♯0 <無題>
いつでも、その気になれば、此処に帰って来れると思っていた。
来年こそは・・・と、毎年思いながらも、あれから、かなり時が経ってしまった。
科学の進歩とは凄いもので、自分が住んでいた場所を検索して、
まるで、その場所に本当に来たかの様に地図上を歩ける様になった。
実際にはこの30年間、一度も、育ったあの場所には帰っていないけれど、
ボクは事あるごとにバーチャルであの場所を歩いた。
僕はマサト。
今年で42歳になる。
京都の福知山という所で育った。
父は元・自衛官だ。
所謂「転勤族」というやつで、
僕が12歳の時に、母親の地元でもある北海道に越してきた。
福知山出身・・・と言いたい所だが、生まれは北海道の苫小牧市。
生後八カ月の間だけ北海道で育った。
だから、京都出身と言って良いものなのか、北海道出身と言うべきなのか、いつも迷う。
今では北海道生活の方が長くなってしまい、再びあちらに住みたいとは思わなくなったけど、
それでも事あるごとに思い出すのは、少年時代を過ごした福知山の12年間の数々だ。
1987年に福知山を去って、今年でちょうど30年になる。
そんな事もあって、今年こそは一度訪れてみようと思っていた。
「人生の心残りは、京都の墓参りに一度も帰っていない事だ。」
71歳になった父が口癖の様に云う。
そんな大げさな・・・
いつでも行けるじゃない!
「だったら、一緒にいこうよ! お盆時期は飛行機が高いからアレだけど、10月とか狙い目だよ!」
ボクがこう告げると、父が静かに微笑んだ。
-2017年・初春-
父が亡くなった。




