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ある共産主義国家の記録  作者: HTTK
異種族の衝突
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エピローグ 誰かの独白

 ーー始まりは、あの国が出現した事だった。ーー

暗くジメジメして不衛生な独房の中で、彼は一人ごちる。

彼の仕事は、国王の名代としてレンダーの都市を統治する事であった。

複雑な建国の歴史と国内に多数の自治都市を抱えるロマリア連合王国は、その統治の1つの形として都市においては中央から派遣される知事とその地方の利益代表としての市議会による共同統治を選択した。

そして、ここレンダーもそのような形で統治がなされていた。

彼は、将来を嘱望される知事としてここに派遣された。

長ずれば王都に戻り、地方統治の頂点を極める事も可能だっただろう。

しかし、その野望は北日本の召喚によって崩れる事になった。


 ーー召喚した蛮地など、一蹴してみせますよ。ーー

召喚の1週間程前、レンダーに居た「国土鎮定軍」の参謀の一人はそう豪語していた。

そして、召喚が成功したと聞いた直後の報告に私は目眩で倒れそうになった。

どこの誰が、連合王国とその影響国の最精鋭部隊である30万の陸軍と、5万の兵力と400隻の戦力を有する水陸両用部隊が一日で消え去ると予測できるだろうか。

その後は、事態は転がり落ちる様に悪化していった。

1ヶ月前に王都の陥落と、その後の消滅が知らされた直後にレンダー近辺に駐屯していたニホン軍がレンダー主要部を治安維持の名目で制圧するのを、王都の消滅と大幅な弱体化で浮足立つ王軍は抑えることができなかった。

そして、その時に知事である私の身柄は保護の名目で拘束された。

レンダー市で、その後に行われた「選挙」とやらで選ばれた「革命評議会」が政府の樹立を宣言した。

そして、指揮権の委譲か解散かを迫られた王軍と冒険者ギルドが「革命評議会」の要請を受けたニホン軍と市街戦を繰り広げ、市街戦終結後の市議会議堂で、ニホン軍が「警備」するなか採択された「革命評議会」への全権限の委譲をもって、私の職は終わりを告げた。

せめてもの意地で、ニホンによる革命評議会への参加の誘いを断ったのが運のつきだった。

私は反革命罪の嫌疑を掛けられ、こうして独房に入れられた。

今や「革命」はレンダーだけではなく、その周辺部へと広がろうとしている。

そして、「革命評議会」が言うところの「人民解放戦争」に対して各地の「王党派」は団結してニホンと

「革命評議会」から自身の領地と生命を守ろうとしている。

戦いはまだ始まったばかりであるから、私にはどちらが勝つかはわからない。

正確には、もうすぐ処刑される私にはその結果を見届ける事ができない。


 ただ、1つ言える事がある。

それは、ニホンはやり方を誤ったということだ。

正直な所、私はニホン軍や「革命評議会」の配るプロパガンダに感動を覚えていた。

恐らく開明的な貴族や私のような官僚といった教養ある者達には、ニホンの言うところの「人権」を初めとして、それらの概念の凄さは理解できるだろう。

そして、恐らくニホンにはそれを実現できるだけの力もある。

王国魔道師の中でも、抜きん出た実力を持つ魔術師がニホンの首都の威容と先進性、その国力を脅威として説いていたのだ。

彼らが誤った点、それは彼らが考えているよりもこの国の「闇」は酷いということである。

かのプロパガンダに書いてあるようなことの実現の方が、国家の制圧や統治よりも重い負担をニホンに強いる事になるだろう。

そして、それは致命的な結果をニホンに与える事になるかもしれない。


 そこまで、思い立ったところで近づく足音が聞こえる。

「囚人番号201番、時間だ。」

革命評議会の憲兵に告げられ、私は部屋を後にする。


処刑される彼の部屋には、1つのビラが残されていた。

そして、そのビラにはこう記されていた。


一つの妖怪がロマリアにあらわれている、人民解放の妖怪が。

既存のあらゆる権力が、この妖怪にたいする神聖な討伐の同盟をむすんでいる。教会と貴族、ブルジョワとギルド、諸外国の国王と旧王軍も。


我々人民は、現時点から自分の見解や意図をかくすことを恥とする。

我々人民は、我らの目的は、既存の全社会組織を暴力的に転覆することによってのみ達成できることを、公然と宣言する。

支配階級は人民解放の前に戦慄せよ!

 人民はこの革命によって鉄鎖のほかに失うものはなにもない。我らの得るものは全世界である。


 万国の人民よ、団結せよ!

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