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おしゃべりなアイテムボックス 閑話 俺とアイ姉ちゃん②

あけましておめでとうございます

 飲めや歌えの宴会があった次の日。

 俺はアイ姉ちゃんにお礼を言うのと、街を案内してあげようとアイ姉ちゃんが留まっている宿屋を訪ねた。アイ姉ちゃんがお土産にくれた御馳走はお母さんも喜んでくれたことも伝えないとな。


「あれ? ギルドマスターにミュウミュウさん? 二人共アイ姉ちゃんに用があるの?」


 宿屋の待合室にいた二人に声を掛ける。

 豪華な椅子に2人が座ってお茶を飲んでいる。


「トウスはアイと知り合いなの?」


 ミュウミュウさんが俺に尋ねた。

 ミュウミュウさんはギルドマスターの秘書をしていて美人だ。

 とてもいかついギルドマスターの娘とは思えない。

 良かったね。母親に似て。

 といつも思っている。

 ギルドの手紙を届けるバイトをしたこともあるので、二人共顔見知りだ。


「うん。昨日のご馳走のお礼と町を案内しようと思って」


「そうか。所でエリザの様子はどうだ?」


「あ……相変わらずだよ。回復ポーションを飲むと良くなるけど直ぐに体調不良になるんだ。医者のフォルスコートさんも原因が分からないって」


 しょんぼりと答える。

 お母さんの具合はなかなか良くならない。


「そうか。今度様子を見に行くよ」


 ギルドマスターのスエルテさんが顔を顰める。

 お母さんのお父さんとギルドマスターは幼馴染なんだって。

 お母さんは小さい頃スエルテさんのお嫁さんになる~って言っていたらしい。

 あの頃が一番幸せだったとお母さんは笑っていた。

 ゴーレムが降りてきた。

 ゴーレムはギルドマスターとミュウミュウさんが座っているところに来ると、何やら黒い板に文字を書き始めた。


『こんにちはっす。おいらはアボスと言いうっす。アイ様はレベ上げ酔いの為暫く動け無いっす。アイ様に代わっておいらがお話を伺うっす』


 ミュウミュウさんが板に書かれた事を教えてくれる。


「私はスエルテ・ヘパイストスだ。昨日も言ったようにこのダンジョン都市のギルドマスターだ。こっちの娘は受付嬢兼わしの秘書のミュウミュウだ。君たちの専属になった」


「こんにちは。ミュウミュウです。アイ様の専属受付係となりました。よろしくお願いします」


 ギルドマスターもミュウミュウさんも丁寧な挨拶をしている。


『ご丁寧にありがとうっす。でご用件は何すか?』


「実はゴーレム騎士ナイトを貸し出して欲しいのだが……」


『ゴーレム騎士ナイトの貸出っすか? いいっすよ。1パーティーにつき1体で、食事と荷物持ちと休憩のドームハウスと夜の見張りと盾役で、1日10万ベベルで良いっすよ。出血大サービスっす。ただし夜の見張りでゴーレム騎士ナイトが狩った魔物の素材はおいらたちの取り分になるっす』


「食事も付くのか?」


『3食おやつ付きっす。夜食と酒は別料金になるっす。お茶やジュースは食事に付いてるっす』


「凄くサービスが良いのね」


「昨日君たちが言っていたスタンピードの調査に3パーティーを派遣したいと思っていたんだ。取り敢えずゴーレム騎士ナイトを三体貸してもらえないか? ミュウミュウ契約書を作ってくれ」


「かしこまりました」


『所でこの子はどうしたっすか?』


「ああ……この子はトウスと言って、昨夜ご馳走になったお礼と。都市の案内をすると約束していたらしい」


『思い出したっす。確か昨夜もいたっす。兄弟たちと一緒だったす。確かアイ様と同じぐらいのお姉さんがいたっす』


「うん。アメリア姉ちゃんだよ。13歳だよ。アイ姉ちゃんも13歳なの?」


『えっ? 13歳っすか? アイ様は17歳っす。年下なのに身長も胸もアイ様より大きいっす』


 言ってはいけない事をアボスはいってしまった。

 この時の会話を後で知った愛梨にアボスは怒られる事になる。


『さっき言ったようにアイ様はレベ上げ酔いで暫くは動けないっす。そこでアメリアちゃんに頼みたいことがあるっす。アイ様の身の回りのお世話をお願いしたいっす。無論お駄賃も弾むっす』


「えっ? お駄賃を貰えるの? うん。オッケー♥ 早速アメリア姉ちゃんに言うよ」


『ギルドにゴーレム騎士ナイトを連れていく途中でトウスの家によるっす。トウスのお母さんにアメリアちゃんのアルバイトの許可を貰うっす』


 黒い黒板に書かれた文字をミュウミュウさんが読んでくれる。

 ああ……畜生。俺も早く文字が読み書き出来るようになりたい。

 アメリア姉ちゃんもある程度読み書き出来るが、今は忙しくて教えてくれとは言えない。


「ワシはギルドの仕事があるし。冒険者パーティーに説明してくる。ミュウミュウは一緒に付いていってくれ」


 ミュウミュウは頷いた。

 監視の意味もあるのだろう。

 アボスは気付かない振りをした。


『じゃゴーレム騎士ナイトを連れてくるっす』


 アボスは愛梨が眠っている部屋に入ってゴーレム騎士ナイトを召喚した。

 5体のゴーレム騎士ナイトが現れる。


『1番から3番はおいらと一緒に付いてくるっす。4番と5番はこの部屋に居て愛梨様をお守りするっす』


 ゴーレム騎士ナイト達は頷いた。

 アボスは3体のゴーレム騎士ナイトを連れてミュウミュウとトウスがいる待合室に来た。

 3体のゴーレム騎士ナイトは色んな種族がいるダンジョン都市でもかなり目立つ。

 心持ちトウスは燥いでいる。

 どこの世界の子供でもロボットだとか騎士だとかそう言うものが好きなんだな~とアボスは思った。

 人々は不躾けな視線を向けるが、ゴーレムも人も一向に気にしなかった。

 ゾロゾロとゴーレム4体と美女と子供がやって来たのはトウスの家である。

 昔は貴族御用達の宿屋であった為かなりでかい。

 寂れていてもそこはかとなく風情があった。

 ゴーレム騎士ナイトは入り口で待機である。

 遠巻きに人々が見てる。

 アボスとミュウミュウとトウスだけが【タンポポ亭】の中に入る。


「ただいま~。アメリア姉ちゃんお客様だよ~」


 トウスはいきよいよくドアを開けて『タンポポ亭』の中に入っていった。


「トウスおかえり。ちゃんとお礼を言ってきてくれた?」


 床をモップで磨いていたアメリアが尋ねた。


「うん……それが……アイ姉ちゃんはレベ上げ酔いで寝込んでいたから会えなかったんだ。それに……」


『こんにちはっす。おいらアボスって言うっす。今日はアメリアちゃんに頼みたいことがあるっす。』


 一瞬アメリアは悲鳴を上げそうになった。

 いきなりアボスが目の前に現れたから。

 このドキドキは恋ではないわ。

 アメリアは頓珍漢な事を考えた。

 おしゃまなミズラとヨシカが吊橋でドキドキして傍にいる人と恋に落ちやすいと話していたからだ。

 死んだ二人の両親も恋に落ちたのは吊橋だったと言っていたらしい。


「こんにちは。あれ? ミュミュウさんも一緒ですか?」


「アメリアちゃんこんにちは。そうよこのな後私とアボスさんは冒険者ギルドに用事があるの」


「そうなんですか。で用事と言うのは何ですか?」


『実は主のアイ様様がレベ上げ酔いになってしまって身の回りの世話をしてくれる人を探しているっす。良ければアメリアちゃんに頼みたいと思って訪ねてきたっす。バイト代は弾むっす』


「バイト代弾んでくれるの!! やります!! いえ。やらせて下さい!!」


 アメリアは目をキラキラさせて現金に答えた。

 朝市のバイトも果物屋の叔父さんの腰痛も治ったので、明日から来なくていいと言われたところだったのだ。


『じゃ。今からお願いするっす。取り敢えずアイ様の寝間着と下着を買ってきて欲しいっす。サイズはアメリアちゃんより少し小さめでお願いするっす』


 アボスはアメリアにお金を渡した。

 アメリアはこくりと頷く。


『女将さんにも了解を取りたいっす』


「お母さんは……」


「どうしたの? 声がしたけどお客様?」


 奥から寝間着にガウンを羽織った女将さんがあらわれた。

 そしてふらりとよろける。


「お母さん!! まだ寝てなくちゃダメよ!!」


 アメリアは女将に駆け寄り支える。


「ああ……ごめんね。みんなが働いてお薬を買ってくれたのに……」


「大したことじゃないわ。お母さんが一番大事だもん」


『こんにちはっす。おいらはアボスと言うっす。主の世話をアメリアちゃんに頼んだっす。親御さんに了承を取りに来たっす』


 アボスは黒板に文字を書き女将に見せる。


「お母さん私アボスさんの所でバイトしてもいいでしょう?」


 女将さんはミュウミュウを見た。

 女将さんはギルドで働くミュウミュウを小さい時から知っている。

 ミュウミュウは身元は大丈夫と頷く。

 女将は柔らかく微笑むと。


「わかったわ。好きにしなさい」


「やったー!!」


 アメリアは小躍りして喜んだ。


『所で女将さん体の具合が悪いっすか?』


「ええ。本当にこんな格好でごめんなさい。夫が出て行ってから寝込む事が多くなって……お医者に薬やポーションを頂くのだけれど。中々治らなくって……」


『これ、飲んでもらえないっすか? アイ様のお爺様が作ったポーションっす』


 アボスは女将に綺麗な瓶に入ったポーションを差し出した。


「えっ? アイ姉ちゃんのお爺さんってアボスを作った魔導師だろ。そのポーションは高いんじゃないのか?」


 思わずトウスが尋ねる。


『アメリアちゃんがアイ様の身の回りのお世話をしてくれるお礼っす』


 ホントはアボスが作ったポーションだ。

 愛梨の身にまんがいいちの事が起きる前に作られたものだ。


「お母さん……」


 女将の代わりにアメリアがポーションを受け取る。


「ダメよ。そんな高いポーションは受け取れないわ」


「アボスさんお金は私が働いて支払います。どうかこのポーションをゆずってください」


 ポーションを握り締めアメリアが懇願する。


『お金はいらないっす。その代わり元気になったら料理を作って欲しいっす』


「料理?」


「お母さんの料理はダンジョン都市で一番美味しいのよ!!」


「そうだぞ。お母さんの料理は美味いんだぞ」


 アメリアとトウスは必死で女将の料理をアピールする。

 ゴーレムを作れる程の魔導師が作ったポーションだ。

 絶対効くに決まっている。

 アメリアには確信があった。

 このポーションでお母さんは元気になる。


『ゴーレム騎士ナイトを冒険者に貸し出すことになったっす。食事のサービスも付けるっす。そこでダンジョン都市で流行っている料理を出すっす。これはビジネスっす。憐みや同情や施しでは無いっす』


 女将エリザはアボスが笑ったように見えた。

 優しい慈愛に満ちた微笑みだ。

 兜のようなゴーレムの顔が動くはずは無いのだが。


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   2019/1/9 『小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

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