第49話「僕には見えていた。具現化されたその力の実体が」
あれを使うには「溜め」が要る。
が、次の瞬間に僕が目にしたのは右膝を地面についたベリーであった。
ベリーの右足のスーツが破れ、大量の出血が見えた。
ベリーに傷を負わせた!?
その事実そのものの衝撃がまず、僕を襲った。
ベリーが傷を負ったのを見たのは初めてだ。
彼に手傷を負わせるほどの実力。
「ベリー!」
咄嗟に呼びかける。
よく見るとベリーのスラックスの右下部分が約五センチメートルほどが粗く切れ、右足から出血している。かなりの量だ。
そして、危機感がやってきた。
ベリーが殺られる。
そう思った僕は何の考えもなく前進していた。
できることなどないのかもしれないが、反射的にそう動いていた。
そして、思いとどまった。
その理由は何となくベリーがダメージをあまり受けていないように見えたからだ。
僕はある準備に入った。
そして動向を見守った。
ベリーがダメージにより動きが鈍ったと判断したのか、木材谷が一気に間合いを詰めてきた。
僕には見えていた。具現化されたその力の実体が。
その刃は鋸だ。
木材などを切るには有効だが、人を切れば不規則な治りにくいをつけることだろう。絶対に受けたくない刃だ。
しかし、その刃がベリーに届くより先にベリーのナイフが木材谷の左足にヒットしていた。
深い。クリティカルヒットだ。
如何に不死身でも腱が切れれば一時的には動けないはず。
もう準備はできている。
僕は直観した。ベリーの視線が「エイタ、やれ」と語っている。
まともにバランスを崩した木材谷に向けて僕は放った。
「ブラスト・スルー」
光の槍は木材谷の心臓を貫いた。
「やった!」
声が思わず出た。
だが、これだけでは喜べない。
これで一度殺せただけだ。
僕が殺せたのはこれが初めてであるが、ベリーは何度となく殺し、そして再び生きて現れた。
光の槍が消える前に手ごたえが消えた。
木材谷の体が無数の光る粒子になり、霧散した。
僕はこれを何度となく目にしていた。
彼ではなく、ベリーで。
そして、悟った。木材谷が何度殺しても目の前に現れた理由を。
不死身の理由を悟ったエイタ。戦略は?