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ある共産主義国家の記録  作者: HTTK
影響と遭遇
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異常と接触2

 2017年7月 大レンディア海※1 

 

「艇長、レーダーに反応あり。船が接近中です。」

部下の一人が、艇長である彼に報告する。

この船が警戒している航路は滅多に船が通らない場所であることを艇長は思い出しながら、部下に命令する。

「今日はこの航路で船が通るという報告は受け取っていないな。……無線で呼びかけてみろ。」

「無線に応答ありません。」

「ふむ、トラブルか。目視で確認する。未確認船に近づくぞ。それと、司令部に未確認船が警戒網を通るという事を報告しろ。」

彼は、そう部下に命令し、指揮所にある椅子に座る。

彼が艇長を務める船は俗にいう高速戦闘艇と呼ばれる小型の艦船であり、正式名称は「警備艇1801」という。

この船は、原型が高速のミサイル艇であった事もあり、その速度は40ノットの速度で敵船・不審船を追尾できる能力を有している。

転移前であれば、この高速度を活かしてオホーツク海を南の冒険的な漁船と追いかけっこをするか、北日本本土近海の警備活動を行っている筈であった。

しかし、転移という事態がそれを許さなかった。

転移後、海軍の艦艇と共に航路保安局の艦艇はその殆どが任務外の海上探査に回され、軍や民間の建艦計画も大幅に変更が加えられ、警備艦艇や輸送船が建造され始めたのだ。

そして、それと同時に大量の船乗りを養成する必要に駆られ、1年の速成課程を卒業した形だけの船乗りは大量に生まれた。

彼は、そうして急造された船にベテランの艇長として後輩の指導を兼ねて赴任させられたのだ。

「艇長!マストが見えます。木造船です!何かが船体に書かれています。」

見張り台からの報告に、彼は臨戦態勢を部下に下命する。

「総員戦闘配備!司令部に報告しろ、木造船を発見、増援を寄こすように、と!」

この船は転移後に建造された船であり、資源節約と生産性向上を理由に、海上警備に必要な装備以外の装備が殆ど取り除かれていた。

(流石にエンジンや船体の素材や設計は変更されていないが、それでも主砲や対艦ミサイル発射管等は元から取り除かれていた。)

その為、この船の主武装は構造が複雑で高価な対空機関砲の代わりに備え付けられた軍の倉庫で腐るほど余っていた旧式の重機関銃であり、最大射程は対地でも2キロ程しかない。

「艦長、司令部より命令。未確認船に対して臨検を実施せよ、逃走する場合は撃沈を許可する。とのことです。」

「増援についてはどうだ?」

「付近に展開中の国防軍の《千鳥》《択捉》の2隻が急行中。2~3時間程度で到着するとの事です。」

命令と状況に艦長は内心で舌打ちするも部下に命ずる。

「未確認船に接近する、臨検用意!」

けたたましいエンジン音と共に警備艇は未確認船に接近していく。

「これは酷い、難破船か?」

艇長は近づくほどに、船体の所々が破損し、マストの帆にも穴が開いている船を見る。

「生存者が居るとは思えないが、……接舷するぞ。医療班は待機しろ。」

その言葉から少しして、警備艇は難破船に対し接舷し、万一にも船が離れないようにフックなどを難破船に打ち込む。

船に備え付けてある重機関銃を木造船の方に向けつつ、警備艇は接舷し臨検を行う10名が狭い船内へAKMを手に乗り込む。(この小銃もまた軍の倉庫で大量に保管されていたものである。)

臨検隊が乗り込んだ船の甲板は酷い有様で、そこかしこが傷付いており(又は一部白骨化した遺体が存在しており)生存者がいるように思えなかった。

「船内を手分けして探すぞ。2名1組になり行動する。訓練通り、俺がA、順にB、C、D、Eだ。船内を捜索し、生存者を捜索する。」

臨時編成の臨検分隊の分隊長はそう部下に命じると共に、自身も船内に侵入する。

彼を始めとする臨検分隊員は慎重に船内を捜索する。

彼らは、供給不足により警察や軍用の防弾ベストはおろか防刃ベストや取り回しの良い銃火器すら支給されていないうえ(これらは、単独航海を行う輸送船や接舷上陸を警戒する海軍艦艇に優先配備されていた)、室内での戦闘に不慣れな事もあり、慎重に慎重を重ねた捜索を行っていた。

船内は壮絶だった。

すさまじい死臭を放つ腐りかけの死体が点在し、それらが生前に垂れ流しただろう糞尿に汚れた船内は悲惨そのものだった。

「こんなところに生存者が居るとは思えないが……。」

食料や水が空になっている食堂を見て、分隊長がそう呟く。

そこに無線で部下から連絡が入る。

「分隊長殿!こちらB班、第三層の船体後部にて生存者3名を確認。まだ息があります!至急、応援と医療班を寄こしてください。」

それを聞いた分隊長は、即座に船で待機している医療班に連絡を取る。

「艇長、生存者を3名確認。医療班を派遣されたし。」

「了解した、医療班を送る。臨検分隊は船内の制圧を続けられたし。」

艇長の無線に対し了解と答えた後、分隊長は部下に命ずる。

「E班はB班と合流しろ。C班とD班は船内の捜索を継続、いいな。」

そう連絡すると、部下の了解した旨が返ってくる。

……生存者か、いい星の下に産まれた者たちなのだろう。

そう分隊長は一安心する。


 航路保安局は、平時における北日本の領海警備と戦時における後方警備を任務とする組織である。

与えられる任務の特性から武装や保有する艦船は海軍のものに準じており、転移前の南からは「海軍予備」と呼ばれていた。(最も、南の海上保安庁もまた純警察活動に必要な装備と称して、平然と誘導弾も搭載可能な艦船を配備していることから、北は「第二海軍」と呼んでいた。)

転移後もその装備と任務は変化しておらず、広大な海域と航路の警備活動を実施していた。

……ただし、航路保安局が想定していたのはオホーツク海と日本海の北側、精々が北太平洋であった事から、その広大すぎる海域の警備には手を焼いていた。

 保有する艦艇の殆どが小型のコルベットや海防艦であったのだから、それも当然だろう。

故に、本組織が海上で彼らを発見できたのは本当に偶然に過ぎない。

そして、彼らが発見した生存者は北日本に対して別大陸の情報を齎す事になる。


 ※1 大レンディア海は、北日本から見て嘗ての太平洋に匹敵する海のこと。

大陸間航海にとって屈指の難関海域とされており、遥か東からロマリアに到達した船は数えるほどしか存在していない。その為、北日本にとっても殆ど情報がなかったが、精力的な探査活動によって幾つかの諸島を発見し、自国の領域としている。


※2《1827計画 警備艇》

ソ連のミサイル艇であるオーサ型を基本として、途上国や新興国の海軍・準軍事組織向けに設計、開発された警備艇。

量産性と整備性に重点が置かれている。

北日本のワークホース艦の特徴とも言えるモジュール方式を採用しており、任務によって柔軟に装備の入れ替えが可能。


基準排水量:330t

満載排水量:380t

全長:45m

船体幅:8.5m

喫水:4m


機関 豊原重工 329型ガスタービンエンジン(10000hp)

最大速度 40kn

武装   AK230機関砲 2基 

     9K38対空ミサイル 1基

     電波探知妨害装置

     チャフ発射装置×2基

     レーダー 対空・対水上捜索用×1基

追加可能武装

     P270対艦ミサイル 連装2基

     RBU6000対潜ミサイル 2基

     救難装備一式

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