第四話 崖から突き落とされてからがテンプレです②
「アボスここどこ?」
私は昨日アイテムボックスに入れた民家のような所に居る。
6軒ほどの古い民家をアイテムボックスに入れたが、民家の中に入っていないが。
まるであの中の一軒のようだ。
『アイテムボックスの中っす』
「えっ? ちょっと待って。アイテムボックスの中? 空気とかどうなっているの?」
『企業秘密っす』
「ええぇぇぇぇぇーーーーー!!」
いやいやいやいや!!!!
可笑しいって!! 可笑しいって!!
確かアイテムボックスは生きている奴を収納できないはずだ!!
えっ? 何も問題ない?
アボスはチートだ?
問題だらけだ!!
確か私。崖から突き落とされたよね。
地下水に落とされたよね。
「大丈夫っす。地下水に落ちた瞬間アイテムボックスに回収したっす。どこも怪我してないっす」
「いやいやいや。アイテムボックスには生きてるものは入らないんじゃないの?」
『細かいことは気にすんなっす』
アボスはおおざっぱだった~~~!!
「所でこのベット今朝アボスがアイテムボックスに収納してくれって言ったのは……」
『そうっす。愛梨が命を狙われてる危険性があったから、念の為屋根裏部屋の物を全部収納させたっす』
「取り敢えずありがとう。あのままじゃ地下水に落ちて溺死していたわ」
ピンピロリン♪
【アボスは愛梨のナイト】の称号を獲得した。
『称号を獲得したっす』
「あ~~本当だ。でも……私のレベル上がってないしスキルも増えていない?」
『愛梨は【一般人】でユニークスキルの持ち主だから愛梨自身に変化はないっす』
「それは……やばいわね。姫巫女に勘違いとはいえ命を狙われたのなら私やばいわ。どうやって身を守ればいいの?」
『それは俺が愛梨を守るっす』
「ありがとう。これからもよろしくね」
私はアボスに頭を下げた。
兎に角。今の私にはアボスだけが命綱だ。
『任せるっす』
アボスはどんと胸を叩く。頼もしいな~。
「これからどうしょう。王様はこの事を知っているのかしら?」
『微妙な所っす。知っていても勇者に同行する巫女姫の予言と教会の力は必要っす。ばれてもお咎めなしっす。王は魔王を倒すことを優先するっす』
「ここは私達が居た世界より命の価値が軽いのね。城には帰れない」
『そうっす。取り敢えず。この国から逃げたほうがいいっす』
「どこの国に逃げればいいかしら? 私はまだこの国の地理を把握していないわ」
『そうっすね~。取り敢えず隣の国【イシテル】に行くっす。あそこは雑多な人種の国で人間至上主義のこの国とは違うっす。比較的教会の力も過激じゃないっす。リリンゴの実を食べて体力をつけるっす』
私はアボスからリリンゴの実を貰い食べる。
アボスは他の農家にあった古いマントと鞄を持って来てくれた。
青いワンピースを着てマントを羽織る。
鞄を掛けてそこいらに落ちていた棒を杖代わりにすると冒険者に見えなくもない。
私はアボスにアイテムボックスから出してもらう。
青い花畑が私を出迎えてくれた。
この花を摘んで売りたいところだが私が生きていることがばれたら元も子もない。
「あら。水の上に出る訳ではないのね。てっきり入った所に入り口が固定されるのかと思ったわ」
お陰でずぶ濡れにならずにすんだ。
『入り口は愛梨が知っている場所なら設定する事が出来るっす。でも城はやばいから洞窟の花畑に入口を固定したっす』
「ゲームみたいね」
『これを鞄に着けるっす』
アボスは紐の付いたアボスのミニチアを渡してくれた。
『この人形をとうして愛梨の様子が見えるっす。索敵も1㎞ぐらいなら出来るっす。この格好は目立つので中に入って居るっす』
アボスはアイテムボックスに入った。
『あ~あ~聞こえるっすか? この辺りに魔物や人はいないっす』
「うん。よく聞こえるよ。取り敢えず洞窟から出るね」
外は青空で余り時間が経ってないみたいだった。
これはあれかしら。異空間の中は時間がたつのは遅いって奴かしら?
勇者ならいい修行ができるわね。
「私気絶していてどれぐらい寝てたの?」
『三日ほどっす』
「三日も寝てたの‼」
違った~~‼ 恥ずかしい。私三日も寝てたの‼
「ごめんね。心配かけたね」
『良いっすよ。この世界に来て疲れていたんっすよ。アイテムボックスの中で休憩したから体もこの世界に慣れたっす』
「所でこの道を行けばいいの?」
「そうっす。まっすぐ行くと村があるっす。そこでリリンゴの実とキノコを売ってお金を手に入れるっす」
私はフードを深く被ると歩き出す。
異世界は怖くて不安だけど。
ドキドキもしている。私には頼もしい相棒がいし。
さあ冒険の旅に出発だ。
~ 第一章 おしゃべりなアイテムボックス Fin ~
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2018/9/1 『小説家になろう』 どんC
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