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人権ドゥラメンテ  作者: タナカ瑛太
第四章「店長の殉職」
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第19話「君の悲鳴は近所迷惑になる可能性がある」

僕はベリーに外に連れていかれた。コンビニ内には訓練に使えるような場所などないのだ。だからと言ってこの周辺で訓練したら、周囲から見ればかなり不審な行動に映るだろう。大丈夫なのだろうか?

そんな不安をよそに、ベリーは樹海をどんどん進んでいく。

 真夜中に樹海を散歩。

 それだけでもなかなかに不気味であった。

 そして、これから行われることはひたすら物騒なことである。そして、

「ここがいいだろう。君の悲鳴は近所迷惑になる可能性がある」

 本当に近所迷惑なんて考えとんのか?と、僕は突っ込みたくなったがやめた。やるだけ無駄だからだ。ベリーが見つけたのはちょっとした洞窟だった。僕はLEDランタン機能付きの防災ラジオを地面に置いて照明を確保した。

「ッ!」

 僕は何かの気配を感じ、咄嗟に左に避けた。何かが空を切って去っていった。

「進歩したな。今のが君にこれから習得してもらうものだ」

 前回、予告なしに攻撃されたことは余程、僕の体にとって衝撃だったらしく、勝手に動いて避けていた。直後に後ろで金属音のような音が響いた。シャベルで岩を突いたような音だ。それにしても今のはまさか!?

「PERデバイスによる攻撃だ。初歩だがな」

 まともに受けていれば死んでいたかも。やはりとんでもない奴である。

「今のは一時的に精神エネルギーを物質化し、刃を敵に飛ばすというものだ」

 要するにナイフを投げられたようなものである。危険極まりない。

「その刃は一定以上の質量を持った空気以外の物質に触れる瞬間だけ物質化されるようにプログラムされている。標的に命中した時の効果は物理的に存在するナイフと同じだが、当たるまで視認が困難であるという点において暗殺には有用だ。私が使っていることからも分かるようにアプリは既にインストール済みだ。アプリのアイコンをクリックしても起動は可能だが、それは主に暗殺時だ。戦闘中は画面を注視できないため、音声コマンドで起動することになるだろう。アプリ名は『ナイブス』だ」

 そこだけ聞くと、使い勝手はなかなかに良さそうだ。だが、問題はここからだ。アプリを起動するだけではPERデバイスは動作しない。

「『ディライヴ』を使用した君なら理解できると思うが、これにも精神コントロールが必要になる。このイメージの説明は単純明快だ。殺意を研ぎ澄ませ、刃にするイメージだ。いきなりできるようなものではないがな。それから、ナイフは手に持つものだ。手に力を集中させるようにするのだ。ではやってみてくれ」

 そんなイメージなら日常的に描いている。僕は音声コマンドで「ナイブス」を起動した。そして殺意の刃をイメージした。狙いは岩の壁。

 手に精神力を集中させる。「ディライヴ」では体を覆う光の鎧を作った。

「ナイブス」はそれを手に集中させて研ぐ。

 僕は力を右手に集中させようと試みた。

 体を覆う光が手に集まりだしたが、全てはなかなか集まらない。

 それでも右手が熱くなり、凄まじい力を感じた。

 そこで、目の前に光が走り、僕は倒れた。

 集中が途切れ、力が霧散してしまったのだ。

 しかし、すぐに起き上がる。

 何度も練習を試みる。

 しかし、完全に集中させるのは思いの外、難しかった。

「難しい。少しでも集中が切れると力がバラバラになっちゃう」

 息を弾ませながら言う僕にベリーは、

「そんなところだろうな。できるまで続けるといい」

 疲労感は早くも大きくなってきた。

 立っているだけでも辛い状態になるのに時間はそうかからなかった。

 しかし、疲労困憊の中、僕は掴んだ。

 力の全てが右手に集中する感覚を得たのだ。

 そして、それを放つ。

 高密度の精神エネルギーはPERデバイスアプリのプログラムによって刃に形状を変え、不可視になる。

 体の一部が削り取られ、刃になって飛んでいった気がした。金属音のような音が闇の中に響いた。

 音のした辺りをLEDランタンで照らしてみると岩の壁が三センチメートルほど抉られていた。

「威力は極めて大きい。君の殺意も大したものだ。だが、あまり派手にやるのはお勧めしない。敵に能力を知られてしまう可能性があるからだ。後は、狙った的に当たるよう練習する。それから、どの程度精神力を消費するか、感覚を掴んでおいてもらいたい」

 その後、二時間程練習して、僕は「ナイブス」をそれなりに使うことができるようになった。

 防御の「ディライヴ」攻撃の「ナイブス」。これで少しは戦えるかもしれない。


闘う力を徐々につけていくエイタ。

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