第33話「分かりました。ですが、それでは反逆者に味方することになります.」
「…分かりました」
栄養教諭兵はすぐに応じた。
戦いに慣れていないのはお互い様だ。
本当に命を懸けて戦おうとする者は多くないのだろう。
ベリーが敵兵達に手を挙げて案内するよう命じ、僕たちは正面玄関へと向かって歩いた。
正面玄関に着くと、ベリーは敵兵の一人に建物内の案内をさせ、他の敵兵を僕たちに任せて入っていった。
やがて、センター長らしき五十代と思われるスーツ姿男性が出てきた。
髪は禿げ上がっており、年齢相応の白髪が混じっていた。
「我々は投降します」
怯え切った目でそれだけを言った。
河上先輩が進み出てきた。
「我々の要求は、貴方方に味方になって頂くことです」
センター長に微かな表情の変化が見られた。安堵のようなものと僕は思ったが、一概にそうとは言い切れないものがあった。
「分かりました。ですが、それでは反逆者に味方することになります.。中央軍の上層部から反逆罪で処罰されるでしょう。守っていただけるのでしょうな?」
その懸念は当然のものだ。
「もちろんです。我々にはその力があります」
河上先輩は事も無げに応えた。
「それを聞いて安心しました。協力させていただきましょう」
こうして、敵の補給を断ちつつ、味方の糧食を充実させることができた。
河上先輩は、彼に給食センターのネットワークにつながるPCへ案内させた。
そして、何やら色々と聞き出し、指示を出していた。
今ここを離れてしまってはセンターを押さえた意味がなくなってしまう。河上先輩はスマートフォンを取り出して、山中隊に連絡を取り、兵を回してもらうように手配した。
僕たちは、山中軍所属の一個小隊の到着し、制圧は完了した。
そして、彼等は阪戸市給食センターを後にした。
戦況は河上先輩のタブレットでモニタリングされていた。
オレンジ社のオレンジOSが入ったOPADである。
山中軍と東堂軍の動きが映像と音声と文字で伝わってくる。
僕たちが給食センターを攻めている間に、山中軍と東堂軍は中央軍に対して攻撃を開始していた。
食料を確保。そして、城攻めへ。