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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第八章「給食センター制圧戦」
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第30話「悪いけどあの人とは結婚できない。細かすぎるから」

そして、早朝に進軍は始まった。十一月一日のことである。

ただでさえ限られた戦力。それを分散するというのは、やりようによっては自殺行為に等しい。しかし、戦力を分ける背景には当然、戦略がある。それが何なのか、僕には、はっきりとは分からなかった。

 僕とベリー、河上先輩、テラ君、新美さんという五人のデバイサーが五人の部隊に入ることになった。こちらは遊撃部隊という位置づけである。全員がPERデバイスの使い手であるということで特殊部隊ともいえる。この部隊が戦況を左右するだろう。

 朝焼けに向かって、国道を悠然と進軍していく二つの部隊。正規の国防軍が有するような武器はなく、統一した服装でもない。ジャージやポロシャツに身を包んだ集団。それが教諭兵という人種である。

 とはいえ、武器がないわけでもない。学校で手に入る武器になる道具といえば、金属バットや竹刀・木刀、そして、不審者対応用のさすまたなどである。ジャージやポロシャツ姿でそれらを手に、国道のど真ん中を集団で歩く様はシュールなことこの上ない。

勿論、この文明社会において、進軍するのは歩兵だけではない。自動車やオートバイで移動する者もいる。山林に所属する公用車もないわけではないが、決して多くはない。民間人が運転する一般車は皆無であった。この戦いの情報は既に全県に知れ渡っているのだろう。

 三千五百を率いるのは山林軍の司令官ともいうべき存在となった山中指導主事である。先生は頭脳明晰で戦略家であるが、あらゆる物事に関して、いささか細かすぎるところがあり、現場時代は同僚の女性に「悪いけどあの人とは結婚できない。細かすぎるから」などと言われたこともある。

千四百九十五を率いるのは、東堂ケイスケ主幹教諭兵である。彼は、四十三歳の山林軍の中でも優秀な男で、山中先生とは同期にあたる。専門は理科で、戦闘力は山林軍の中でもトップクラスである。ICT機器にも精通し、PERデバイスも扱える。将軍としては勇将といったところだろうか。

 そして、遊撃部隊は国道を避け、全員が私服で、主力部隊の後ろに隠れるように進軍していった。山中軍があるポイントに達したら、先行することになっている。

 そこから一時間程歩き、山林軍は蘭山町内に入った。左側に国道周辺には大型のショッピングモールが見えてきた。やはり、ここも普段なら、そこそこの客が集まってくるものだが、買い物客らしき人影を見つけることはできなかった。周辺にあるコンビニエンスストアさえもシャッターを下ろして臨時休業になっている。

更に一時間程歩くと国道二五四号線が国道四〇七号線とぶつかる地点に到達した。そこを右に折れて、更に進軍していく。大部隊が時川を渡っていく。この周辺で営業しているコンビニエンスストアを見つけた。僕たちを助けてくれた店長の松葉さんが、働いていた系列のコンビニエンスストアである。

食料はそれなりに用意していたが、そう何日も戦える程の量はない。この店の商品を買い尽くしても足りないが、購入しておく必要があるだろう。

食料の調達は民間人の装いをした僕たちがやることになっていた。店の者に山林軍だと知られれば、いらぬトラブルを招きかねないからだ。

国道から一本ずれた道を進んでいた僕たちだが、本隊からの連絡を受けてそのコンビニエンスストアへ向かった。一般人がそんなに大量の食料を購入していくのは流石に不自然だが、一人ずつ店内に入り、本隊の一人が所有している軽トラックに積み込む手筈になっている。

まず、僕が偵察しつつ、食料品を見繕おうと店内に入る。

 そして、異様な光景を目の当たりにする。

 まず、通路がふさがれていた。大量のコンテナによって。

 その内容はどうやら食料品のようである。

「田中エイタさんですね?」

 右側から声をかけてきたのは、若い女性の店員だった。

声をかけてきたコンビニ店員の正体は?

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