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ある共産主義国家の記録  作者: HTTK
大陸の革命政権
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虚構の軍隊 

 2016年 1月21日

 北日本が供与したカーキ色の戦闘服を身につけ、北日本から供与されたライフル銃※1で武装する「人民の」軍隊であるボヘミア人民軍※2の歩兵大隊の行進を、彼は複雑な目で見ている。

 ボヘミア人民政府において軍事委員会委員長を務める彼の前では北日本軍よりも遥かに旧式ながら近代兵器を装備したボヘミア人民軍が行進していた。

 彼は、ボヘミア政府の軍事委員会委員長を務める前は北日本の国防委員会に勤める官僚の一人だった。

その彼の内心は、1年もしない内に見違えるように近代的な軍を整えつつあるボヘミア人民軍を見て、子供のように心踊っている。

反面、彼が手塩にかけて育てた軍隊は(後方警備限定であるが)戦乱相次ぐ大陸へと送られる事になっていた事に彼の胸中には(幾ら理屈がそれを許容しているとはいえ)なんともいえぬ心境が芽生えていた。


 異種族の侵入に混乱する文明圏の大国の首都を異種族ごと核兵器で焼き払うという暴挙のツケは、ロマリア連合王国の崩壊と、その後の内戦勃発という形で北日本に回ってきた。

 混乱に乗じて傀儡政権、もとい「友好的社会主義政権」の樹立こそ行えたものの、その統治体制は未成熟であり、最悪の想定よりマシとはいえボヘミアと比べ物にならない程広い領域を、僅か1個師団と2個旅団で防衛するのは殆ど不可能であった。

2個旅団の内訳が、現地調達した戦争奴隷とその「督戦隊」であれば尚更である。

しかし、北日本には現状で出せる戦力はそれだけしかなかったのだ。

軍拡よりも、急な移転によって実質的な破綻をきたしている経済と文明の再建が先だからだ。

故に、動員はおろか軍拡は無期延期せざるを得なかった。

 その代わり、軍は建国したばかりの自身の衛星国や、国内のライバル達に目を向ける。

軍は、自身が設立したボヘミア人民軍や内務委員会の国内軍、国家保安委員会の国境軍を大陸に派遣し、軍の負担を減らそうと画策したのだ。

無論、海外に派遣されようとした国内軍や国境軍は大幅に反発。様々な暗闘の末に、やむを得ない必要性からそれらの一部は認められた。

 現実問題として、転移によって需要を失った軍需産業の維持や、絶望的に不足する労働力に対して北日本だけでは対応できない。ロマリアの維持が北日本には必要なのだ。

 故に、健軍されたばかりのボヘミア人民軍を大陸へと派遣し、ボヘミアの領域内の防衛に国内軍や国境軍が参加する形に軍とそれ以外が譲歩したのだ。

 反対派の意見、即ち脱走による技術流出や近代戦で使用できない等の反論については、供給する武器を極めて旧式なものにする、フランス革命での徴兵軍の活躍などを挙げて反論が封じられていた。

 それ故、軍需産業各社が主張していたようなボヘミア軍の急速な近代化は否定され、緩やかな近代化が行われる事となった。

 そこには、ボヘミア政府の意思は殆ど存在しなかった。

増え続ける借金と併合寸前の衛星国でしかない現状を前にして、ボヘミア人民共和国は黙ってその選択を受け入れるしかなかった。

そして、派遣されるからこそボヘミア人民軍はテストケースとして各種の装備を北日本から供与ないし「売却」されていた。

空は、輸出用に新規設計がなされた16式汎用機※3を。

海は、航路保安局で使用されていた旧式の300トン級の巡視艇を。

陸は、各種の歩兵装備と北日本製の装甲車や各種の砲が。

各軍の大量の軍事顧問団と共にボヘミア人民軍へと配備され始めていた。


 ……それらの兵器はパレードに参加している北日本軍の威容と共に、来賓として招待されたロマリア各国の賓客の前で披露された。

 文明圏の辺境の島国とは思えない先進的な装備で行進する人民軍兵士と、次々と賓客の前を通って行く装甲車や砲。空では飛竜に混ざって、プロペラで飛ぶ鉄の塊が編隊を組んで飛んでいる。

賓客として招かれた客は、周りが平民ばかりであるのがお気に召さないという高慢な態度が消え去り、婦女子の如く縮こまっている。

そして、パレードの後に行われたボヘミア人民軍の火力演習は、彼らの顔を青白くさせるには十分なものだった。

ロマリア各国が配備している砲よりも高威力・長射程の砲。

1丁で発射ごとの清掃や弾込めが要らずに連射可能な小銃。

高速で機動し、小銃を装備した歩兵を吐き出す装甲車。

それらは北日本からすれば骨とう品であって、数は少なく動きも鈍かったが、それらの火力と機動力はロマリア各国の軍を大きく凌駕するものだった。

そして、それらに来る途中に見せられたボヘミアの生産力が加わえれば…、彼らはたった1年でここまでボヘミアを育て上げた北日本にある種の恐怖感を抱いた。


 北日本が賓客に見せつけたボヘミアはその装いを大きく変化させていた。

嘗ては、大陸と比較しても小さな町程度の規模しか持たなかった首都ベーメンは、北日本の都市計画に基づく再開発の実行と大陸からの(魔術師を主とした)移民、北日本国内からの移住者によって急速にその規模を拡大していた。

各地の農村部や、漁村も北日本の技術を導入した最先端(それこそ地球世界の先進国と比較できるほどの)の農業地帯として再編成されていた。

場所によっては、工業地帯が稼働を始めているところも存在した程だ。

人心も、嘗ての生活より遥かに楽な生活を与える人民政府の施策に概ね満足していたし、逆に嘗ての反動からか宗教に対するある種の敵愾心を有するようになってもいた。

建国から一年で、漸く国民国家という意識も芽生えつつあったのだ。

ボヘミアは、北日本にとって喜ばしいことに、順調に「近代化」の道を歩んでいた。


※1 輸出用として新規開発された小銃。

 低コストかつ大量量産が容易で、最小限度の訓練で使える事を目的とした結果、自動小銃ではなく第二次大戦時のライフル銃の様な小銃になっている。

正式名称は釧路重工15式ライフル銃。

兵站への負担を考慮し、弾丸の規格は北日本軍と共通の物となっている。



※2 2016年当時のボヘミア人民軍の編制は以下の通り。

人民軍直轄

人民軍情報部

魔導教導中隊


人民陸軍 3千人

5個歩兵大隊 2500人

その他支援隊 500人


ボヘミア航空隊 1千人

6個飛行訓練中隊 200人

航空支援隊  700人

その他支援隊 100人

新規設計の16式汎用機を24機装備。

空軍基地 ベーメン郊外、パゲー等


ボヘミア海上警備隊 1千人

1個海防艦隊 400人

1個支援大隊 400人

1個海軍歩兵中隊 200人

航路保安局の中古巡視艇(300t程度)を6隻装備。

母港 パゲー (ボヘミア唯一の港町として、ドックや近代的な港湾施設を造成中。) 


※3 16式汎用機 

 希少資源を可能な限り使用せず、生産コストを抑えると共にロマリアの飛行生物と戦える能力の両立を目指した機体。

日本人民共和国航空機製造が設計を担当。その生産の容易さから多くの中小企業が製造に携わっている。正式名称は日本人民共和国航空機製造16型汎用機。

異世界の友好国・従属国への輸出専用であり、練習機から戦闘機の役割を果たすことを期待されている。

旧ソ連のYak7に似た機体となっている。


諸元

最高速度 500㎞

航続距離 1200㎞

作戦行動距離 600㎞

乗員 2人

武装 

20mm機関砲1門 120発

12.7mm機関砲1門 200発

ハードポイント4箇所

合計 500キログラムまで搭載可能

エンジン 敷香310型 1000馬力

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