第二十三話 下水道とおっさん魔導師
少し短いです。
「う~~~ん」
『どうしたっすか?』
先ほどから唸っている愛梨にアボスが尋ねる。
辺りはアボスの【ライト】の魔法で明るい。
スライム達はせっせと仕事に励んでいる。
うごうごと蠢くスライムはかなり気色悪い物ではあった。
知らない者が見たら鳥肌ものである。
「ワニが出てこないのよ!! ワニが出て来ないのなら他に出る奴いるでしょう。巨大ゴキブリとか!!」
『巨大ゴキブリの代わりに、うっとおしいおっさん魔導師ならそこにいるっすよ』
アボスは下水道の通路からチラッチラッとこちらを伺う不審な魔導師を指さした。
ワニとおっさんを比べるとワニの方が面倒ごとが無くて良いとアボスは思った。
絶対あのおっさん面倒ごとを持ち込むとアボスの勘は告げている。
アボスは自分がトラブルメーカーの自覚は無い。
「あ~~アボス駄目じゃない!! 折角人が気づかぬ様にしていたのに~~」
『あ~~見るからにめんどくさそうっすよね~~』
「あの魔導師魔石が欲しいと言っていた人よね~~」
『覚えていたっすか?』
「あの人だけには何も売ってないから。あっ!! 上目遣いでこっちを見てる。可愛くないわね~~」
『むしろ不気味でイラッとするっすね~』
「石投げようかしら」
『うっキラキラした瞳でおいらを見たっす』
「ゴーレムに欲情する変態かしら?」
『おいらの貞操が危ないっす』
「おいこら!!」
魔導師のおっさんはシュタタ~と二人の所にやって来た。
日頃の運動不足からはあり得ぬ速さだ。
「誰が変態だ!!」
「えっ? だってアボスに欲情したのよね?」
「欲情などしておらぬわ!!」
「なら何でアボスを追いかけてこんな下水道まで来たの?」
『いや~~ん♪ おいら狙われているっす』
アボスはくねくねと体をくねらせる。
うん。キモイ。
愛梨はアボスをジト目で見る。
「何の御用ですか? もうしょうがないな~魔石なら少し売ってあげてもいいわよ」
「本当か!!」
「こんな所までスト-カーするうっとおしさに負けたわ」
「ストーカー言うな!!」
「今は仕事中だから後でいい? 【タンポポ亭】に取りに来て」
「【タンポポ亭】か? 知っている。分かった。取りに行く」
本当はアイテムボックスからすぐ出せるのだが、下手にアイテムボックスを使うと勘づかれるかも知れない。風采の上がらないおっさんでも魔導師だ。
好奇心に駆られてこれ以上纏わりつかれたくない。
「ギルドの【塩漬け依頼】か?」
「色々ギルドに貸を作っておいた方が、後で便宜してもらうのにいいでしょう」
愛梨は悪どく笑う。
『そちも悪よの~っす』
「いえいえアボスほどではないわよ~♪」
二人は悪代官と悪徳商人ごっこを始めた。
おっさん魔導師は一人置いてきぼりを食らう。
「おいおい!! 放置すんな!!」
「あら? まだいたの? 下水道が好きなの?」
「俺はゴキブリじゃねぇ~~~!!」
おっさんはごほんと咳をして、少し顔が赤い。
「実はもう一つ頼みたいことがあるんだが……」
「ごめんなさい。親子ほども離れている方との結婚は無理です。実は私には許嫁が居て(噓八百)……」
「ちょっと待たんか~~~~~!! 何気に俺がプロポーズしている事になっている? しかも断られているし。俺はまだ23歳でお前の親ほどの歳じゃねぇ~~!! 」
「まあ!! 聞きまして奥様!! 23歳ですって!! とんだ嘘つきですわね~~」
『ええ奥様。どう見たって38歳の妻に逃げられ子供には嫌われペットの犬にしか相手にされない(ただし餌を上げる時だけなつかれる)人生に疲れた中年ですわよっす』
「お前らが俺の事をどういう風に見ているかよ~~~く分かった」
『からかって遊ぶ玩具っす』
「ぐはっ」
おっさん魔導師は崩れ落ちた。
「どうせ俺は老け顔で不潔で貧乏な魔導師ですよ~~~彼女いない歴=年齢の死んだら妖精さんになれるからいいんですよ~~~どうせ~~どうせ~~~」
「やっぱりめんどくさい男だった~~そこでいじけられても邪魔なんだけど。ひねくれたおっさんは只々みっともないだけね」
「ぐおっ!!」
愛梨は無慈悲に止めを刺す。
『他に用事があったんじゃないっすか?』
アボスも愛梨もいい加減めんどくさくなってきた。
スライム達は真面目に清掃作業に勤しみ、時々遺体を運ぶ。
かれこれ20体ばかりある。
子供が15体だ。
ぐむむ……
孤児や浮浪者なんだろうか?
それとも奴隷商人が売れない商品を遺棄したのか?
取り敢えずギルドに帰ったらミュウミュウに報告だわ。
「……が欲しい……」
「『えっ?なんだって(っす)』」
二人はわざとらしく聞き返した。
「その……ゴーレムのパーツが欲しい……」
「人間の女に相手にされないからゴーレムで嫁を作るの?」
『やっぱりおいらの体が目当てっすか!!』
アボスは自分の体を抱きしめた。
『やっぱり変態っす!!』
「ちげーよ!! 義手を作るのに参考にしたいだけだよ!!」
おっさん魔導師は思わず怒鳴った。
「ああ~~ちゃんと話す。俺の名はアヌビアス・モルト23歳独身で魔導師をしている。義手や義足の研究をしていて魔石は義手や義足を動かすエネルギーとして必要だ。ある程度動かせるようになったが細かい動きがどうしても出来なくて……それでお前のゴーレムのパーツなら参考になるんじゃないかと思ってな……」
「わ~~~!! 思ったよりまともな人だった!! ごめんなさい。ゴーレム好きの変態だと思っていた!!」
『わ~~~真面目なストーカーっす!!』
「だから俺は変態でもストーカーでもおっさんでもない!!」
下水道におっさんの罵声が響き渡った。
我関せずとまたスライムが遺体を運んできた。
「器用なスライムだな。スライムと言えど昨日今日で操れる物ではないのだが……」
愛梨とアボスはピィーピィーと口笛を鳴らして誤魔化した。
愛梨のブレスレットがキラリと光る。
「ん……また遺体を見つけてきたのか? 多くないか?」
「そうなのよね~子供の遺体が多い様な気がするけど。衣服を見たらかなり上等な服を着た子もいるし」
「? おいちょっと待て!!」
「なに?」
おっさん魔導師は死体袋を覗く。
徐に手袋をして遺体の胸をはだけた。
「ちょっと勝手に触らないで」
「これを見て見ろ」
おっさんは少年の遺体の胸を指示した。
そこには……
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「壊れた馬車……」
ミュウミュウはギルドの解体場の裏庭に置かれた馬車を睨む。
ミュウミュウには心あたりがあった。
半年前に行方不明になった少年。
貴族の妾の子供。
あの時は少年の母親から探してくれと依頼が来た。
本妻が嫉妬して少年を売り飛ばしたんだと噂になったが……
少年の件も塩漬け依頼になっているが。
その前後にも子供が行方不明になった。
まだ愛梨の下水道の掃除は続いている。
それに……
下水道の掃除を罰として与えた冒険者が居なくなったのは3ヵ月前だ。
当初は掃除が嫌で逃げ出したのかと思っていたが。
もしかして……殺された?
子供の遺体は胸に魔法陣が描かれている。
錬金術師か魔導師にでも聞かねばなるまい。
何らかの儀式の生贄に使われたのだろうか?
行方不明になったのは10歳前後の美少年ばかりで貴族の子供も含まれていた。
だから普通なら人攫いに奴隷として国外に売り飛ばされたのだと思うだろう。
しかし現実は殺されて下水道に馬車ごと棄てられていた。
少年を使って何らかの実験が行われたのだ。
ギルドマスターは隣の町まで出かけている。
帰って来るのは1週間後だ。
それに……少年の母親や他の子供たちの親にも知らせなければならない。
ミュウミュウはため息をついた。
厄介な事になりそう。
ミュウミュウの勘はそう告げている。
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2019/6/6 『小説家になろう』 どんC
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【アリゲーター】【チャド】【ミミック】の影響で愛梨は下水道にそれらが居るとおもっています。
ダンジョンがある世界ですからそれらより質の悪すぎるのがゴロゴロいますが(笑)
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