第38話「エイタ、君は死ぬ気か?」「まさか。生きる気だ」
反射的に振り返ると、城塞に隣接していた家屋が炎上している。周辺住民の避難はとっくに完了しているだろうから、住民が死傷したりする恐れはないが、これは明らかに中央軍の攻撃である。そして、双方に銃火器を持たないことから、これはPERデバイスによる攻撃ということになる。
どのような特性を持った能力であるかは分からないが、殺傷能力が高いことは分かる。
ここも安全ではない。
だが、僕たちが退けば、山林軍に勝ち目はない。
なぜなら、この城塞を落とす手立てを持っているのはPERデバイスを持ち、実際に動くことのできる僕たちだけだからである。
だが、危険だ。河上先輩も気を失っているし、このまま攻撃が続けば、僕は仲間を失うかもしれない。もう、失うなんて絶対に認めない。
でも、負けるのも絶対に認めない。
戦うのだ。弱者を虐げる存在を根絶するために。
そのためだったら、相手がどんなに強くても、どんなに自分が無力であろうとも関係ない。
僕はベリーの実体化を解除した。
「エイタ、どういうつもりだ?」
さすがのベリーも意図が分からず、ゴールドベリーから音声を発し、聞いてくる。
だが、僕はそれには答えなかった。
「テラ君。悪いんだけど新美さんと一緒に先輩を安全な所へ運んで欲しいんだ」
「何をする気だ!?エイ君。まさか!?」
それにも僕は答えない。
「頼んだよ」
僕はそれだけを言い残し、城門に向かった。
無尽蔵とも思える精神エネルギーが体内から湧いてくるのを感じながら。
『呪い』は完全に解けている。
「ブラストスルー!」
僕の精神が生み出した巨大な光の槍は鋼鉄製の城門をあっさりと貫いた。
ひしゃげた城門の残骸の間を抜けて、僕はまっすぐに校舎に向かって歩き出した。
「エイタ、君は死ぬ気か」
胸ポケットのベリーが言ってくる。
「まさか。生きる気だ」
「なら、なぜこんなことをする?」
「生きる気だからだ!」
もう話している場合ではない。
「敵だ!」
「撃てぇーー!」
校舎から怒号が鳴り響く。やがて、石の雨が僕に向かって降り注ぐ。
「ディライヴ!」
常駐アプリなのでもう起動済みなのだが、なぜか僕は叫んでしまった。
かつてない量の精神エネルギーが僕の周囲の光の鎧となって現れた。
無数の石が僕に、向かってくるが、そのことごとくがはじき返されていく。
その中に爆薬のようなものを見つけた。
僕はそれを睨みつけながら照準を合わせた。
そして、躊躇なく拳を全力で爆薬に叩きつける。
凄まじい爆発音を聞いた僕の耳は少しおかしくなった。
だがそれだけだ。
体は痛くも痒くもない。
僕は朝礼台に上がって校舎を見据えた。
そして、呼びかけた。
「城内の教諭兵たちよ!」
自分でも信じられないほど声が通る。
エイタがとった行動とは?