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ある共産主義国家の記録  作者: HTTK
異種族の衝突
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ロマリア派遣開始

 2015年7月25日、国内最大規模の港湾都市である真岡から出立する艦隊があった。

航空巡洋艦1隻、フリゲート艦2隻からなるこの艦隊はロマリア派遣軍の第一波として派遣される艦隊であった。

(当初は強襲揚陸艦の派遣も検討されていたが、貿易や他地域の作戦に多くの船が回されたことで結局派遣はなされなかった。)

北海道沖で派遣第一波を載せたRORO船2隻と合流し、ロマリアの港湾都市兼副首都であるレンダーを目指す。レンダーは戦線から近いが、兵站を整えるのに有利である点が北日本が根拠地とする際の決定材料になった。

この時、派遣されている部隊には実のところ戦力は警備部隊として1個歩兵大隊程度しか含まれていない。残りの同乗者は港湾整備を目的とする工兵部隊や民間企業の社員達である。

大陸は、北日本が予想したとおりのインフラの未熟さであり、それらの港を今後も貿易港や兵站根拠地として最低限使えるようにするために派遣第一波には工兵部隊や工事車両が大量に含まれていた。

幸いにも現地は天然の良港であり、自然の岸壁が存在しておりRORO船の入港がなんとか可能と見られていた。


 現在、北日本の土建業界とその周辺業界は開発事業という膨大な需要により息を吹き返していた。

なにせ、ボヘミアの開発や大陸との貿易に必要なインフラ整備等、仕事は山ほど存在しているのだ。

ただし、現地のインフラ整備については未だ進んでいなかった。理由としては以下の3つが挙げられる。

1つ目は北日本企業が転移初期の被害を鑑みて現地への進出に極めて慎重な態度を示していたこと。

2つ目は現地の法制度の未熟さや民度の低さがボヘミアでの大陸諸国との貿易で窺えたこと※1。

3つ目は大陸よりも優先して開発を進めるべき場所が見つかったこと※2。


 上記の理由から、現地の港湾インフラを北日本軍の兵站維持を担える最低限の能力を持たせるべく、軍の護衛付きの民間企業が動員されていた。

既に、ロマリア政府から港湾整備の対価として港湾の一部を租借する許可は得ていた為、現地での港湾整備は第401遠征旅団の本隊が到着するまでには最低限終了している予定だった。

そして、作業は予定通り進んだ。

しかし、現地では北日本市民に対する差別感情が高まっていた。

北日本市民に対する理不尽な行動が行われるにつき、軍が囲いを租借地に作ることで問題を強引に解決した。

民衆から石を投げられたり、罵詈雑言を浴びせられるのは作業員や護衛の部隊の士気を下げる行為なのでそれに対する処置は当然だった。

また、囲いは命令権もなしに戦線の移動を言い立てる一部の貴族や、傲慢な視線を隠そうともしない魔道士や騎士を遠ざけるという効果も生んだ。

「魔法を使えない者に対する扱いの苛烈さは言語を絶する。」とは護衛部隊の一人の士官の言である。

正確には、魔法を使えないというよりも魔力が存在しない事に対する扱いの差であったとしても、北日本人にとっては差が無いも同然だろう。

無論、戦争指導会議はロマリア大使館に抗議を示すも、状況は変化しなかった。

なにせ、北日本の攻撃によって彼らの親族は殺されたのだ。自然と対応もおざなりになった。

むしろ、北日本市民に魔力がない事が知れ渡ると、北日本市民はレンダーのどの店でも品物やサービスの提供を拒否され、ロマリア軍や市参議会から公共の場への出入りを一方的に制限されていた。

それ故、北日本市民の代わりにボヘミア人が北日本人と現地民との取引を仲介していた。

多くのボヘミア人は元々島住みということで差別がされていること(それでも、北日本市民に対する扱いよりもマシだが。)と、北日本の実力をその目で見ている事から北日本市民に対して従順だった。

それ故、物資の不足に陥ることはなく、予定よりも早めに港湾の整備は終了。

そして、予想よりも早く「敵」がレンダー近辺に来襲する頃には北日本が租借した港湾は最低限の兵站維持(具体的にはコンテナ船の入港と物資搬入)が可能な能力を有するように整備されていた。


……北日本人は事前にその強さを(誇張もあるが)知られており、北日本人が扱う様々な器具の性能は現地民や現地駐留のロマリア軍にも見られていた為、そこまでの差別を受けなかった。

通常では、魔力の使えない者は奴隷となるか、乞食か流民か、つまるところ被差別階級として生きるしか道が残されていないのだ。なにせ、その場で殺されたとしても文句は言えないのだから。

 

 何故、魔力が無い地球世界の人間は「差別」を受けるのだろうか。その理由は主に3つ存在する。

ひとつは、この世界の文明が魔法を中心に発展してきたことが挙げられる。

しかし、それでは魔法を使えるかどうかで人の基準が別れそうなものである。

事実、この世界もつい数十年前まではそうだった。それが変化した理由は、魔道具の普及や理論面での躍進が挙げられる。魔道具を使用するには、魔法を使用できるほどの魔力は要らず、理論を考えるのにも魔道具を使える程度の最低限の魔力で足りた。

人間は魔力で直接戦うことだけではなく、それに魔法を組み合わせる、新しい道具や技術を組み合わせるという方法を加えたのだ。

それにより、魔法も使用できない平民にも出世の道が与えられたのだ。

そして、逆説的に魔道具を使用できないほど魔力の少ない人間に対する風当たりは強かった。


 ふたつ目は、野生の獣や魔獣等は保有する魔力が人間よりも少ないとされていたこと、つまり

知性のない動物に宿る魔力は、知性のある動物よりも少ないと考えられていた事が挙げられる。

それを人間に当てはめるならば、魔力の少ない人間ほど粗野で野蛮であると考えられたのだ。

実際、それを「証明」する内容の統計が幾つも取られていた。

ただし、それは大分恣意的なものであることは明白であった。

なにせ、社会の上層である魔道士や貴族とスラムに居住する貧困層の犯罪数を比べていたのだから。

が、この当時の平民達はそれを信じていた。故に、魔力が全く無い人間への差別は正当化されていたのだ。


 そして、3つめは宗教上の理由であった。

この文明圏における宗教に留まらず、この星に存在する宗教にはそれぞれの「神」と呼ばれる存在が実在している。そして、人間が「奇跡」と呼ぶ行為は「神」が魔力に干渉する行為である。

人間の治療や、旱魃に対する雨等、それらは魔力に干渉することによって得られる結果に過ぎないのだ。それ故に、魔力を持たぬ者は「神の恩恵を受けれぬ者」として蔑視の対象とされていた。



※1 ボヘミア人民政府の法律によって、北日本市民以外の外国人の立ち入りが可能な場所は制限されるも、一部港湾都市に限って自由貿易が可能とされていた。

その中で、貴族や商人との商慣習の違いや魔法を使えないという北日本市民の特性から北日本企業と一部で摩擦が起こっていた。

(一部で済んでいるのは、北日本企業が地球世界で「そういった」相手と商取引をするのに慣れているため。)


※2 北日本に駐留していたロシア連邦軍が北日本の東側に広がる大洋を探査中に発見した群島において

北日本で不足している希少鉱物等が発見され、2015年7月現在ロシア連邦軍と北日本軍によって制圧作戦が展開されている。

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