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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第十章「河越城決戦」
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第45話「エイタ、君に助けられた」

ベリーはナイフで谷岡と切り結んでいた。小刻みな金属音が響いてくる。

 僕は素人だが、彼らの技量が僕を圧倒するものであるということだけは分かった。

割って入るなど到底無理だ。いや、割って入る必要などはないと僕は思っている。

 しかし、ベリーとこれだけ長く戦うことのできた敵は初めてである。

 互いに物理攻撃で牽制し合っていてPERデバイスを使うタイミングを窺っているのだろう。

 敵は僕に対応する余裕はないはずだ。

ベリーを助ける。

そんなことは絵空事かと思っていた。なぜならば、ベリーはあまりにも強い、本物のプロだと思っていたからだ。

それにしてもこのリーチ差でよく戦えるものだ。ベリーの武器はナイフであるのに対して谷岡は金属製の薙刀。ベリーは薙刀の斬撃をナイフで器用に受け止め、或いは受け流し、閃光のような攻撃を繰り出していた。剣道三倍段などとよく言われるが、この条件で互角以上に戦えるのはベリーが谷岡の技量の三倍以上であることを示しているとも言える。

僕は狙いを定めようと意識を集中した。速いが、目で追えないスピードではない。ただ、僕の攻撃がベリーに当たってしまう事態だけは避けたかった。

 谷岡の鬼神の如き一撃がベリーの脇腹へ入ろうとし、ベリーはそれを済んでのところで受け流す。

その瞬間を狙い、怒りの刃を研ぎ澄ませ、放つ。

 谷岡はこちらに一瞬注意を向けたように見えた。

 見えている。しかし、その刃だけに対応しようとすれば、その瞬間にベリーに葬られる。

 彼はベリーの攻撃を受け止めた反動を利用して、後方に跳び、胸を反らすことでかわす。その筈だったが、彼の反応が間に合わなかったのか、その刃は胸を浅く薙いでいた。

それは彼に撤退を決意させるのに十分なダメージだった。いくら彼が強くても、万全の状態でこそベリーと互角に戦えるのである。

手負いの身では到底敵う相手ではなかった。

谷岡はベリーとの距離をとった。

 そして、そのまま撤退していく。

「エイタ。君に助けられた」

 ベリーは振り向いて言った。

「まさか。僕が何もしなくても勝ったでしょ?」

「正直、危なかった。それほどにあの男は強い。できればこの場で仕留めたかったが」

ベリーがそこまで言うほどの相手か。僕の知る限り初めてである。

「さて、どうする?エイタ?」

ベリーが質問してくる。その表情には僅かながら疲労が見えた。本当に僅かなものではあったが。

「決まっている」

僕は答えた。

「圧制者を打倒する」

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