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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第九章「麻馬野城塞攻防戦」
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第34話「敵の戦力を望む場所に集中させる。望むように分散させる。」  

麻馬野城塞攻防戦の開始である。

 初めに動いたのは東堂軍で、麻馬野城塞を西面から攻める動きを見せた。

 しかし、その動きが陽動であることは中央軍に事前に知られていた。

 但し、その情報は偽の情報としてである。

つまり、反乱軍、つまり山林軍は二つの方向から攻めてくるという情報である。

河上先輩の軍師として凄まじいのは、敵がその情報の裏をかくという前提で軍を動かしているという点である。

東堂軍の少数の軍は麻馬野城塞の西側を攻め、敗走したふりをしてみせた。それにより、敵が立てた仮説である「山林軍は二つの方向から攻めてくるという情報は偽の情報である」が裏付けられる。

 中央軍は迷うことなく麻馬野城塞正面、つまりは北側に戦力を集中させた。

 戦いにおいて、兵力の配分は最も頭を悩ます部分である。敵の兵力や、攻めてくる方向などの情報が事前に分かれば迷うことなく敵の攻めてくる方に兵力を集中できる。これが理想である。しかし、現実にはなかなかそうはいかない。

今回においては、山林軍から見れば、望む場所に敵の兵力を集中させることができた。

「突撃!」

 手薄になった西側を東堂軍の本隊が攻め立てた。

 虚を突かれ、浮足立った中央軍。

 それでも、中央軍はこちらの兵力を圧倒しているはずだった。

 河上先輩の見立てでは、麻馬野城塞の兵力は約一万二千。こちらの二倍以上もある。

 兵の熟練度に差が殆どない以上、まともに戦えば、勝ち目はない。

 ここで、僕たちが給食センターを占領したことが生きてくる。

 阪戸市給食センターはこの辺りでは最大級の給食センターだ。そこを押さえられたとなると、戦場周辺では南方にある鬼ヶ島市給食センターが頼みの綱となる。中央軍は防衛のためにそちらにも兵力を割かなければならなくなったのだ。

 これにより、千の兵が鬼ヶ島市給食センターの防衛に回った。

 更に、二千の兵が阪戸市給食センターの奪回に向けて動き出す。

それでも残りの総数は九千。

 しかし、西側を守護しているのは僅か五百。中央軍は東西南にそれぞれ、五百の兵を配置し、七千五百を正面に配置したのだ。

 西側を攻める東堂軍本隊は千四百。

 これで数の上で三倍になった東堂軍は中央軍五百の兵を蹂躙していった。双方に正規の国防軍程の戦闘技術や経験はない。練度は僅かに中央軍が上であるかもしれないが、大差はない。単純に数の多い方が有利であった。

こうして、東堂軍は犠牲を出しながらも麻馬野城塞西方を切り崩していった。

 しかし、全体の数ではまだまだ多勢に無勢。主力部隊が戻ってきたら瞬殺されてしまう。

 ここで、山中軍が動き出した。その兵力三千五百。

これで中央軍はその迎撃にも兵力を割く必要ができた。

これでも総力戦では勝ち目がない。

「行くぞ」

河上先輩が行った。

「何処へ行くんです?」

僕は質問した。

「今俺たちが行くべきは何処だ?」

教員のような口調で質問を返してくる。

僕は盤上の駒になったつもりで考えてみた。

今、山中軍か東堂軍に加勢すべきではないか。

いや…。

「麻馬野城塞の東側」

 閃いたような口調で言ったのはテラ君だった。

「その通り。敵の戦力を望む場所に集中させる。望むように分散させる。それが戦術の基本だ」

 僕はそれを想像してみた。 

「今、中央軍は山中軍と東堂軍の対応で手一杯のはず」

 僕は呟くように言った。

「敵の兵力を分散させられる上に攪乱することもできる」

 新美さんが優秀な生徒のように発言した。

「だが、その前にやることがある」

河上先輩はスマートフォンを取り出し、山中軍に連絡をとった。

河上先輩の連絡が終わると僕たちは大阪戸市給食センターを後にした。

「軍師」河上が行く。

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