。職業はホームレスだ。そして、こいつはニートの井下サトシ。PERデバイスが使えなくてもあんたには戦闘経験がある。頼りにしてるぜ」

束の間の休息。武器がなくても始まる戦い。

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