第09話「僕がこの世界に風穴を開けてやる」
自分はなぜこんなにも何もできないのであろうか?
そんなに無力なのだろうか?
なぜ、ことごとく何も通用しないのか?
分からない。
分からない。
勉強ならば結果を出すことができていた。点数が取れた。人並み以上だった。いや上位五パーセント以内だっただろう。
この先、何をしてもうまくいくことはないのだろうか?
悔しい。無力感で満たされ、抜け殻のようになった体は風が吹いただけで飛んで行きそうだった。
今回はなす術もなかった。
弱者が虐げられても何もできない。
誰も助けない。
おかしいとも言えない。
おかしいと言えない雰囲気が巧妙に作られているのだ。
まるで虐げられている人が悪いことをしているみたいだ。
正義の名の下に行われるから容赦はない。
歯止めは効かない。
僕は考える。
弱者は虐げられるしかないのか?
人権が発明されても、ルールを強者の側が決めることは変わりはない。
人権が発明されたが、それを堂々と主張できない立場の人間が存在する。
主張することを巧妙に妨げている人間が存在する。
「空気を読め」などと言って。
「空気を読める」とはそれを言う人間にとって都合の良い褒め言葉だ。
強者の利益のために。
悪は正義のふりをするのだ。
それが世界というものなのか?
「だったら」
戦うしかない。勝つしかない。
いつだって人類はそうしてきた。戦えば血が流れる。代償を払わない者に何かを変える力などないのだ。そう考え、僕は、虚空を睨みつけた。
国道を走り、流れる景色を見ながら考えた。この世界の建前では弱者に優しくとなっているが、何もかもがそうなっているわけではない。人類は自由獲得のために長年戦ってきた。それは弱者達の団結による革命の繰り返しであったと僕は思っている。人類が弱者達に優しくする理由は社会の安定にある。大雑把に言えば優しくしないとうるさいからだ。逆にうるさくなければ優しくしない。する必要もないのだ。その証拠に声を上げられない弱者達は虐げられたままである。だったら、
「僕がこの世界に風穴を開けてやる」
エイタの決意。怒り。それらはどう具現化されるか?