表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/37

 第十四話 アイテムボックスの中に城ができてた。

「ねえアボス私目が可笑しいのかな? 城が見えるんだけど……」


 10キロ先に城壁に囲まれた城があった。


『可笑しくないっす。城はあるっす』


 女将さんにスイートルームをもらい、そこから久しぶりにアイテムボックスの中に入ったのだが……

 城ができてた。

 えっ? 意味が分からないって。

 私も分からない。


「ねえ!! 可笑しいでしょ!! 城よ!! 城!! 某テーマパークにそっくりな城が出来ているんだけど!!」


 愛梨はアボスをガクガクと揺さぶった。


「私が寝ていた一週間で何があった~~~~~~~~!!!!!! はけ!! 洗い浚い全てを吐くんだ~~~!!」


『ゲロゲロゲロゲロ~~~~~♡』


「いやそんなギャグは要らない。アボスゴーレムじゃん。内臓ないじゃん!! 食べないじゃん!!」


 そもそもアボスは岩でできたゴーレムなんだから内臓は無い。

 脳みそ処かどうやってこいつ動いているんだ?

 体の中身は多分空洞だ。


「今更ながら突っ込みたいんですが~~~~!! そもそも【おしゃべりなアイテムボックス】ってどういうスキルなのよ~~~!!」


 愛梨は城を前に半狂乱になっていた。

 色々可笑しいことはあったが、敢えて異世界だからと目を背けてきたが。

 真実と向き合う時が来たようだ。


『分かったっす。全てを話すっす』


 愛梨はごくりと唾を飲み込んだ。


『【おしゃべりなアイテムボックス】と言うスキルは【勇者】の称号よりレアっす。取得の条件は異世界人で自分で望んで来たのではなく、巻き込まれて転移した小柄な女の子で戦闘能力を持たず。歌が上手で称号が【一般人】でレベル10で打ち止めっす。魔法もせいぜい生活魔法しか使えないっす。そんな脆弱でなければ取ることはできないっす』


「えっ? なにそれ? 絶対この世界では生きていくことが出来ない人種よねえ」


『そうっす。愛梨以外取得した者はいないっす』


 うんうんとアボスは頷いた。

 取得条件が色々可笑しい。

 小柄な女の子?

 戦闘能力を持たない?

 歌が上手?

 称号が【一般人】?

 レベルが10以上上がらない?

 魔法も生活魔法しか使えない?


『日本人はぶっちゃけ海洋戦闘民族っす。血筋をたどれば百姓でも戦国時代に足軽やってたっす。世界大戦の時も戦ってたっす。その戦闘民族のDNAは脈々と潜在意識の中に受け継がれているっす』


「うわ~~~どこぞの戦闘馬鹿宇宙人みたいね」


『日本人は男女を問わず潜在的に戦闘能力があるっす。ましてや召喚される人間は勇者クラスっす』


「そりゃ~戦闘能力の高いものを召喚するわね」


『それと……洗脳しやすい者っす。大人と子供の境目に居る者ほど操りやすいっす。それに……』


「ストックホルム症候群?」


 アボスは頷く。

 ストックホルム症候群とは誘拐事件や監禁事件などの被害者が、加害者である犯人に対して好意的な感情を抱く事だ。

 異世界転移と言う特殊な環境を生き延びるための防衛手段なのかも知れない。

 現に愛梨だって城のメイドとしてこの世界になじもうとした。

 見方を変えれば王に媚をうったようなものだ。

 最もメイド長に拒否され殺されかけたが。


「えっ? じゃ私はこの世界では生きられないから、補助としてアボスがいるの?」


『そうっす。ぶっちゃけおいらがいなければメイド長に崖から突き落とされて死んでたっす』


「あ……っ……」


『おいらの力は愛梨が死にかける度に強くなるっす』


 愛梨は思い出した。

 メイド長に崖から突き落とされて3日間寝込んだ。

 アボスがゴーレムの体を持って現れた。

 ダンジョン強行突破で一週間寝込んだ。

 ゴーレム達が増えた。


「ん……? ちょっと待って……」


 愛梨は気づいた。

 メイド長に崖から突き落とされたのは仕方が無い。

 だが……ダンジョンで死にかけた?

 スタンピードに会った事か?

 一挙に41階まで行ったことか?

 いきなりレベルを上げたことか?


「ア~ボ~ス~!!」


 愛梨は怒りに燃えた。

 ダンジョンの中で引き返そうと思えば何時でも引き返せた。

 賭けの事を差し引いても20階で十分に勝てた。

 だが……こいつらは戦闘が楽しくて体力の無い愛梨を死にそうになるまで引っ張り回したと言うことだ!!

 スタンピードだって戦わずさっさと帰ってギルドに報告すればいい事だった。


『あっ不味いっす。バレたっす』


 アボスは逃げた。それは見事な逃げ足だった。

 愛梨はアボスを追いかけた。

 そんな二人をゴーレムロバは『仲ええなお前ら』と見ていたが、トコトコと愛梨の後を追った。

 どうせ体力の無い愛梨は力尽き途中でへたばるのだ。

 おっちゃんは何でも分かっとるんやで。

 しゃ~ないな。わしが城まで乗せちゃる。

 ゴーレムロバは親切だった。

 名前もまだもらっていないが。

 ぜえぜえと喘ぎ跪く愛梨の側までゴーレムロバはやって来ると。

 嬢ちゃん俺に乗りな。

 とカッコ良く嘶いた。


「あ……ありがとうロロ」


 ゴーレムロバは名前をゲットした。

【ロロ】

 カッコイイ名前ではないか。

 ゴーレムロバは思った。

 子供が親から最初に贈られるプレゼントは名前だ。

 わしも主から最初の贈り物をもらった。

 ゴーレムロバはうれしさのあまり城まで高速移動した。

 愛梨は勿論落っこちないように鎖でグルグル巻きにされた。

 余りの風圧に愛梨はまた死にかけた。

 またゴーレムが増えることになる。

 後でそのことを知ったゴーレムロバは直ぐにその事を記憶から抹消した。



「でかい城よね~」


 ロロに回復ポーションをもらいぐびぐび飲みながら愛梨は思った。

 回復ポーションをロロが咥えて差し出したが……敢えて考えない事にした。


 農家何処行った?


 気が付けば、カポカポとロロは城壁の上を歩いている。

 城壁から眺める景色は畑と森と川。

 のどかな田舎の風景だ。


 ちょっと待て!!

 いやいやいやいや!!

 可笑しいだろう!!

 畑!! 森!! 川!!

 ここアイテムボックスの中やろ!!

 何でそんなものがある!!

 それに……この広さは何なん?

 東京都位の広さになってるの?

 城もあるし。

 城壁から見る城は本当に某テーマパークの城にそっくりで。

 ゴーレム達が忙しそうに働いている。

 街を造っているようだ。

 城はあらかた出来上がっているのだろう。

 ゴーレムって今何体居るんだ?

 城の中にいるゴーレムだけでも100体はいるぞ。

 こんなに増えて何処の国と戦争するんだ?

 うん。まじ過剰戦力だ。

 カポカポとロロは城壁を一周した。

 何処に逃げたのかアボスは見当たらない。

 愛梨はロロから降りると城壁に作られた小さな階段を下りた。

 後ろからロロもついてくる。


 城の入り口に立つと10体程のメイドゴーレム達が愛梨とロロを出迎えた。


『ようこそおいで下さりました。我が主様』


「こ……こんにちは。え~とアボスを見なかった?」


『アボス様は只今仲間を増やしている最中でございます』


「えっ? ゴーレム達は自然と湧いてくるんじゃなくてアボスが作ってたの?」


『はい。そうでございます』


「錬金術みたいな物を使っているの?」


『はい。アボス様は城の地下にある研究室で仲間を作っております』


「研究室は地下にあるのね」


『はい。後でお連れ致します。それよりお風呂が沸いております。どうぞお入りください』


「お風呂? 入る♡ 入る♡」


 お風呂と聞いて愛梨は上機嫌になった。

 愛梨はお風呂とご飯で大抵機嫌が直るチョロインである。

 そう言えば一週間寝込んでいたので風呂に入っていない。

 アボスに頼まれてアメリアが体を拭いてくれていたみたいだが。

 今日はバタバタと忙しい日であった。

 アボスを追いかけて汗もかいた。

 お風呂に浸かってゆっくりしたい。

 愛梨はお風呂に入った。

 広々としたお風呂は豪華で、ギリシャ神話に出てくる神殿に似ている。


「わ~~~♡ ライオンがお湯はいている♡」


 上機嫌でお風呂で泳いだ後フルーツ牛乳を飲んだ。

 そうしてメイドゴーレムに可愛いネグリジェを着せてもらうとベッドにダイブした。


『おやすみなさいませ主様』


「うん。おやすみなさい」


 ぐー

 愛梨は寝た。


「いやいやいやいやいや!!」


 ガバリと愛梨は跳ね起きた。


「丸め込まれる所だったわ!!」


『ちっ』


 メイドゴーレムは舌打ちをした。

 えっ? この子舌打ちしたよ!!

 外見は変わっても基本的性格は製作者のアボスに似るの!!

 愛梨は頭痛がしたが、突っ込んだら負けな様な気がした。


「アボスの所に案内しなさい」


 愛梨はメイドゴーレムに命令した。

 メイドゴーレムは愛梨にガウンを着せると城の地下に案内する。

 地下5階に研究所はあり、アボスはそこで仲間を作っていた。


「アボスそんなにゴーレム作って何処の国と戦争するつもり?」


 アボスは台に横たわるメイドゴーレムの胸に手を翳すと淡い光がメイドゴーレムの体を包みやがて体の中に吸い込まれていく。

 こんな風にして作られるんだ。

 愛梨は感心した。

 そのメイドゴーレムも他のメイドゴーレムと同じ白いブラウスに紺のジャンパースカートに白いエプロン。典型的なメイドの衣装である。顔立ちはこの世界の女性の平均顔で髪と目の色は茶色に統一されている。

 愛梨はメイドゴーレムが立ち上がるのをぼんやりと見ていた。

 メイドゴーレムはパッと見ると普通の人間に見えるが瞬きしないし呼吸しないので直ぐゴーレムだと分かる。ゴーレムの中身はどうなっているんだろう?

 本当に空洞しかなかったら軽くホラーだな。

 メイドゴーレムはスカートをつまんで愛梨に挨拶をすると出ていった。


「あの子は何処で働くの?」


『【タンポポ亭】で受付をする予定っす』


「ここにはいったい何体のゴーレムが居るの? 城を覗いただけでも100体はいたわ」


『城の中には250体っす。畑仕事しているのは150体っす』


「もう村の規模ね」


 本当は町の規模だが敢えて言わなかった。

【タンポポ亭】の庭に嫌な気配がしたのでゴーレム犬を使って庭を調べさせてあの呪いの人形を見つけた。愛梨を害する者や呪いや病気を探る為に鳥や犬や猫やネズミのゴーレムを都やダンジョンに放った。

 過保護とアボスを笑う者はいないだろう。

 愛梨は一度殺されかけているのだから。


『この世界は魔王がいるっす。日本人は最悪を想定して準備するっす。用心に越したことは無いっす』


 確かに愛梨の国では防災訓練をしたり毛布や食料を備蓄している。

 だが災害は予想を上回る事が度々起こる。

 この間のダンジョンのスタンピードだってそうだ。

 普通はぶち当たらない。

 愛梨は気付いた。

 異世界召喚に巻き込まれたりスタンピードにぶち当たったり。

 どんだけ不幸体質なんだ?

 アボスが最悪を想定して準備するのも頷けた。




 *************************************

 2019/2/5 『小説家になろう』 どんC

 *************************************

最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・評価ありがとうございます。

特に誤字報告は本当にありがたいです。仕事が忙しくて感想の返事が遅れていますが読んでいます。

返事も近いうちに書けると思うので気長にお待ちくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ