第26話「それから、何となくだけど、俺たちは同じ学年なんじゃないかと思うんだけどどうですか?」
羽柴前県教育将軍の呼びかけに応じたのは山林の学校に属する教諭兵たちである。その数五千。
たった四人だった反乱軍は五千人となった。これより先、山林軍と呼ばれることになる。
山林軍は羽柴の名において宣戦布告をした。
武蔵は内乱状態となる。
こうなると、内乱を鎮めるために、警察どころか国防軍の出番となるが、政府はこの内乱に関して国防軍を動かさず、武蔵県中央司令本部に対応を命じ、武蔵県内で解決するようにさせた。
これで、山林軍と武蔵教委軍の戦いは誰にも邪魔されることなく行われることとなった。
教育委員会打倒と木材谷マサオミの暗殺も現実味を帯びてきたと言える。
あの男は今、中央司令部の本部長をやっている。
武蔵県教育総本部があるのは県庁。そこを落とせば反乱軍の勝利である。
だが、その行く手には数々の障害がある。
武蔵中央部の防衛の要は河越城。つまりは中央司令部河越支部がある役所。ここは、常に武蔵でも選りすぐりの指導主事や教諭兵が詰めていて、武蔵でも屈指の防衛拠点である。
その手前には阪戸市の麻馬野城塞、つまり麻馬野小学校がある。これらが敵の重要拠点と言える。
作戦会議は〇八二五時からである。それまでは休憩となった。僕は殆ど寝ていないので仮眠しようと適当な部屋を見つけようと一階の通路を歩いていた。ベリーの実体化は解いてある。
「やあ。久しぶり!寺山アキトです。田中さんですね?」
「なぜ、僕の名を?」
爽やかな声で話しかけてきたのはエイタと同じように集められた教諭兵の一人で威勢のいい返事をした男だった。
「面接で一緒だったから。それから、何となくだけど、俺たちは同じ学年なんじゃないかと思うんだけどどうですか?」
確かにそんな気はしないでもない。
「僕は三十歳だけど?」
「やっぱり!俺も三十歳です。よろしく!」
握手を求めてくる。今時、こんな爽やかな男がいたのか。僕は少し感動した。同じ年の仲間がいるというのも嬉しいことである。
「こちらこそよろしく!」
彼の握力はなかなかに強かった。
僕は茶道などに使われていると思われる和室を見つけ、そこに横になった。
睡魔を感じる暇さえなく僕の意識は眠りに落ちていった。
新たな仲間とともに。