第47話「だが、降りかかる火の粉は振り払わなければならない」
ベリーはプロ意識の塊のような奴である。
「分かったよ」
僕は言った。
そして、入り口に向かって走り出す。
そのまま、問答無用で刃を放つ。
ある種の人間にとっては単純すぎる攻撃。
それはあっさりと光の障壁によって防がれた。
もう確定だ。
「エイタ。君は『分かった』と言った」
ベリーの抗議。
「分かったさ。ベリーがプロとして仕事をきっちりこなそうとしていることは」
そして、僕は続けた。
「でも、僕には僕の意志がある」
やはり、ベリーの表情は読み取れなかった。しかし、僅かながら口元が緩んだようにも見えた。
「君はウエスギを消し、タニオカを退けるのにも一役買っている。戦力に数えるのは当然のことだな。承知した」
空間を埋め尽くす殺気に僕は戦慄した。
殺気の主はあの男。
「相談は済んだか?」
攻撃はその台詞よりもむしろ先に来た。
いや、速過ぎてそう錯覚しただけだ。
何かの物理攻撃が僕の腹に突き刺さったのだ。
正確には腹のオーラにだが。
だが、衝撃は伝わり、痛みも感じた。
これは僕の『ディライヴ』を上回る攻撃力だ。
それとほぼ同時にベリーのオーラを纏ったナイフの柄が彼の後頭部にヒットしていた。
そこでやっと僕を攻撃してきた武器が鉄槌だと知る。
木材谷はのけぞったりしなかった。しかし、動きが止まる。ダメージはゼロではない。
僕はその隙を見て距離を取った。
ベリーは僕の傍らで隙の無い構えをとっている。
そして、僕は思い出していた。この男はベリーが度々暗殺していたはずである。
暗殺は成功しており、死亡確認まで行ったにも関わらず、次の日には涼しい顔で職場に現れていた。
「エイタ。奴は殺してもまた、復活するかもしれない」
僕の思考を呼んだようにベリーが横で囁く。
「だが、降りかかる火の粉は振り払わなければならない」
僕は言った。
「その通りだ。とにかく、全力で奴を殺る」
決戦の時