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第二十五話 愛梨はおっさんのパトロンになる

「この人はアヌビアスさんで魔導師よ。しばらく私が面倒見ることにしたわ」


 愛梨は皆におっさん魔導師を紹介した。

 おっさん魔導師はまだ呆けて台所の椅子に座っている。

 愛梨は【タンポポ亭】の皆が住んでいる別館におっさん魔導師を連れてきて、紹介したのだが。

 皆は好奇心旺盛におっさん魔導師を見ている。


「アイ姉ちゃん何処で拾って来たの?」


 トウスが尋ねる。


「下水道で」


 愛梨は答えた。

 嘘では無いが、本当の事でもない。


「アイちゃんパトロンって奴なの?」


 女将さんが心配そうに尋ねる。

 悪いヒモに引っかかって苦労するのではないかと心配しているのだ。

 女将の脳裏に前の旦那の顔が浮かぶ。酒のみで女にだらしなく賭け狂いの駄目人間。

 おまけに呪いを掛けて女将を殺そうとした。

 昨日離婚が成立した。

 あの宿の敷地に埋められていた人形が決め手となり、離婚できた。

 それもアイとアボスのおかげだ。

 旦那の借金も立替えてくれた上に共同経営者になってくれた。

 この二人には感謝してもしきれない。

 だからこそ、アイが不幸になるのは嫌だと思う。

 女将さんはちらりとアボスを見た。

 このゴーレムは何処まで主人に意見が言えるのだろう?

 主人の命令は絶対なのだろうか?

 後でアボスと話す必要が出てきたと女将は思った。


「ん~~。そう言うことね。大した援助はできないけど。衣食住と素材の援助ぐらいかな」


 アメリアが皆に食後のお茶を配る。


「拾って来たのはいいけど、ちゃんと世話できるの?」


 アメリアも心配そうだ。

 まるで子供が結婚相手を連れて来て、相手の男がニートだった時の親の反応だ。

 あれ? 私の方がお姉さんなのに可笑しくない?

 愛梨は皆の反応に首を傾げる。


「「生き物の世話は大変だよ」」


 ミズラとヨシカも心配している。

 この二人はスライムの世話をして生き物を飼う大変さを理解している。

 世話の掛からないスライムと言えど馬車に轢かれないよう気をつけたり、犬や他の動物に襲われないよう気を付けねばならない。

 近所のガキ大将が面白半分で襲ってくるのだ。

 それを二人が箒で反撃する。

 人の命もスライムの命も安い世界だ。


「アイ姉ちゃんは叔父さん趣味なの?」


 皆はおっさんを猫か犬扱いである。


「えっ? おっさんは趣味じゃないし。世話をするのはゴーレム達だから」


 愛梨はない胸を張る。

 愛梨は犬猫を拾ってきて、結局母親に世話を丸投げするタイプであった。


「丸投げかよ~~」


「ちっとも偉くないよ~~」


「その人何処で寝るの?」


「部屋は地下の倉庫に居住区を作っているのよ」


「また地下を掘り下げるの?」


 女将さん(エリザ)は呆れたように愛梨を見る。


「うん。ここの所冒険者どころか商人も泊まる人が増えて手狭になったし。長期滞在者向けのアパートを増やすのもいいかと思って。それに1階の食堂も手狭になって来たから地下に大食堂や冒険者向けの店やコロシアムや劇場も作るつもりよ」


 実際商人やダンジョンでの護衛がかなり増えてきた。

 食事がセットになっているので今使っている厨房がかなり狭くなってきたのだ。

 近所のママさんのパートを増やすとしても中々今すぐと言う訳にはいかない。

 セキュリティ対策と言うものがある。

 保育所も作りたい。文字や計算を教える大人向きの教室も作りたい。

 部屋はある。メイドゴーレムを増やせばいいが、やはり雇用も増やしたい。

 やりたいことが多すぎる。

 まあ。困った時の未来から来た青い猫ならぬアボスだ。

 愛梨は案だけ出して全部アボスに丸投げすることに決めた。

 あ……ゴーレム・サーカスも作れればいいわね。

 愛梨の野望は膨らむばかりだ。


「はっ‼ ここは何処だ? 俺はなぜここにいる?」


 機能停止していたおっさん魔導師が正気を取り戻した。


「ここは【タンポポ亭】の女将さん一家が住んでいる別館よ」


「「「「 こんにちは。おじさん 」」」」


 子供達は元気に挨拶をした。


「俺は叔父さんじゃない。お兄さんだ‼」


 おっさん魔導師には譲れない何かがあるようだ。


「駄目だよおっさん。現実を受け止めないと」


 トウスはおっさん魔導師の肩をポンと叩いた。


『脳が認識阻害を起こしているっす』


 アボスが無情に言う。


「いやいやいや‼ 人をヒモ扱いして、家賃ぐらい払うわ‼」


『お金はあるっすか?』


「ある程度の蓄えはある」


『何処にっすか?』


「どこにって……まさか‼」


『木箱の中には無かったっす』


「いやいやいや‼ 家の中の隠し金庫に500万ベベル隠していたし。商業ギルドの貯金通帳には1000万ベベル貯め込んでいたし……」


『箱の中には1ベベルのお金も無かったっす。それに……』


 アボスはおっさん魔導師に通帳を渡した。


「無い‼ 俺の金が全額引き落とされている~~~~~~‼」


 おっさんの汚い絶叫が辺りに鳴り響いた。








「うん。つまり詐欺? 強盗? に遭った様なものなのね」


 愛梨はテーブルの上に置かれた、おっさん魔導師の財布の中身を数えた。

 12000ベベル入っていた。

 それが今現在おっさん魔導師が持っている全財産だ。


「ううう……俺の全財産が~~~」


 おっさんはテーブルに突っ伏して泣いている。

 ああ……駄目人間だと女将さんと子供達の目線は冷たい。


「取り敢えず、明日大家さんの息子の所に行ってお金のありかを問いただしましょう」


 愛梨はポンポンとおっさん魔導師の頭を撫でる。


『すっとぼけられるのが落ちっすね』


 アボスは冷静に答えた。


「多分ね」


 取り敢えず愛梨は男の子達の部屋におっさん魔導師を叩き込んだ。

 男の子達は割と嬉しそうにおっさんにかまっている。

 そう言えば彼らの父親の年齢に近いのかも。

 老け顔だし。

 父親に甘えたい年頃なのかな?

 母親代わりの女将さんはいるが、女将さんの前の旦那は父親代わりにはならなかった。



「……可笑しいね」


『可笑しいっすね』


 愛梨とアボスは【タンポポ亭】の愛梨の部屋に向かいながら互いに首を傾げた。


「おっさん魔導師のお金を狙うだけなら家を壊す必要は無いはずだわ」


『そうっす。数時間のうちに家を壊すには経費が掛かりすぎるっす。どう考えても1500万ベベルでは人件費を考えると足が出るっす』


「それに木箱の中はとても丁寧に収められていたわ」


『道具の中にはとても高額な魔道具や魔石もあったっす。あれに手を出さないのは不自然っす』


「目的はお金では無いのかしら? おっさん魔導師の研究かな?」


『回りくどい囲い込みっすね』


「あのねずみ男のバックに居るのが誰なのか分かった? 多分貴族だと思う」


『借金まみれにして奴隷にするつもりっすかね?』


『冒険者ならともかく……下手なことをすると魔導師ギルドが放っておかないんじゃない?』


『そうっすね。魔導師は数が少ないし、貴重っす』


 愛梨はドアを開けて自分の部屋に入る。

 中に複数のメイドゴーレムがいた。


『おかえりなさいませ愛梨アイ様』


 メイドゴーレムは頭を下げた。


「今日の素材の売り上げはどうだった?」


『はい。今日はマラタウンの商人のゴトウエル様が赤獅子の毛皮をお買い求め下さりました。それにクーダル国の商人レイラル様が赤真珠10個をお買い上げ頂きました。それと冒険者ギルドからピンクタランチュラの糸100巻きの打診がありそれも納品いたしました。しめて1400万ベベルになります』


 愛梨は二部屋ある内の一つを商人相手に素材を売る販売所代わりに使っている。

 地下の販売所が出来たらそこに移すつもりだ。

 メイドは明細書とお金を愛梨に渡すとアイテムボックスに帰っていった。

 愛梨はそれを見て思う。


「豪華な素材が売れるのね……もしかして各国の王太子の戴冠式があるの?」


『戴冠式用の衣装や結婚式用の宝石やドレスの素材等を集めているっす』


「あ~~~。何だっけ? 奇跡の世代だっけ? それに合わせて貴族達が生まれてくる王子や王女の婚約者やお付きを産む。まさに結婚ラッシュが起ころうとしているのね」


『経済効果が凄いっす』


 愛梨は前に居た世界のロイヤルウェディングの経済効果を思い出す。

 何十億円だったかな?

 一大イベントだよね。

 そう言えば愛梨が初めてダンジョンに潜って素材を採ってきた時、愛梨とアボスに商人が群がったな~~。

 王族や貴族の衣装は何年もかけて準備されるのだろう。

 愛梨はお金をアイテムボックスにしまった。


『このまま寝るっすか?』


「ううん。取り敢えず。もう一度下水に降りて掃除の進み具合を見るわ。途中でほっぽってたから」


『分かったっす』


 アボスは愛梨の手をそっと握る。

 二人の足元に魔法陣が現れて。

 フオン。

 愛梨とアボスは下水道に転移した。

 配下のゴーレムが居る所だと、いったんアイテムボックスに入らなくってもそのまま転移できるのだ。

 便利な機能だなと愛梨は思う。

 ああ……これがあの時にあれば寝坊をしてギリギリ学校に駆け込むことも無かったのに。

 異世界あるある話だな~~。

 愛梨は死んだ魚の目をする。


『どうやらあれから子供の遺体は出てきてないみたいっす』


 ゴーレム騎士ナイトと話していたアボスは振り返り愛梨に報告する。


「そう。良かったというべきなのかな?」


 スライムによって綺麗になった下水道を眺めながら愛梨は頷く。


「後半月ほどで指定された場所の掃除は片付くかな?」


『そうっすね。大体それぐらいっすね』


「ねえ。アボス……」


『白いワニも人喰いも人型ゴキブリも居ないっすよ』


「……そこが可笑しいと思わない?」


『思うっす。普通ここまででかい下水道だと魔物が住み着いても可笑しくないっす』


「全く魔物が居ないのよね」


『居ないっす』


「誰かが管理しているのかしら?」


『多分っす』


 そんな二人を監視している人物がいた。

 アボスは2人を監視している人物には気づいていたが放置する。

 やがてその人物はその場を離れ去っていった。

 アボスはゴーレムマウスに後をつけさせる。

 愛梨とアボスはスライムとゴーレム騎士ナイトをアイテムボックスに回収すると【タンポポ亭】に帰る。



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 2019/10/14 『小説家になろう』 どんC

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