第40話「その手始めとして、パワハラで罪なき職員の数々を自殺に追いやった男に、たった今天誅を下した!」
開けた視界の向こうでは、城壁のそばから、その様子を見守っている元中央軍兵士たちが見えた。
僕の声は再び演説を始めた。
「見たか!我らの力を!我々は圧制者を打倒する!」
僕は倒壊した校舎を指差し、
「その手始めとして、パワハラで罪なき職員の数々を自殺に追いやった男に、たった今天誅を下した!」
歓声が四方から上がった。
この瞬間、麻馬野城塞は完全に陥落した。
「皆さん、お疲れ様。たっくんも頑張ったね」
戦場で戦ってきた僕達に向かって、まるで運動会が終わった後のような口調で言ってきたのは司令官の山中先生だった。
「驚いたよ。まさかあんなことをやってのけるとはね」
言葉とは裏腹に、口調には驚きが感じられない。
元々何があっても動じない人なのでこんなものだろうか?
それから、山中先生ら山林軍幹部は戦後処理に奔走した。
負傷者の救護、死者の埋葬。
中央軍側で戦っていた者たちの山林軍への編入。それに伴う部隊の再編成。やることはいくらでもあった。
戦後処理も概ね済んだのはもはや二三〇〇時を回った頃であった。
山林軍は、麻馬野城塞内で野営となった。
幹部に関しては早急に河越城攻略のために戦略を練る必要があり、会議は体育館で夜通し行われた。
進軍は翌日の一一月二日の朝となった。
結局、山林軍への編入となったのは三千人程だった。戦死した者もいたが、編入しなかった者の大半は上層部による処分を恐れて逃亡した。信念のために命をかけられる者などそう多くはないのだ。
それでも、この数は決して小さくはない。圧制者への怒りがこの数字に表れていると僕は解釈した。山林軍も戦死者を出したが中央軍に比べれば軽微なものだ。とはいえ、命は決して軽くない。より多くの者を救うためであったとしても、戦場で戦う者としてこの数字を僕は背負っていかなければならない。
山林軍の兵力はこれで七千人程になった。大軍である。それも戦闘を経験し、生き残った猛者である。…とは言い過ぎだが実戦経験のある者とない者とでは、戦場でのパフォーマンスにおいて雲泥の差がある。
城塞を陥落せしめ、勝利した山林軍。次なるターゲットは?