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第六話 ダンジョン都市は危険がいっぱい ②

「この花は洞窟の中でしか咲かないんじゃ無かったの?」


『愛梨のメイド服に種が付いていたみたいで。落ちた種から芽が出て咲いていたのをここに植え替えたら凄いスピ-ドで繫殖したっす』


「何でかしら?」


『アイテムボックスの中は魔力が満ちているからじゃないっすか』


「それなら薬草を植えたら繫殖するかしら?」


『今度薬草を植えてみるっす』


「薬草園ができる?」


『今度作ってみるっす』


「楽しみ~そうだ。ハーブを植えてみるのもいいかも。野菜の種も植えてみる?」


『分身増やさないといけないっす』


「ふ……増やすんだ」


 そう言えば、アイテムボックスの中が広くなったような?

 前は100坪ぐらいだったはず?

 気のせいかな?


『そろそろ食事の時間じゃないっすか?』


「えっ? もうそんな時間?」


 愛梨のお腹が鳴る。

 うう……聞いて居るのがアボスだけでも恥ずかしい。

 愛梨はアイテムボックスを出ると鞄と杖とマントを脱いで1階の食堂に向かった。

 席は半分ぐらい埋まっている。20人ほど人がいておしゃべりにしている。


「だからあの場所より左に進むべきだったんだ。そうすれば早く次の階層に進めたのに……」


「あの宝箱はトラップなんだからほっとけばいい」


「ミケラン・ジェロの回復は遅すぎる。やばくなる前に回復ポーションを投げてくれ」


「今回は罠ばかりであまり実入り良くなかったわね」


 ダンジョン攻略の話や反省会も兼ねているようだ。


「好きな所に座ってくれるかな?」


 直ぐに女将さんが来てホカホカの夕食を愛梨が座ったテーブルの上に置く。


「今日のメニューはミノタウロスのシチューとクルルのサラダと黒パンだよ」


「うわ~~。美味しそう。いただきます」


 愛梨は手を合わせて食べる。

 女将さんが小動物を見るような生温かい視線を向けたが気にしない。

 黒髪が珍しいのかチラホラ視線を感じたが気にしないことにした。

 食べながら、愛梨は思った。

 ダンジョン都市は危険が一杯だと。

 特に体重と懐がやばい‼

 トウスと回ったお店は可愛い服や靴や帽子があり。

 屋台や喫茶店では美味しそうな匂いがした。

 間違いない。あれは美味しい。

 と愛梨の感は告げている。

 なんて危険な誘惑が満ちているんだろう。

 ダンジョン都市恐るべし‼


「ごちそうさまでした」


 愛梨はお盆を厨房の入り口に持っていくと女将さんやおじさんに声を掛けて食堂を出た。

 二階のベッドにひっくり返るとゴロゴロして直ぐに起き上がりアイテムボックスの中に入る。

 お風呂に入り体を洗う。

 風呂から出ると髪を拭く。

 布ではあまり乾かない。

 ドライヤーが欲しい。

 魔法が使えたらな~。


「アボス」


 台所のテーブルの上で愛梨の勉強のプリントを作っていたアボスが愛梨を見た。


『何すか?』


「私は魔法が使えないの?」


『【一般人】はせいぜい【生活魔法】ぐらいっす』


「生活魔法……」


『そうっす。コップ一杯の水をだしたり。ライターぐらいの火をつけたり。髪を乾かすドライヤーぐらいの風を吹かせたり。泥だんごを作ったり』


「そ……そうなんだ。それでも魔法よね」


『愛梨も魔法が使いたいっすか?』


「う……うん。やっぱり魔法のある世界に来たなら使えるようになりたいな~」


『【一般人】でもレベル10になったら【生活魔法】を使えるようになるっす』


「えっ‼ 本当に‼ 私でも使える‼」


『明日ダンジョンに行ってレベ上げするっす』


「うん。行く行く♡」


『冒険者ギルドに行ってまずお金を貰って短剣を買うす』


「流石に木の棒だけだと可笑しいよね」


『魔物を捕まえるから止めを刺すっす』


「はっ‼ レベ上げってそう言うことか‼」


 愛梨は当たり前のことを失念していた。

 レベ上げは魔物を殺すことだということを。

 私に殺せるかしら?

 ダラダラと汗が出る。

 生き物を殺す。

 よくよく考えればスーパーには肉や魚が売られていた。

 焼いたり煮たりすればいいだけの状態で……

 愛梨の世界は死が綺麗に隠された世界だと気付く。

 多くの人に守られた世界。

 水道をひねれば水が出て。スイッチを入れると明かりやテレビが付く。

 魔法のように安全で優しい世界。コンビニやスーパーや公園のトイレはタダだし。

(外国ではタダで無い所もあるが……)

 この世界は、馬車で旅をしても魔物に襲われて命の危険にさらされる。

 厳しい異世界。

 愛梨がのほほんと生き延びてこれたのはアボスのお陰だ。

 一回殺されそうになったし。


「アボス……ありがとう……」


「な……何すか? 突然……」


「私が今日まで生き延びてこれたのはアボスのおかげだなと。今更ながら気が付いたの。だからありがとう。これからもよろしくね」


 愛梨は笑ってアボスに礼を言うとおやすみなさいと言ってアイテムボックスから出て行った。

 アボスは暫くポカンとしていたが仄かに微笑んだ。

 アボスは【おしゃべりなアイテムボックス】と言うスキルだ。

 スキルに礼を言うなんて。

 異世界から来た人間は変わっているな。

 クスクス笑う。

 アボスは自分が笑っている事に気が付いた。


『……』


 これが楽しいという感情だろうか?

 愛梨と居るといろんなことが起きて楽しいとアボスは思った。




 宿屋のベッドで目が覚めた愛梨は暫くぼ~~~としていたがもそもそと起き上がる。

 宿屋の裏庭の井戸で客が顔を洗っている。


「おはようございます」


 女将さんに挨拶をする。


「朝食はできているよ。顔を洗っておいで」


 愛梨は頷く。井戸の水を汲んで顔を洗って食堂に行く。

 今朝は10人ほどしか居なかった。


「皆早くからダンジョンに行くんだよ」


 女将さんが説明してくれる。

 女将はパン粥を出してくれた。

 他にオレンジぽい果物がのっている。

 パン粥の中のプチプチした魚の卵みたいなのが美味しい。

 愛梨は果物を食べず手に持って部屋に帰る。

 部屋に入ると鍵を閉める。鞄の中に果物を仕舞う。

 実を食べた後でアイテムボックスの中に種を植えてみようか。

 実験してみるのもいいだろう。

 マントと鞄をかけ杖を持つ。

 忘れ物が無いかぐるりと見渡すと頷き。部屋を出る。

 女将さんに鍵を渡し。


「今日はダンジョンに行くんだろ。気を付けて行ってらっしゃい」


 愛梨は笑って手を振って宿屋を出た。

 直ぐに路地裏に入りアイテムボックスからアボスが出てくるのを待つ。

 アボスと共に冒険者ギルドに行く。


「アイ様お待ちしておりました」


 今日はあのおっさんは居ないみたいだ。

 だからおばさんの受付に並ぶ。

 おばさんは直ぐにカードを受け取ると愛梨とアボスを二階の部屋に案内した。

 部屋にあのおっさんがいた。


「こんにちは。お嬢ちゃん。俺はここのギルドマスターでスエルテ・へパイトスと言う。今後ともよろしくな」


「こちらこそよろしくお願いします」


 愛梨は頭を下げた。

 うん。テンプレキターーーーーー‼

 誰も並んでいないカウンターのオヤジがギルドマスターだったなんてよくある話だ。

 あっ‼ そう言えば、主人公がギルドで絡まれると言うイベントはまだだったな~~~

 ゴーレムを連れている女の子を普通は絡まないと思うが、ここ異世界だからな~~

 ギルドマスターはポツリと零す。


「ゴーレム強いんだな」


「ゴーレムが強いのであって私が強い訳ではありません。私はか弱い乙女です」


 何故かゴリラがふきだした。

 か弱いぞ‼ 乙女だぞ‼ これのどこに笑う要因があるんだ?

 うん。殴っていい案件だよね。


「テイマーはそんなもんだ。所で昨日の素材の買取なんだが。ウルフタイガーの毛皮と牙。後五体無いか? あればそれも買い取りたい」


「ウルフタイガーですか……確か都市の近くにいたわね~~五匹。」


 愛梨は鞄の中をゴソゴソ探す振りをする。


「これでいいですか?」


 愛梨はドンとテーブルに毛皮を置く。


「うん。討伐完了。背中に丸い模様のある兄弟でね。討伐依頼が来てたんだ」


 ウルフタイガーと呼ばれたわんころは、白い毛皮に虎のような模様があり4m~5mもある。

 B級ランクの魔物なのだ。

 ギルドマスターが兄弟と呼んだウルフタイガーは背中に丸い模様がある。


「こんな魔物が狩れるゴーレム使いをF級にしていたら俺が笑われるんだが……」


「でも私弱いです。私の称号は【一般人】レベル10で打ち止めですよ」


「そこが難しい所なんだよな~~」


 テイマーは弱い。操る魔物が強ければ強いほどバランスが崩れる。

 そしてテイマーのレベルに合わない依頼を受けて。依頼の失敗ならまだいい。

 最悪死ぬのだ。テイマーが死ぬと飼われていた魔物が悲しみのあまり暴れるのだ。

 めんどくさい討伐依頼を出さねばならなくなる。

 ギルドマスターはこの少女を死に追いやりたくない。

 彼女が死ぬとゴーレムも死ぬらしいが。


「取り敢えず。昨日の買取の金だ。ウルフタイガーの分と合わせて105万ベベルある。これが明細書だ」


 ドンとテーブルに金貨の入った袋と紙を置く。


「105万ベベルですか♡」


 愛梨の頭の中は昨日見た服や靴や帽子や可愛い小物が占拠した。

 あっ‼ いけない。ナイフ買わないといけないだった。

 ドワーフの武器屋は高そうだが、足りるかな?


「これからどうする?」


「はい。取り敢えず。ダンジョンに行ってレベ上げしたいと思います」


「それはいい考えだな」


「じゃ。失礼します」


 愛梨はいそいそとお金と明細書をバックに仕舞い頭を下げてゴーレムと出て行った。

 後で確認しょう。



「どう思う?」


 いつの間にか女がこの部屋にいた。彼女の肩にはカラスが一羽止まっている。


「あのゴーレムは強い。残念ながらあのゴーレムと同じタイプのゴーレムはつくれないだろう」


 彼女はため息をついた。

 彼女の祖父が亡くなったのは人類の損失だ。

 ゴーレム兵を作り出すことが出来れば、ダンジョン攻略にどれだけ役にたつか。

 キャラバンに付ければどれだけ安全な旅ができるか。

 土木建築にどれだけ貢献できるか。

 だが現実は一人の少女の護衛のみにしか役に立っていない。

 なんてもったいない。

 彼女はため息をつくと、テーブルから毛皮をのけて代わりに書類を置く。


「仕事しろ。ハゲ」


「酷くない~~~‼ ミュウミュウ‼ ギルマスに対する愛はないのか‼」


「ない‼ それとミュウミュウって呼ぶな糞おやじ‼」


 彼女は無情にもそう言い切ると部屋から出て行った。



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 2018/9/26 『小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

不定期更新です。

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