第二話 アイテムボックスはかくかたりき
四条君たちは、次の日から訓練が始まった。
四条君には騎士団長マクガレン氏の直々の指導だ。
伊藤香織、彼女には魔導騎士団長フアイツ氏だ。
大塚君のためにわざわざ冒険者ギルドから上級のシーフがついた。
小西君は老神官がつく。
昨夜王様と首相と老神官達と皆が相談して決め。
半年ほど訓練を行い後はダンジョンに入ってレベルアップする予定となった。
みんな帰るために頑張っている。
……。
私も頑張らないと。
私に出来ることは大人しくみんなの帰りを待つことだけだ。
私に与えられた部屋は屋根裏部屋で小さな窓があってそこから街がみえている。
特に朝焼けの風景がすばらしい。朝日に浮かぶ街並みは幻想的だ。
小鳥の声で目覚めた私は窓を開け王都の景色を堪能する。
そしてクローゼットを開ける。学生服とメイド服と普段着の水色のワンピース。
昨日メイド長に紹介されてこの部屋に案内されてこの部屋で眠った。
ベットは思ったより寝心地が良く。直ぐに爆睡した。
ベットとクローゼットと小さなテーブルの上には洗面器と水差しが置いてあり。
テーブルの引き出しの中に手鏡と小さな櫛が置いてある。
寝間着を脱ぎ。畳んでベットの上に置く。水差しの水を洗面器に注ぎ顔を洗う。
小さな櫛で髪を梳く。そして母が私の誕生日にプレゼントしてくれた白い花の付いたヘアピンを付ける。
校則違反なので学校では付けないが登校と下校には付けている。
小さなおしゃれだ。
私はメイド服に着替えると、メイド達が使う食堂に向かった。
メイド長は昨夜王様に紹介された。40代前後の神経質そうな女性だ。
私はメイド見習いとして働くことになった。
「おはようございます」
食堂の前にメイド長がいた。
「おはようございます。よろしくお願いいたします」
「取り敢えず。貴女には水を運んで貰います」
「はい。取り敢えず井戸は何処ですか?」
私は井戸に案内された。
「汲んだ水を洗い場に運んでちょうだい。それが済んだら従業員用の食堂でご飯を食べていいわよ。次の仕事は朝食の後で指示します」
「はい。わかりました」
メイド長は洗濯場の大きな桶に水を貯めるように様にいう。
私は頷くと井戸の桶を井戸の中に落とす。時代劇に出てきたな~~と思った。
ポンプじゃないんだ。まあ魔法がある世界だから、文明レベルを比べるのは間違っているんだろうな。
ロープを引っ張り水を汲むと別の桶に淹れる。
かなり重い。
私はふと思い付く。
アイテムボックスあったじゃん。
使えないかな~~
私はアイテムボックスに水が入るイメージを浮かべる。
「アイテムボックスに水を淹れる」
ピンピロリン♪
音がした。
頭の中に音がしてバケツ一杯分の水が入ったことが分かる。
あれ? 喋らないよ? レベルが足りないのかな?
まあいいか。
「バケツ一杯分か~~もう少し入るかな?」
私は洗い場の大きな桶をイメージする。
ピンピロリン♪
入ったみたいだ。
私は洗い場に行くと桶を覗き込み。
大衆浴場の様な洗い場の桶に水を入れるイメージを浮かべる。
どこからともなく水が現れ、洗い場の桶を満たしていく。
大きな桶は三つあり。私はアイテムボックスの中に水を入れて洗い場の桶を満杯にする。
ものの10分で仕事がかたづいた。
私は食堂に向かい。みんなが並んでいる列に並んだ。メイド服は部署ごとにデザインが違うみたいだ。
私のメイド服は足首までの黒のワンピースに白いエプロン。黒い靴に白い靴下。
一番地味だ。もしかしてメイド見習いの服なのだろうか?
後でメイド長に聞いてみよう。
パンとサラダとウインナーと玉子焼きとスープを貰い席に着く。
食事前にいい仕事したな~~♪
「頂きます」
うん♪ ご飯が美味しい。
「ちょっと貴女何をサボってるの!!」
メイド長の声がして私はいきなり腕を掴まれた!!
「私水を汲めって言ったわよね!!」
「あっ。終わりました。済んだらご飯を食べて良いって言ったから食べています」
「なに言ってるの!! 10分もしない内にできるわけないでしょう!!」
私はメイド長に洗濯場まで引きずられていった。
洗濯場の大きな桶には水が並々と注がれている。
「……」
「ご飯食べていいですか?」
固まっているメイド長に私は尋ねた。
「えっ? ああ……いいわよ」
固まっていたメイド長はかくかくと頷く。
私はアイテムボックスに感謝しながら食堂に向かった。
私の座っていた場所にちやんと朝食が置いてあり。スープは少し冷めていたが、美味しく頂いた。
「あんた見ない顔だね」
20前後の清楚なメイド服を着た女性が、私の隣に座る。
「こんにちは。今日から働くことになった愛梨。よろしくお願いします」
「後輩か。よろしく。あたしの名前はマリー。しかし……あんた珍しい髪をしているのね。黒髪なんて。まるで勇者様みたい」
サラリと私の髪に触る。
「勇者様……」
「そう。各国が勇者召喚をしたけどわが国だけが成功したのよ。凄いでしょう。流石巫女姫様ね。勇者召喚を成功させるなんて」
興奮気味に喋るマリーの髪はピンク色だ。頭の後ろで三つ編みにしている。
私は周りのメイドを見渡す。
「そう言えば、よくよく見ると皆色々な色の髪をしているのね」
昨日は召喚酔いのせいで気付かなかったが。
皆さん個性的な髪色だ。アニメの様にド派手な色だな~~
「所でメイド長は何であんたを連れて行ったんだい?」
「気にしないで。メイド長の勘違いよ。私が仕事をサボってご飯を食べていると思ったのよ」
「ふーん。所であんたの部署はどこだい?」
「まだ決まってないみたい」
「あたしは掃除でね。一緒だといいね」
「うん」
食事を終えるとメイド長の所に行き。
次の仕事を尋ねる。
「取り敢えず。ここの庭の枯葉を集めて置いて。この季節メイプルの葉が散って新芽が出る時期なのよ。集めたらここに積んでおいて。腐葉土にするから」
メイド長はそう告げると去って行った。
後には私と箒と塵取りが残された。
「……」
広い……東京ドーム2個分?
取り敢えず。地面に落ちている葉っぱをアイテムボックスに収納してみる。
収納。収納。収納。
でも……次々と枯葉が落ちてくる。
私は木についている葉っぱを恨めしく見ると。
閃いた。
木についている枯葉も収納できないかな?
木についている葉っぱも収納!!
収納出来た♡
私は全ての枯葉を収納する。
え~と確かここに集めておけと言ってたね。
私は指定された場所に枯葉を出すが、風が吹いてせっかく集めた枯葉が散ってしまった。
私は慌ててまた枯葉を収納する。
ん~~このままじゃせっかく集めたのに元の木阿弥になってしまう。
圧縮できないかな?
『出来るっすよ』
「えっ? 誰?」
私は慌てて辺りを見る。誰もいない。
『チィ~ス。アイテムボックスで~す。アボスとでも呼んでくださいっす』
「アイテムボックス? アボス?」
私は首を傾げる。
「アイテムボックス? あ……【おしゃべりなアイテムボックス】」
『そうっす。おしゃべり出来る様になったっす。よろしくご主人様っす』
「あ……私の事は愛梨で良いわ。よろしくね。所で枯葉を圧縮できるの?」
『【おしゃべりなアイテムボックス】はご主人様の要望を叶えるレアなスキルっす』
「そう。枯葉を出すと直ぐに風に飛ばされるから、圧縮して飛ばないようにしてくれる」
『了解っす』
ドン!! ドン!! ドン!!
圧縮された1メートル程の枯葉のブロックが、私の目の前に積みあがっていく。
わあ~~~ちょっとしたピラミッドみたいになってる。
「凄い!! 凄い!! 本当にできた!!」
『ざっとこんなもんっす。おいらをそんじょそこらのアイテムボックスと一緒にしないで欲しいっす』
「有能なのね」
『そうっす。おいらは有能っす』
「これからもよろしくね」
『よろしくっす』
リーンゴーン♪
『お昼の鐘っす』
「もうお昼なのね。お腹空いたわ」
『早く食堂に行くっす。魔力枯渇になる前にご飯を食べて回復するっす』
「魔力枯渇?」
『そうっす。魔力枯渇は恐ろしいっす。最悪しんでしまうこともあるっす』
「初めて聞いたわ」
『(小)がつく魔力程度じゃ魔力枯渇にはならないっす』
「あ……そう言えばみんなのアイテムボックスには(小)が付いていたけど【おしゃべりなアイテムボックス】には付いていなかったのかしら?」
『彼等のアイテムボックスは(小)せいぜい四畳半ぐらいの収納力しかないっす』
「何故に四畳半?」
『愛梨に分かり易く説明しただけっす』
「じゃ(中)は?」
『3LDKっす』
「つまり家一軒分の収納ってこと?」
『そうっす』
「(大)は?」
『体育館ぐらいっす』
「アボスはどれぐらいなの?」
『無限収納っす』
「無限収納?」
『最もレベルは上げないとダメっす』
「レベル?」
『そうっす。今愛梨はlevel1っす』
「どうすればレベルが上がるの?」
『ガンガン収納するっす。あ!! その前にしっかりご飯を食べて魔力枯渇を防ぐっす』
「この能力なら荷物持ちでみんなの役に立つかな?」
『今のままじゃ無理っす。愛梨は戦う力が皆無っす』
「あ~そうだね。危険な所に行くんだから戦闘力が無いとやっぱり足手まといか……」
私はか弱い文学少女。武術が使えるわけでもない。
眠っていた力が目覚めると言うご都合主義が通用する世界でもない。
魔法がある世界でもあるが、できないことはある。
『取り敢えず。レベルアップするっす』
「そうだね」
私達は食堂に向かった。
ご飯を食べているとメイド長が目を吊り上げてこちらにやって来る。
また腕を摑まれた。
「また!! サボって!!」
「掃除は済みました」
「嘘をつくんじゃありません!!」
私は慌ててアイテムボックスにご飯を収納する。
スープが冷めるのは嫌だから。
ん?
時間停止出来たっけ?
「何の騒ぎだメイド長?」
一人の騎士がそこにいた。
あっ。召喚の時に居て四条君の代わりに私を抱っこしょうとした騎士さんだ。
「キャー!!トロイ様よ‼」
「いつみてもステキ‼」
「なんで副騎士団長が?」
「副騎士団長の隣に居る黒髪の男の子は誰?」
「黒髪……もしかして勇者様?」
「若いわね♡」
黄色い歓声の中に何故か野太い声が聞こえた。
「声を掛けて下さらないかしら?」
うん。こっちの世界でもモテモテだね。四条君。それに副騎士団長。
「愛梨。君のことが心配で様子を見に来てしまったよ」
「綾人は心配性だな」
「何を言っているんですか。いき成り知らない所に連れてこられて僕達と別行動なんて。心配するのは当たり前でしょう。彼女はか弱いんですよ!!」
「それは……そうなんだが……」
「だいたい働かなくてもいいのに……」
「それは私が嫌なんだよ。四条君。みんなが大変な思いをしているのに私だけ何もせずにぼ~~として皆が帰って来るのをただ待っているなんて」
「愛梨……頑固だね」
「それが私だよ」
私はにっこり笑う。
「所で何しに来たの?」
「一緒に食事しょうと思ってね呼びに来たんだ」
「良いだろうメイド長」
「勿論ですわ」
メイド長はすんなり承諾する。
ん? メイド長の頬が赤い。はは~~ん。メイド長副隊長にホの字か?
ん~~でもメイド長40代だよね。副隊長は25・6ぐらいだよね~~。
ショタコンか?
私は2人に連れられて騎士団の寮に向かった。
騎士団の食事は量も多い。肉料理が美味しかった。
やばいっす!!
アボスは思った。
愛梨が勇者召喚に巻き込まれてここに来て敵が二人いた。
伊藤香織と姫巫女アリアナ。
二人は四条綾人が好きらしい。
最も姫巫女は勇者を取り込んで子供を作りたいのだろう。
勇者と言うのは良いブランドだ。
その子供も強い。言い方が悪いが、人間兵器としては安く手頃なのだ。
しかし……ここに愛梨と言う恋敵が居た。
愛梨は全くその気が無いが、ロリコンの四条はここぞとばかりにアタックするつもりだ。
要するに吊橋効果だ。異世界に飛ばされて不安になっている所で頼れる男を演じる。
(最も四条君は頼れる男だ。正ロリコンだが……)
オマケに副騎士団長だ。
彼もロリコンだ。
メイド長はトロイの事が好きみたいだ。
あ~~~
メイド長も敵に回ったな。
アボスは頭を抱える。
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20188/8/20 『小説家になろう』どんC
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最後までお読みいただきありがとうございます。




