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第十六話 面倒な奴が来た!!

「ほんとワシ泣いちゃうよ」


『おっさんに泣かれてもうざいだけっす』


「本当にね」


 アボスとミュウミュウはバッサリ切り捨てた。


「泣きたい時には泣いてください。一人で皆に迷惑の掛からない所で思う存分泣けば良いんです」


 愛梨は良い事を言ったと満足げである。

 よくよく考えるとうざいから他所で泣けと言ってるだけだが。


「取り敢えず報酬を支払いますね」


 ミュウミュウはギルドマスターを置き去りに報酬の話をしだした。

 拗ねたおっさんはかまってちゃんでうざい事この上ない。

 話が進まないのでほっておくことにした。


「1日10万ベベルで1週間で3パーティーなので210万ベベルの支払いになります。それと確かに41階でスタンピードの形跡が見られました。その情報料が10万ベベル。合計で220万ベベルになります。それで220万ベベルはギルドカードの銀行口座に振り込みますか?」


 ギルドカードは銀行のキャッシュカードの機能も兼ねている。

 便利なもんだ。


「取り敢えず100万ベベルは引き出します。後のお金はギルド口座に入れておきます」


 ダンジョンの食材で半分は仕入が済むとはいえ八百屋や肉屋やお茶屋からの仕入れもある。

 引き続き【青き焔】【宵待草】【狐火】の契約続行もあるし……


「それで商人ギルドから護衛の依頼が来ているんだけど。お願いできますか?」


『良いっすよ』


「【クラウド商会】からの護衛でここから王都までの護衛を頼みたいそうなの」


「【クラウド商会】?」


「かなり大きな商会なんだが。ダンジョン都市に出てきたばかりのアイは聞いた事無いかも知れないが。ほら覚えていないか? 初めてにダンジョンに入った日に真珠の買い付けをした。あの日に焼けた色黒で瘦せた男を」


「あ~何となく覚えているわ。商人と言うよりアサシンぽい人だったから」


「よく分かったね。若い頃は彼は私と同じ冒険者だったんだよ。でも足をやられてね。引退して家の商会を継いだんだ」


「実家はお金持ちなのに冒険者してたんですか?」


「彼は3男だからお気楽に暮らしてたんだが、長男と次男が魔物にやられてね。彼が継がねばならなくなったんだ。騎士家や商家にはよくある話だ」


「私の過去の話はいい。無駄話で時間を潰すな。時は金なりだぞ」


 不機嫌そうに男が部屋に入ってきた。

 確かに少し右足を引きずっている。

 真珠を売った時はレベル酔いでハイになっていたから気が付かなかった。


「こんにちは。この間は真珠のお買い上げありがとうございます」


 愛梨は行儀よく挨拶した。

 いつの間にかミュウミュウがドアの所に立っていたから、彼女が招き入れたのだろう。


「私の名はロジャー・クラウド。クラウド商会の会長を務めている。キャラバンを率いて王都に帰るつもりだ」


 男は愛梨に握手を求めてきたが、愛梨の代わりにアボスが握手した。

 男は少し不満そうだが直ぐに商人の顔に戻る。


「ゴーレム騎士ナイトをレンタルですか?」


「ああ。強盗団なら冒険者でなんとかなるが、王都に行くのに砂漠越えがある。この所魔王出現のせいで魔物が強くなっている。ゼルビス王が勇者召喚に成功したと言う噂があるが、勇者が魔王を倒せるまでにはまだまだ時間が必要だ」


「あ~やっぱり噂は本当なんだな。異世界から勇者を召喚したって言う」


 ギルドマスターはつまらなそうに耳くそをほじりながら言う。


「間違いない。北の神殿が勇者出現の神託を下した」


「流石クラウド商会その手の情報は早いな。で……今回の勇者はどうなんだ?」


「前回の勇者よりかはまともらしい」


「前回の勇者?」


「うん。50年前にも勇者召喚の儀が行われたが……何というか……魔王の呪いのせいで勇者が狂った」


「勇者が狂った?」


「と言うのは建前で元々性格が悪かったらしい。王家乗っ取りを図ったそうだ。生憎呼び出した王家に姫が居なかったのも問題だな。しかも間の悪いことに神殿に聖女も居なかったからな~男だらけのパーティだったから。王家乗っ取ってエルフの国に攻め込むつもりだったらしいぞ」


「エルフの国?」


「エルフは美形ばかりだからハーレムを作りたかったんじゃないか?」


「最低の糞野郎」


 ぼそりと小さい声でミュウミュウが毒づいた。


「ん~それって異世界から子供を攫ってきて、魔王討伐して用無しになったから難癖付けて殺そうとしただけでは?」


「その可能性もあるが、どっちにしろその国は滅びたから真実は闇の中だ」


「勇者は諸刃の剣ですね」


 愛梨はのんびりとお茶をすすりながら答える。


「魔王に滅ばされるか。勇者に滅ぼされるか。難儀なことだ」


 ロジャーは勝手にギルドマスターの横に腰掛ける。

 ミュウミュウはロジャーにもお茶を出す。

 お茶が美味しい。

 何処産か分からないが多分お高い紅茶なんだろうな~


「自分達で何とかできないんですか?」


「元々魔王や魔物は我々人間のマイナスの感情が凝り固まった物だと言われている。ぶっちゃけ人間滅ぼせば魔王や魔物は消える。ただし……」


「ただし?」


「神も死ぬ」


「神は死なないから神なのでは?」


「存在しない神は間違いを犯さないし、死なない。存在する神は間違いを犯すし、死ぬ。信仰心と言う力が失われれば神は力を無くして消滅する」


「教会から異端者だと指名されてたり、破門されてませんか?」


 愛梨はマジで聞いた。嫌に重い会話だな。

 この人の宗教観は、人も神も突き放した所がある。

 冒険者で仲間の死や身内の死を見てきたからか?

 諸行無常だな。


「大金を寄付しているから大丈夫だよ」


 ロジャーはニヤリと笑う。


「お前ならあの世の渡し守を買収して天国に案内させそうだな」


「当然そうするさ」


 この二人は昔馴染みなのか軽口をたたきあう。


「全てこの世は金次第!! 世知辛い!! 夢も希望もありゃしない!!」


 思わず愛梨は叫ぶ。


『こいつらの会話は愛梨の情操教育に悪いっす』


 ぼそりとアボスが呟く。

 愛梨以外アボスの言葉を拾う者はいない。


「で……ゴーレム騎士ナイトを4体借りたい」


「う……いきなり商談ですか? 賜りました。食事はバイキング形式ですがよろしいでしょうか? それと夜見張り番で倒した魔物はこちらの取り分としてよろしいでしょうか?」


「ああ。それでいい。王都に行く途中で商売をしながらだから3ヵ月はかかる。支払いは王都のギルドで支払うことになるがいいか?」


「はい。お金はゴーレム騎士ナイトにお支払いください」


(アボスかなり遠い場所だけど大丈夫よね。いきなり消える事にはならないよね)


(大丈夫っす。この大陸ぐらいなら余裕っす)


 ミュウミュウが精霊契約書を作成しているうちに、愛梨とアボスは念話で会話する。

 愛梨には王都までの距離もゴーレム騎士ナイトの耐性も分からない。


(ゴーレム騎士ナイトは遠い所まで大丈夫なの? 良く分からないけど、魔力補給とかメンテナンスとかはしなくて大丈夫なの?)


(実はゴーレム騎士ナイトは夜の見張りの時にアイテムボックスに入り交代するっす。魔力補給は半日アイテムボックスの中にいればできるっす。王都に着けばお金を貰ってそのままアイテムボックスに入れば良いっす。王都までの転移ポイントもできるっす)


(私が行かなくても転移出来るの? 便利ね)


(流石に愛梨のゴーレムが行ったことがない場所は無理っす。アイテムボックスの中にある城から転移の部屋を作ったからそこからダンジョンと王都までの転移が出来るようになるっす)


(うわ~本当!! 凄く便利!! 王都に買い物に行けるのね♥)


(行けるっす。王都の方はほかの国の食材が豊富にあるっす)


(カレーの材料も手に入るかな?)


(カレーの材料ならダンジョンで似たような食材が手に入るっす)


(えっ? 本当!! 行く!! 今すぐ行く!!)


(落ち着くっす。先ずは契約を済ませてから案内するっす)


(そ……そうね。食材は逃げも隠れもしないわよね)


 愛梨はソワソワしだした。

 ミュウミュウはロジャーに先に契約書にサインをしてもらうと、ソワソワしている愛梨に気付いた。


「どうしたんですか? ああ。トイレならこの部屋を出て右の突き当りです」


「違います!! アボスがカレーの食材がダンジョンにあるって言ったからこれが片付いたら取りに行こうと思って……」


「カレーですか? 聞いたことが無いですね」


「とっても美味しいんですよ~」


 涎を垂らさんばかりに愛梨は力説する。

 ああ……カレー日本の国民食。ウットリ。

 1日3回カレーでもいい。

 愛梨は『カレーは食べ物ではありません。飲み物です』派だった。

 余ったカレーは【カレーうどん】にしても良し。

 食パンを6個に切ってカレーをかけチーズを載せて【グラタンカレー】にしても良し。

 カレーパンもいいな~♥


「ほう。カレーと言うものはそんなに美味しいのかね?」


 ロジャーも興味を持った。

 至る所にアンテナを張り巡らせるのが商人である。

 特に愛梨からは金の生る木の匂いがプンプンするのだ。


「そのカレーとやら俺も食べたいぞ!!」


 いきなりドアを開けて一人の青年が現れた。

 それがめんどくさい奴との出会いであった。



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 2019/3/4 『小説家になろう』 どんC

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