第33話「これより食料確保の為、給食センターを制圧する」
僕たちの任務は、敵の補給を断つことにある。
具体的には糧食である。
どんな軍隊でも糧食が確保できなければ餓死して崩壊する。
僕たちは敵の補給ルートをある程度把握することに成功していた。
補給が困難なのは僕たちだけではない。教諭兵自体が戦いを起こして、世間に迷惑をかけているのである。戦場となる地域では普段の生活はままならない。避難所へ逃げるしかない。しかも、本来避難所の要となるはずの避難所は教諭兵達の拠点となっており、他の避難所へ行くしかない。避難所は明らかに不足しており、避難民は窮屈な生活を強いられている。震災ではないのでライフラインの心配はないが。
しかし、そういう意味において、教諭兵の存在は天災のようなものであり、今や埼玉、いや全国の国民にとって批判の的である。
その為、如何に鎮圧する側の中央軍とはいえ、民衆にしてみても企業にしてみても、決して協力的ではない。それでも協力してくれるのは身内、すなわち公務員である。
よって、補給ルートはかなり限られることになる。
「これより食料確保の為、給食センターを制圧する」
隊長となった河上先輩が告げた。
答えは給食センターだ。
橋を渡るとすぐに阪戸市の給食センターがある。現在の中央軍の補給の要は給食センターだ。子ども達は登校できない状況にあり、今は専ら教諭兵に食事を提供する施設になっている。
ここを叩けば敵の補給を絶つことができる。
僕たちは阪戸市給食センターに向かって走り出した。
畦道を駆け抜ける五人からなる特殊部隊。
畦道を抜け、先刻まで進んできた国道へとつながる道路にぶつかる。その道路の反対側に阪戸市の給食センターはあった。
「これより、食料保管庫を攻撃する。それに先立って、敵を駆逐する。給食センター職員は栄養教諭兵以外は非戦闘員だ。攻撃するなよ」
河上隊長の指示が飛ぶ。
名目は給食センター襲撃だが、目的は給食センターを破壊することではない。無駄に人を傷つけるのも、食料を無駄にするのも効率的ではない。
ベリーが先行して敷地内に入る。僕とテラ君がそれに続いた。新美さんと河上先輩が後方から追走する。
真正面からの突入となる。
迎え撃つ三人の栄養教諭兵。武器はやはりさすまただ。だが今の彼等にとって物の数ではない。
「ディライヴ!」
僕は、精神力を絞り出して光に変え、体全体を覆った。
そのまま、敵に突っ込む。
さすまたを突き出した敵が驚愕に目を見開いているのが見える。
さすまたの先端部分が僕の肘に当たり、ひしゃげている。
痛みは感じない。
これに違和感を感じたはずだが、敵は更にさすまたを振り下ろしてきた。
今度は、僕は防ぎもしなかった。
僕の脳天を直撃したさすまたの柄が半ばで折れ、金属疲労を起こしたように揺れている。
PERデバイスによる防御力が桁違いに上がっていることを感じた。
「人間か!?」
驚愕の声を上げる栄養教諭兵。
「投降してもらえませんか?投降してしてもらえればこれ以上、攻撃はしません。ちなみに後ろの四人もエイタと同じような力を持っています」
僕は、投降を呼びかけた。
「ここの責任者を出してもらおう」
ベリーが低い声で言った。決して大きい声ではなかったが声だが有無を言わさぬ迫力があった。
給食センターを襲撃したエイタ達。食料確保は成功するのか?