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おしゃべりなアイテムボックス 閑話 俺とアイ姉ちゃん①

「おい。トウス」


「なんだい。おっさん」


 門番のハルウザさんに声をかけられた。

 その日は荷物運びの仕事にもあぶれ、子守の仕事も無かった。

 冒険者ギルドや商業ギルドの手紙の配達も無い。

 病気で床にふすお母さん。

 産みの親ではないが、俺にとって本当の親だ。

 他の兄弟も仕事をしている。

 どうしょうと泣きたい気分もいっぺんに吹き飛んだ。


「このお姉ちゃんを市場まで案内してやりな。お前荷物持ちの仕事あぶれたんだろ。お嬢ちやんこいつに小銭を渡してガイドを頼むと良い」


「500ベベルと屋台の食いモンで良いぜ」


「ン♪分かったわ。取り敢えず。市場まで案内してくれる?」


「よっしゃー!! 食いモンは肉だぜ」


 フフフと少女は笑った。


「わかったわ。私はアイ。宜しくねトウス」


「おう。任せときな」


 俺は門番のおっさんに手を振りお姉ちゃんを案内する。

 アイお姉ちゃんは古いマントを纏い。

 靴はかなり履き潰していた。杖を持っているが魔法使いではないようだ。

 杖はただの棒きれだ。

 フードを深く被っている。

 が、かなり若い女の子だと分かる。

 俺より3・4歳年上だろうか?

 アメリア姉ちゃんと同い年かな?

 くたびれた服や靴から、結構遠くからこのダンジョン都市にやって来たことが分かる。


 お姉ちゃんはアイと名乗った。

 このダンジョン都市は初めてであちこち案内して欲しいとのこと。

 俺は嬉しくて大好きなダンジョン都市を案内する。

 アイお姉ちゃんは見るもの聞くもの珍しいようでキョロキヨロしている。


「ここが市場だよ。アイ姉ちゃん」


「わ~まだ人がいるね。市場が終わったら閑散としているのかと思ったわ」


 その後屋台で肉を食べた。

 久しぶりの肉だ。

 皆の事を思って、ちくりと胸が痛んだ。

 俺はアイお姉ちゃんが興味ありそうな店に案内する。

 アイお姉ちゃんはお金が出来たら色々買い物したいと言っていた。

 ギルドで素材を売るつもりらしい。

 旅の途中で色々狩って来たとのこと。

 角うさぎでも狩ったのかな?

 アイお姉ちゃんは弱そうだ。でも罠を使えばお姉ちゃんでも十分に狩れる。


 お姉ちゃんは冒険者で武器にも興味があるようだ。


「ドワーフの親父の武器屋?」


 アイ姉ちゃんは字が読めるらしい。

 いいな~。俺も読めるようにならないと。

 冒険者になるにしろ、商人になるにしろ字が読めないと不味い。

 騙されてる高く売り付けられたり奴隷になるサインをさせれれたり。

 碌なことがない。

 暗くなってきたからアイ姉ちゃんを宿屋に案内した。

 本当はうちの宿屋に案内したかったが。

 母さんは寝たっきりでろくすぽおもてなしが出来ない。

 兄弟で掃除をしているが広くて大きいから中々手が回らない。

 非力な自分は嫌いだ。実の両親が死んだ時もただ宿屋で待っている事しかできなかった。


「はいガイド代。案内ありがとう」


「アイ姉ちゃん。3000ベベルあるぜ」


 お姉ちゃんは3000ベベルもくれた。

 貰い過ぎだが……母さんの顔が浮かんだ。

 これでいくらか薬代の足しになる。

 俺はぎゅうとお金を握りしめた。


「ありがとう。アイ姉ちゃん」


 俺はアイ姉ちゃんと分かれて家に帰った。

 兄弟たちは血が繋がっていない。

 みんな孤児だ。子供のいない母さんが引き取ってくれたのだ。

 優しい母さん。お人好しと馬鹿にする人もいるが俺達兄弟はお母さんが大好きだよ。

 でも……お母さんの旦那は嫌いだ。

 酒に博打に女遊び。

 なんでお母さんがあんな奴と結婚しなければならなかったんだ?

 元は貴族の坊ちゃんだったらしいが。

 貴族の悪い見本市のような男だ。

 度々兄弟に手を挙げた。アイツは子供が嫌いだ。

 母さんに手を挙げた時はあいつに思いっきり噛みついてやった。

 兄弟も反撃して、まあみんなしこたま殴られたが。

 それ以来家には寄り付かず愛人と駆け落ちしたらしいが。

 あいつには借金があった。

 人相の良くない男が金の催促に来ていた。

 お母さんの【タンポポ亭】が借金のかたに取られるのかな。

 そしたら俺たちは追い出される事になる。

 大丈夫。大丈夫。大丈夫。

 俺はお金を握り締め。

 呪文のように繰り返す。

 大丈夫。お母さんの病気は治る。

 大丈夫。宿屋を取られはしない。

 大丈夫。借金も何とかなる。

 不安を抱えながらも俺は家に帰る。

 それがのちの世に【ゴーレム使いのアイ】と呼ばれる少女との出会いであった。




「やけにダンジョンの入り口付近が騒がしいな~~」


 トウスは荷物を店に運び領収書を貰う。

 冒険者ギルドから薬屋に納品でポーションの材料が入っている。

 子供が運ぶには大きいが、トウスは身体強化が使えた。

 8歳になると教会で【ギフトの儀式】が行われる。

 女神様からギフトを貰うのだ。

 その時トウスは【身体強化】と【聞き耳】を授けられた。

 冒険者や商人になるには良いギフトだ。


「どうしたの?」


 トウスはダンジョンの入り口に向かう大人に聞いた。


「何でも【ゴーレム使い】が【乙女の祈り】と賭けをして見事勝ったそうだ」


 男は興奮してそう答えた。

 往々にして冒険者は賭けをする。子供の小遣い程度を賭けるのならいいが、中には大金を賭けて妻や子供を奴隷にする奴がいる。

 特に【乙女の祈り】は質の良くない連中で仲間を闇奴隷商人に売っていると噂されている。


「そしてダンジョンで得た物を商人に売った金で気前よく皆に奢っているらしい。俺も仲間を呼んでご相伴にあずかるぞ!! ひゃっほ~~~~!! ただ酒だ~~!!」


 男は仲間と共に走って行った。


「奢り……ただ……」


 ごくりと唾を飲み込む。


「トウス」


 トウスは振り返った。

 アメリア姉ちゃんがみんなを連れている。

 どうやら噂を聞きつけたようだ。


「アメリア姉ちゃんも聞いたの? 【ゴーレム使い】が奢ってくれるって」


 アメリアは頷いた。

 14歳のアメリアは年の割には小さい。来年は成人すると言うのに栄養が足りていない。


「ただだ♥」


「お金払わなくても食べさせてくれるの?」


 小さいミズラとヨシカが笑う。

 水色の髪を三つ編みにした双子だ。

 二人の頭を撫でながら俺は頷く。


「兎に角行ってみよう」


 双子の手を引いて騒がしい方に歩き出す。

 そこは祭りのような賑わいだった。

 大人も子供も飲めや歌えの大騒ぎだ。

 ゴーレムを連れた少女が目に付いた。


「アイ姉ちゃん」


 思わず駆け寄ってしまった。


「あれ? トウスじゃない。その子たち兄弟?」


「うん。ただ飯を食わせてくれるって聞いて来たんだけど。お姉ちゃんが皆に奢っているの?」


「そうよ。初めてダンジョンに入ったお祝いよ。トウスも祝って。これ美味しいよ」


 アイ姉ちゃんは御馳走を次々と俺達に差し出す。


「美味しいねミズラ」


「美味しいねヨシカ」


 双子はもぐもぐとダンジョンで取れた果物を食べる。

 アイ姉ちゃんは次々と珍しい食べ物を差し出してくれた。

 みんなが美味しそうに食べる姿を見てにこにこしている。

 おれもつられてにこにこ笑う。

 アメリア姉ちゃんも珍しく笑っている。

 お母さんが倒れてから気苦労の絶えなかった。

 アメリア姉ちゃんの笑顔を見るのは何日ぶりだろう。

 ゴーレムが吟遊詩人の楽器を受け取ると異国の曲を奏でた。

 アイ姉ちゃんが歌う。

 鳥肌が立った。

 王都の歌姫に勝るとも劣らないとはこの事なんだろうな~と俺は思った。

 みんなが聞きほれている。

 歌が終わると割れんばかりの拍手が辺りに響く。

 俺も手が痛くなるまで拍手した。

 調子に乗ったアイ姉ちゃんはゴーレムを召喚した。

 20体ものゴーレムが異国のダンスを軽快に踊る。

 みんな面白がって拍手喝采だ。

 アイ姉ちゃんは疲れたのか眠ってしまい。

 ゴーレムはギルドマスターにあとの事を任せて(押しつけて)アイ姉ちゃんをお姫様抱っこで、宿屋に運んで行った。

 いつの間にか20体のゴーレムも消えている。

 他の人はまだまだ騒いでいる。

 お腹が一杯になった俺達も家に帰る。

 お母さんのお土産を抱えて。

 アイ姉ちゃんが籠に色々詰めてくれたんだ。

 お母さんへのお土産よって言って。

 本当はアイ姉ちゃんはゴーレム使いではなく魔法使いかも知れない。

 みんなを笑顔にする魔法が使えるんだ。

 明日ギルドマスターにアイ姉ちゃんの泊まった宿屋を聞いてお礼に行こう。

 そしてタダでこのダンジョン都市を案内してあげよう。

 そうトウスは思った。



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   2018/12/15 『小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。


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