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第二十話 カバ王子と【タンポポ亭】②

感想・評価・ブックマーク・誤字報告ありがとうございます。

「ほうこれがばいきんぐと言う食事方法か?」


「はい。お好きな料理をお好きなだけ皿に盛って食べるんです」


「これは……」


「それはピザです。トトマトの実をすり潰してピザ生地に塗り込みハムやタタマネギをスライスして上にチーズをのせ窯で焼いたものです」


 女将はカバ王子に説明する。

 食堂では既に冒険者たちが各々テーブルについて食事をしている。

 女の子達はケーキに舌鼓を打っている。

 しきりに美味しい~♪美味しい~♪と悲鳴にも似た言葉が漏れている。

 狐の獣人夫婦は大人のムードを醸し出して落ち着いた会話と酒を楽しんでいた。

 何故かツインテールのエルフ(男)達がいちゃつきながらピザを食べさせあっている。

 因みに大人おっさんたちはビールと枝豆を食べている。

 ちらりとデオスは酒とつまみをチェックした。

 ダンジョンから帰ったらあの酒を買おうと算段する。

 国の友人に良い土産になる。

 流石にダンジョンの中で酒を飲む程気を抜く訳にはいかない。


「窯? 前に来たときは無かったはずだが……」


「アイさんが作ってくれたんですよ。パンもピザもゴーレムコックが焼いてくれます」


「うむ。丸いパンや四角いパン。中にレレタスとハムを挟んである物まであるのか。むちむちしているのや。中にイイモが入っているのか? 甘くて子供や女の子に受けそうなパンもあるな」


「まあ。まるで城の晩餐会の時に出される料理みたいですね。私はてっきり地方料理の様な物が出されるのかと思っておりました。デザートも豊富で美味しいですし。飲み物も紅茶にジュースにタンポポコーヒーに氷を入れたお水まであるなんて。驚きですわ」


 水魔法の上位スキルに氷を作れる技があるが、主に戦闘用に使う。

 或は夏場に魚など冷やして運ぶ事もあるが、水に氷を浮かべる贅沢はしない。

 氷室は王城にもあるが、塩と混ぜているため塩辛いから水に入れない。

 氷の使い方が贅沢だ。


「本当にここ冒険者専用の宿ですの?」


「申し訳ございません。父が亡くなって従業員が辞めてしまった為に私と子供達では貴族様の接客が出来なくなってしまいましたから」


「それで冒険者用の宿にしたと言う訳か」


「はい。左様でございます」


「でも、ゴーレム達の接客を見る限り貴族にも対応できると思いますわ」


「ゴーレム達は同じ顔なので気持ち悪いとお感じになる貴族様もいらっしゃる事でしょう。でも魔物を相手にしている冒険者ですとたいして気になさらないです」


 確かにゴーレム達は男女とも似た顔をしている。

 交替しても分らないようにわざと同じ顔にしているのだ。

 Gのように1体見たら30体は要ると思え、と言うぐらい増えている。

 大概の人間は気付かないが。

 ゴーレムメイドとゴーレムボーイは会話ができる為戦闘能力は抑えられてせいぜいB級冒険者ぐらいの実力だ。ただし体内に収められた魔石を暴走させればこの街ぐらいの破壊は出来る。

 自爆してもまた新しい体に意識を移せばいいだけなのでゴーレムにはダメージが無い。

 文字道理歩く最終兵器だ。

 ちょっかいかけに来る国(馬鹿共)は魔王より質の悪い存在に青ざめることだろう。


「確かにゴーレムだと細やかな対応が出来ないかも知れないが、酔狂な貴族には人気が出るかも知れないな。所でこのピザは美味いな!!」


「本当にさっきのアイスクリームと言いこのデザートも美味しいです」


 メレデアはプリンアラモードを食べる。

 ダンジョンで取れたコカトリスの卵に隣の村で取れたびわに似た果物がよく合う。

【宵待草】のメンバールキアやジェニーなどは5杯もおかわりをしている。

 いくら甘い物は別腹でも食い過ぎだろう。


「女将の手料理もダンジョンで食べれるのだろう。楽しみだな」


「腕によりをかけて作りますわ」


「うむ。楽しみにしている」


 カバ王子は頷いてピザに手を伸ばす。


「女将ここの地下に訓練場があると聞いたのだが」


 不意にデオスが女将に尋ねた。


「はい。ございます。後ほどご案内いたします」


「そうか。案内頼む。それにしても良く働く子供達だな」


 トウスやアメリアは客が食べた後の皿を片づけたり、テーブルを拭いたりしている。

 ミズラとヨシカも裏で皿を洗ったら拭いて表にまた皿を並べたりしている。

 本当に良く働く。

 この世界の子供はよく親の手伝いをする。

 子供時代が無い者さえいる。

 でもそれが当たり前なんだ。児童保護法なんてこの世界にはない。

 命は紙よりも軽いのだ。


「女将アイが見えないのだが? もう帰って来てもいい頃だろう?」


 カバ王子はホットケーキの上に乗っている果物を口に運びながら尋ねた。


「あ~アイさんはダンジョンに潜って【カレーのスパイス】を取ってくると伝言がありました」


「【カレーのスパイス】? 新しい料理か?」


「そうだよ。とっても美味いってアイ姉ちゃん言ってたよ」


 トウスが自慢げにカバ王子に言う。


「うむ。楽しみだ」


 カバ王子はニンマリ笑った。




 *************************************



 愛梨がダンジョンから帰ったのは日も落ちてだいぶたった時だった。


「ひ~~~疲れた。疲れた~~~」


 愛梨は悲鳴を上げる。

 本当にスパイスを訪ねて三千里と言うぐらいスパイスはダンジョンの中に散らばっていた。

 あるスパイスは極寒の山の中の温泉地帯に。

 またあるスパイスは孤島の中に。

 嫌がらせか!! というくらい面倒な場所にあった。

 しかし……苦労したかいがあって主だったスパイスは手に入った。

 愛梨の口から声が漏れる。


「ぐへへへへ……」


 愛梨は嬉々として石臼で粉にしたカレー粉を鍋に投入する。

 愛梨はかなり壊れていた。【一般人】の彼女の体力ではダンジョン巡りはかなりきついものがある。

 しかし……全ての危険より食欲が優先されたのだ。

 それはあいつらに見つかる危険性があったとしても。

 予めコックゴーレム達に下ごしらえをしてもらっていた。

 鍋の中は程よく野菜たちが煮えている。

 後はカレー粉を入れるばかりである。

 隠し味でトマトソースを入れる。

 チョコレートがあればもっと美味しくなるのにと少し残念がる愛梨であった。

 ダンジョンの未知の階層に無いかな~~と愛梨は思う。

 あのダンジョンは100階ぐらいありそうだとアボスは言っていた。

 カカオに砂糖。今度町の市場を探してみようかなと鍋をかきまわしながら愛梨は計画を立てる。

 鍋の中、美味しそうな匂いがする。普通のカレーにカレーパン用のカレー。

 愛梨は汁気の少ないカレーの具をパンの中に包み込む。

 30個ほどを包むとコックゴーレム達に窯でカレーパンを焼いてもらう。

 このダンジョンの中で米も取れるのだが家畜の餌としてである。

 アボスの鑑定では日本の米に比べて味は少々落ちるとでた。

 アイテムボックスの中の田んぼで改良するしかないだろう。

 愛梨はカレーチャーハンも作った。

 カレーグラタンもカレーピザも追加される。

 瞬く間にテーブルはカレー料理で埋まる。


「ひぃやっは~~~!! 至福のカレー祭りよ~~~~♥」


 ホカホカの湯気を立てカレー達がテーブルに並ぶ。

 愛梨はカレーライスを一匙口に含む。

 至福の時だ。


「うう……おいひい~~~~」


 感動のあまり愛梨の瞳から涙が止まらない。


「でも福神漬けもラッキョウも無いから70点ね」


 美味しいと言いながらシビアな点数をつける。


「おお。確かに美味そうだな」


 愛梨はギョッとして振り返る。

 いつの間にか厨房の中に今夜ここに泊まっている客が全員いる。


「げっ!! いつの間に!!」


「テンションマックスで気が付かなかったんだね。アイ姉ちゃんが帰ってきた後を皆がカルガモの子供のように着いて来ていたんだよ」


女将とトウスが憐みのこもった目で愛梨を見る。

トウス以外の子供達は疲れて眠っている。



「気が付かなかった……」


 愛梨は呆然とする。

 えっ? マジで!! あの不気味笑いも見られたの?


『あの笑いはかなり不気味っす』


 アボスに止めを刺された。


 ぐはぁあああぁあ~~~!!


 止めたげて!! 愛梨のライフポイントは0よ。


「丁度地下の訓練所で剣の訓練をしたから小腹が空いた。夜食にはちょうどいいな。私はこの白い米にカレーをかけたものを所望する」


「はい。これですね。では食堂に移動して試食会といきましょう」


 女将はコックゴーレム達に料理を運ばせる。

 いつの間にかメイドゴーレムも来て食堂に皿やスプーンを並べる。

 トウス以外の子供達がカレーを食べるのは明日になりそうだ。

 もっとも残っていればの話だが……


 女将はサクサクと米を皿によそうとカレーをかけカバ王子に差し出した。

 メイドゴーレム達は他の冒険者にもカレーやカレーピザやカレーパンを給仕する。


「うむ。美味い。しかしアイはこれを70点だというのか?」


「カレーには福神漬けとらっきょう漬けは必須アイテムよ。譲れない物はあるわ」


「うむ。アイよ精進するがよい。お前が目指す究極の料理を私が食べてやろう」


カバ王子は上から目線でのたもうた。


「わたしこのパンが食べたい」


「私はこのカレーピザなるものがいい」


【宵待草】の女の子はきゃぴきゃぴ言いながら食べまくる。


「うむ。このカレー粉をモンスターの肉にまぶしたらあの味のないスライムも美味しく食べられるんじゃないか?」


【青き焔】のリーダームエンはぽつりとこぼす。


「あ~そうだな。駆け出しの頃スライムとかドブネズミの肉が食えないかと色々試したが駄目だった。女将よこのカレー粉を売る気はないか? これならスライムや臭くて食えないとされるドブネズミでも食えるかもしれない」


ここのダンジョンのスライムは味が無く。ダンジョン都市の下水道にいる小型犬ぐらいのドブネズミは臭くて食えないのだ。因みにダンジョンの中にいる砂ネズミも泥ネズミも不味い。


「そうですね。アイさんこのカレー粉を冒険者に売りましょう♥」


 女将も乗ってきた。

【タンポポ亭】には新しく作られた売店コーナーがあってそこにはアボスが作ったポーションや石鹼やシャンプーなどが売られている。そこに置くのもいいかも知れない。

愛梨は新しい儲け口に心躍らせるのだった。

しかし……女将さんも商魂たくましくなったもんだ。

誰のせいだろう?

愛梨の心を読んだのかアボスはサッと愛梨を指さした。



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 2019/4/13 『小説家になろう』 どんC

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