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 第二十一話 スライムブレスレット

 冒険者達とカバ王子達は数日後ダンジョンに入った。

 みんなを乗せた人力車を送り出し愛梨は背伸びをする。

 女将さんや子供達やゴーレムメイドやボーイに見送られてみんなが乗った人力車が人混みの中に消える。

 人力車で1時間ほどでダンジョンに着く。ギルドの職員がダンジョンに入る冒険者のチェックをしているが、人が多いと割と待たされる。人力車だと座っているので待ち時間が楽だ。

 ダンジョンに入って予定の期間日に帰って来ない冒険者は多い。

 多くの者は跡形もなくダンジョンに消えてしまう。

 たまにギルドカードが見つかる者は幸運だ。

 多くの者が何も残せないのだから。


「ん~~ん~取り敢えずお客も増えたし。今日は何するかな?」


 ここ数日ダンジョンに潜る準備をするカバ王子達を都市の武器屋や防具屋に案内していたのだ。

 主にトウスが(笑)

 愛梨はカバ王子達についていくついでに【タンポポ亭】のポスターを貼らせてもらったり。

 夕方にギルドで旗を持って客引きや、お風呂とバイキングの割引券を配ったりと結構忙しかった。

 地道な宣伝とお風呂や女将さんの料理やゴーレムメイドが珍しく冒険者ばかりでなくダンジョン都市の地元民もボツボツやって来ている。

 愛梨から魔物の素材を買ってくれた商人も泊まってくれている。

 商人や冒険者や地元民にはなかなかの高評価だ。

 ただし貴族達の評価は低いだろう。

 貴族相手の高級感を下げたからだ。

 高級な宿屋だったから反感を抱く貴族は多いだろう。

 最もそれが狙いでもある。

 貴族にも王族にも関わりたくない。

 愛梨がぼ~と考えているとアボスが答える。


『ちびっ子を連れてスライムをテイムするっす』


「スライム?」


『ダンジョンの1階から3階までの浅い層に居るっす』


「スライムをテイムするのってちびっ子達に出来るの? スライムとは言えテイマーのスキルがいるんじゃない? それにスライムなんてテイムして何に使うの?」


『タラッタラ~~♪』


 どこぞの未来から来た猫型ロボットの様にアボスはアイテムボックスからブレスレットを取り出した。


『スライム・ブレスレット~~♪』


「スライム・ブレスレット?」


『これを嵌めれば誰にでもスライムをテイムできるっす』


「ちびっ子達でも?」


『どんなに才能の無い者でもスライムならテイムできるっす』


 アボスは親指を立てていい笑顔で言った。


「それでスライムをどうするの? それよりそれはだれが作ったのよ?」


『魔道具班が作ったっす』


「魔道具班って何時の間にいたの?」


『乙女の秘密っす』


「アボスはそればっかりね!! ネタの天丼は2回までよ」


『笑いの道は厳しいっす』


「兎に角女将さんに子供達をダンジョンに連れて行く許可を貰うわ」


 パタパタと愛梨は厨房に向かう。

 厨房ではコックゴーレム達と女将が忙しく昼の食事の準備をしている。

 コックゴーレムは追加で20体ほど増えて、外の竈では忙しそうにパンやピザが量産されている。

 窯ももう3つほど増やす予定だ。

 食堂も3時から5時まで喫茶コーナーになりケーキや軽食を出すことになっている。

 5時からはバイキング形式の食堂に戻る。


「女将さんちびっ子達をダンジョンに連れていっていいかな?」


「ダンジョンに? 何でまた? 危なくない?」


「1階までの浅い層でスライムをテイムするんです。アボスがスライムをテイムできるブレスレットを作ってくれて皆でスライムをテイムしに行きたいんです。ちゃんと護衛にゴーレム騎士ナイトも連れて行きます」


「スライムを? そうゴーレム騎士ナイトが護衛してくれるなら安心ね。いいわ。いってらっしゃい。お昼はこのサンドイッチを持って行って。リリンゴジュースも持って行ってね」


「はい。ありがとうございます」


『おいらが付いているから大丈夫っす』


 アボスは女将さんに親指を立てる。

 アボスはサンドイッチとジュースの入った瓶を受け取るとアイテムボックスにしまう。

 愛梨はニッコリ微笑むと皿を拭いているちびっ子達を連れてダンジョンに向かった。


「冒険者じゃなくてもダンジョンに入れるの?」


 アメリアが不安そうに愛梨に尋ねた。

 子供達の親は冒険者でダンジョンで亡くなっているのだ。

 だからダンジョンを恐れている所がある。


「ギルドマスターに聞いたら3階までなら一般人でも護衛付きなら入れるのよ」


「アイ姉ちゃん。何でスライムをテイムするんだ?」


「あっ? そう言えばアボス何で?」


「分からないでスライムをテイムするのか?」


「「「 めっちゃ不安!! 」」」


 ミズラとヨシカとエイデンが叫ぶ。


「えっ? この子誰? 初めて見る!! 」


 愛梨はエイデンを見て叫ぶ。


「酷いよアイ姉ちゃん。無口だけど初めからいたよ。エイデンだよ」


「ああ……ごめんごめん」


 愛梨は謝る。

 まるでバスケットボールの影の薄い主人公の様だと思った。

 アボスは咳払いをした。

 ゴーレムって呼吸しないわよね~と愛梨は思う。


『あ~良いっすか。説明するっす。スライムは掃除屋さんっす。スライムをテイムして宿屋や道路の清掃に使えるっす』


 アボスが黒板に書いた文章を愛梨がみんなに伝える。


「あっ……掃除か~そう言えばギルドでも町の清掃の依頼とかあったわね」


 アメリアが頷く。


『そうっす。下水道の清掃依頼は塩漬けになってるっす』


「このダンジョン都市の下水道て広いの?」


『正確には古代遺跡っす。ダンジョン都市は古代遺跡の上に作られているっす。かなり広いっす。そして衛生面で問題があるっす』


「あ~変な病気とかワニとかいそう」


 愛梨は都市伝説でトイレに棄てられたワニが下水で生きていたと言う話を思い出した。

 そう言えばホラーゲームやホラー映画でも下水に巨大なワニが出てきたな~。


「でもここならワニじゃなくてもっとヤバイ魔物がいそう」


『その可能性は大きいっす。だから手始めにスライムをテイムして、増やして下水道を掃除するっす』


 増やすと言う言葉を聞いて愛梨の頭に巨大スライムの姿が浮かんだが、ブンブンと頭を振って巨大スライムを追い出した。

 数か月後。その予感は大当たりとなるのだが。敢えて愛梨は気付かないふりをした。

 人力車に乗ってダンジョンの入り口に着くと冒険者ギルドの受付テントがある。


「あら? こんにちは。アイさん子供達を連れて薬草取りですか?」


 一般人でも薪拾いや薬草取りキノコ狩りの為に浅い層に入ることが許される。

 3階までの浅い層なら一般人でも大丈夫なのだ。

 ギルドの受付嬢が笑いかける。愛梨は有名人だ。

 既に【ゴーレム使いのアイ】と言う通り名が広まっている。

 アボスやゴーレム騎士ナイトがいればなおさらだ。


「はい。私 アボス アメリア トウス ミズラ ヨシカ エイデン ゴーレム騎士ナイトでダンジョンに入ります。帰還時間は4時ぐらいです」


「はい。一人100ベベルになります。いってらっしゃいませ」


「「「「行ってきます~~」」」」


 愛梨は800ベベル払うと、ちびっ子たちと一緒に受付嬢に手を振って、ダンジョンに入っていった。




「覚えていない……」


 愛梨はぽつりと呟く。

 このダンジョンに入るのは二度目である。


「えっ? アイ姉ちゃん。たしか一回ダンジョンに入ったよね~~」


 トウスは不思議そうに愛梨に尋ねる。


「「痴呆……」」


 ぼそりと双子が呟く。


「し……失礼ね~!! ボケたんじゃないわよ!!」


『あ~多分あの時は高速で10階まで駆け下りたから記憶に残っていないっす』


「死ぬかと思った事は覚えているのよ。それと酷いゴーレムロバ酔いだったし」


「初めてのダンジョンで30階まで行くのは無茶もいい所だね」


 トウスは笑いながら言う。

 普通初心者は広さにもよるが、1日1階までがせいぜいだ。

 ゴーレム騎士ナイト達だからこそできる力業だろう。


「……」


 無口なエイデンが愛梨の袖を引っ張る。


「なあに?」


 エイデンは草むらを指さした。

 ミズラとヨシカも草むらを見ている。

 双子はダンジョンに入る前に渡されたヒノキの棒で草むらをそっとかき分ける。

 いた。

 スライムである。

 空気の抜けた少し潰れたボールの様な物体がそこにいる。

 スライムブレスレットは既にみんな装着済みである。


「アボスこれからどうするの?」


『見ているっす』


 アボスはヒノキの棒でスライムを叩くとブレスレットが淡く光った。

 叩かれた場所が光の紋章が出てきて消えた。


『テイム出来たっす』


 アボスはドヤ顔をする。


「えっ? あれで終わり? あんだけ~~!!」


『簡単っす。みんなもテイムするっす』


「「あっ!! 出来た!! 」」


「ホントだ。簡単だ」


「私も出来た」


「……」


 双子にトウスにアメリアに無口なエイデンがスライムをテムする。


「早い!! えっ? もうみんなテイムしたの?」


 愛梨は焦る。

 気が付けばテイム出来て無いのは自分だけである。

 愛梨はキョロキョロとスライムを探す。

 いない。焦るがいない。

 いた~!!

 やっとスライムを見つける。

 眠っているのかそのスライムは動かない。

 チャ~ンス♥

 愛梨はヒノキの棒を振り落とした。

 ひらり

 スライムはヒノキの棒を避ける。


「おのれ~猪口才な~」


 愛梨はブンブンとヒノキの棒を振り回す。


 うふふ私を捕まえて御覧なさ~い。


 まるでスライムは愛梨をそう挑発している様だった。


 まて~~~。


 愛梨はすばしっこいスライムを追いかけるが。

 スライムが素早いのか、愛梨がどんくさいのかなかなか捕まらない。

 呆れたゴーレム騎士ナイトがブンとスライムに石を投げつける。

 スライムの核を傷つけない様にスライムの動きを止める。

 愛梨はポカリとスライムを殴る。光の紋章が浮かび上がる。


「 スライムゲットだぜ!! 」


 愛梨はやっと一匹捕まえる。


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 2019/5/15 『小説家になろう』 どんC

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