表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある共産主義国家の記録  作者: HTTK
ワーストコンタクト
16/42

戦後 

戦後 日本人民共和国

 

 ボヘミア戦役が終了した後、北日本は極めて短期間の内にボヘミア王国という市場と食糧供給地を得た。

これは、国内総生産の実に7割を輸出で占めている北日本にとって、まさしく干天の慈雨であった。

それ故に、占領政策が始まるとすぐに軍の護衛を伴った北日本企業の進出が始まり、それまでの荘園や農地のような労働集約型の農地は、北日本企業の誇る極めて効率的な資本集約型の農場に塗り替えられていった。

地球世界において、北日本企業が行っていた可能な限り食料を自給しようと言う涙ぐましい努力が別世界で役に立ったのだ。

また、それに関連して行われた広大なボヘミア王国の開発で北日本の土建企業や、それに関連する企業は一息をつくことが出来た。

(無論、その支払いはボヘミア王国の鉱山や農地、資産を接収して代替とした。)


 しかし、足りない資源と技術、市場は未だに山ほど存在した。

大は軍艦のガスタービンエンジンの製造に使用する高品質で高性能な部品から小は日用で使用する安価な洋服や食器まで。

北日本で作ることが出来ないものは数多く存在していたのだ。

国産を謳う民間用の電子機器ですら、重要部品や基盤はともかく、液晶やケース、素材や他の部品は安価な朝鮮製品を使用していたし、国防の一翼を担う航空機の翼はロシア産だった。国民が買える安価でそれなりの質を有する電化製品など、イラン製の物が増えていた程だ。

 国民の食糧や日用品は満州で作られ、安価な衣類は中華地域で作られていた。

北日本は文明の維持のためにもこれらの供給先を早急に確保する必要があったのだ。


 そして、北日本の経済は転移によって既に崩壊寸前だった。もともと転移前には、南日本やアメリカに対抗した軍拡競争※1と、同盟国の経済破綻や内乱によって経済が疲弊していた。

北日本企業と政府の必死の努力によって辛うじて破綻を免れていたに過ぎない程に脆弱だったのだ。

それが、転移によって経済の流れを強引に引き裂かれた。

強硬論を唱える軍人や官僚も無い袖は振れなかったのだ。

故に、急いで体制を立て直す必要があった。

 ボヘミアの人口は当初の見積もりの2倍程度居たとはいえ、それだけでは北日本経済を救う事は無理である。

その為、早くも北日本の軍と官僚は次の市場を確保するべく動き始めようとしていた。


 無論、悪い情報ばかりではない。

北日本では産業革命以前はそれなりの価値を有していた塩や各種の薬物は高品質の物をそれこそ大量に作れた(故に、北日本は転移世界における給与の支払い、金や銀の対価として塩や薬物を大量に生産することになる。)し、化学合成された栄養剤を筆頭とする薬物は技術漏洩の心配もなく、また技術的に偏りのある北日本でも容易に生産することが出来た。

それらは、北日本の貴重な外貨収入源となったほどだ。

安価に生産されるコピー用紙ですら、転移世界では高く売れた。

そして、地球世界においてまがりなりにも先進工業国だったことから、資源さえあれば自国の工業で現代文明の維持は可能だと見積もられた。

それに、付近の文明地帯は精々が16〜17世紀の技術レベルである。自国が体制を立て直せば、問題は解決すると考えられていた。

北日本がボヘミア王国軍所属の魔道士達や捕虜に行った人体実験や魔法技術試験で「魔法」の持つ力が少しずつでも解明されたことと、初戦での圧勝も北日本上層部の考えを後押しした。


戦後 ボヘミア王国


 国王が、降伏文書にサインしたことで正式に戦争は終結した。

そして、王国の苦難は始まる。

元々、ボヘミア王国は典型的な食料輸出国であった。

信頼性には疑問があるものの、ボヘミア王国の統計によれば北海道に匹敵するその国土には延べ50万ヘクタールの農地が存在し、300万トンもの食料を生産し、その多くを輸出しているのだ。

……未だ開発する余地の多々ある、精々が西欧における14世紀程度の文明の国でこれである。北日本は、接収した施設で見つけた資料と、航空偵察による見積もりを見て歓喜していた。

ーーこの国を開拓すれば、北日本は救われるーーと。


 先の見えない中、漸く希望が見つかり北日本は情け容赦のない開発をボヘミア王国で行う事になる。

北日本は、何があってもボヘミア王国を自国の食料庫とする決意を固めていたのだ。

防御力の面から見ても王国は島国であり、防衛とそれに伴う出費が最小限に収められそうな事。

そして、その農作可能面積は最低でも北海道程度は存在すると見積もられていた事。

それらを考慮した結果、ボヘミア単体で北日本国民の食料はなんとか自給可能と見なされたのだ。


 故に、北日本の王国統治はある意味で苛烈を極めた。

手始めに、ボヘミア王国政府は北日本の指導により人民政府に名前を変え、役職の名前も北日本政府と同様の物に変えられた。無論、主要な閣僚は北日本から出向した官僚が務めた。

王国軍も人民軍へと名前を変えたうえで、魔道士部隊は解散の上に北日本国内へとその人員の殆どが移送された。

また、反乱を防ぐために諸侯の私兵・私兵組織は強制的に人民軍へと編入させられた上に、北日本式の装備への転換と再教育を強いられた。

特に軍隊はモンスターやダンジョンといった災害への対処に必要な事から、特に重点的な強化が行われた。

更に、より効率的な農地・産業開発の為に諸侯・自作農の保有する荘園やその統治する領土は一旦没収された。

そして、世界各国という市場を失った産業界の要求に応えて、北日本企業の進出に邪魔になる各種のギルドや市参事会は解散され、新しく半官半民の「人民公社」※2や極めて中央集権的な地方組織、民間企業に作り変えられ、強制的に北日本の市場と属国に作り変えられていった。


 あまりの急激な改革に、流石に反乱や一揆が続発するもそれらは北日本軍と再編されたボヘミア人民軍※3によって鎮圧させられた。

初めは身分の解放を喜んでいた農奴達すら、彼らの主人である地主や貴族が粛清されていく事に困惑したほどだ。そして、ボヘミア王国には北日本のあらゆる企業と機関が殺到。自らの食い扶持を稼ぐべく情け容赦ない開発を行った。

開発開始から1年未満で、自然豊かな土地の半分近くが畑か資源採掘場、都市に姿を変えたといえばその凄さがわかるだろうか。


 無論、強引な開発は悪いことばかりでもなかった。

王国民の生活水準は人的資源の減少を危惧する北日本政府が始めた政策によって少なからず上昇したし、開発されたインフラは多少なりとも王国民の生活向上に資した。

 モンスターやダンジョンといった危険なものすら、農作物生産、鉱物資源採取の邪魔を嫌った北日本政府の命令で北日本軍と人民軍に徹底的に殲滅され、農民の死因の一つが殆ど消滅したのだ。


 そして、それらの改革にロマリア連合王国は何も手出しが出来なかった。

なにせ、自国軍は壊滅的な打撃を受け、聖地の崩壊によって各国が混乱しているのだ。

手出ししたくても余裕がなかったし、何よりもかの国は島国だった。

陸軍はいても、それを乗せる船がなかった。彼らが出来たのは、精々が北日本の政策に反対する現地の教会に対しての支援だった。


 現地で(というよりもこの近辺の文明圏では)支配的な影響を有していた宗教はその特権を剥奪される事態に陥っていた。

北日本からすれば宗教など迷信であり、人民を搾取する存在である。

かといって、盟邦であったソビエトが正教会に対して行った徹底的な弾圧でも宗教組織が瓦解することがなかったことも忘れてはいない。

故に、北日本は特権をはく奪した後、敢えて教会組織を放置したのだが、それは王国内に大乱を招く原因となった。


※1 空母建造を目玉として、戦略爆撃機配備計画の拡大や原潜の建造拡大が予定され、2022年には空母4隻、原子力潜水艦12隻を中心とする強大な戦術型海軍が出現する予定であった。

ただし、転移によって完成間近の空母を除く艦艇建造は無期延期され、それ以外の軍備拡張計画も凍結された。


※2 半民半官の内、民は北日本企業であり官は北日本から出向した役人が実権を握るボヘミア王国人民政府である。北日本は計画経済をボヘミア王国で実施し、人民公社はその達成の為に動員された。


※3 残存王国軍に、貴族の私兵や傭兵を入れて編制された軍。軍の中核である魔道士部隊の多くが北日本軍によって引きぬかれている事から魔導戦力は極度に弱体化している。

 ただし、北日本からの装備の支給等もあり、総合的な戦力は王国時代に比べて強化されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ